「子どもの自己肯定感を育てたい!」と願う親がやりがちな"危うい勘違い"とは?
人生相談本コレクター・石原壮一郎のパパママお悩み相談室〔08〕
2021.10.14
コラムニスト&人生相談本コレクター:石原 壮一郎
「自己肯定感=能力に自信を持つ」ではない
<石原ジイジの結論>
「自己肯定感」とは、もともと「ありのままの自分でいいと思える気持ち」のこと。「そう思っていいんだ」と気づくかどうかが肝心で、高いとか低いとかいう話ではない。
ただ、いつの間にか言葉の意味が広がって、自分に自信を持つとか、積極的に意見を口にできるといった「能力」の話になってきている。
そうなると、他人より高いとか低いとか、わが子はそれが高い子に育てたいとか、欲張りたくなるのが人間のサガじゃ。大人にとっては、これも何かとよく使われる「生きづらさ」を減らすために、自分の意識や他人との接し方を変えるきっかけとして「自己肯定感」というキーワードを利用するのは、大いに意味があるに違いない。
いっぽうで、人生相談の森をさまよって浮かび上がってきたのは、「自己肯定感の高い子どもに育てること」を目指す危うさ。
「自己肯定感を高めたい」と思えば思うほど、子どものありのままを否定したくなる。自信を持たせようと厳しく接すると、むしろ自信を奪うことになりかねない。
「ホメて伸ばす」も、ひとつ間違えると親の肯定を基準にする子どもにしてしまう可能性がある。
子どもが「自己肯定感」を持つために、親ができそうなことはどうやら次のふたつ。
その1「子どもをほかの子と比べて評価したり、ないものねだりをしたりしない」
その2「失敗も短所も、親としての至らなさも、そういうものとして受け入れる」
ジイジとしては、孫に対して「自己肯定感を持ってくれるといいな」と願ってはいる。かといって、目に見えない「自己肯定感養成ギブス」をつけさせて鍛えるつもりはない。
娘が幼い頃は「自己肯定感」という言葉はまだなかったが、そういえば結婚式のときに、新婦の挨拶で「両親のおかげで自己肯定感の高い人間に育ちました」と言っていた。
まったく身に覚えはない。単に流行りの言葉を使いたかっただけかもしれないが、自分でそう言えるのは、まあ悪いことではない気がする。何が起きても「どうにかなる」とデンと構えていてほしいし、こっちも「どうにかするだろう」とノンキに見守り続けたい。
子どもにせよ大人にせよ、ありのままを認めてばっかりだと、努力や挑戦から遠ざかってしまいそうじゃ。自己を肯定するばっかりではなく、時には落ち込んだり自分を責めたりすることも、たぶん人生には必要である。
そのへんのバランスはとても難しい。子育てとは「ちょうどいいバランス」を探り続ける旅なのかもしれん。知らんけど。
石原 壮一郎
コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか
コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか