「子どもがウソをついたら」𠮟る前に親がやるべき2つのこと
人生相談本コレクター・石原壮一郎のパパママお悩み相談室【16】「子どもがウソをつく」
2022.07.07
コラムニスト&人生相談本コレクター:石原 壮一郎
パパママは今日も悩んでいます。夫婦の関係や子育てをめぐる困りごとに、どう立ち向かえばいいのか。
500冊を超える人生相談本コレクターで、3歳の孫のジイジでもあるコラムニスト・石原壮一郎氏が、多種多様な回答の森をさまよいつつ、たまに自分の体験も振り返りつつ、解決のヒントと悩みの背後にある“真理”を探ります。
今回は、「最近、子どもがウソをつくようになった」というママ(4歳女児の母32歳)のお悩み。はたして人生相談本&石原ジイジの答えは?
子どものウソには2種類ある
子どもはしばしばウソをつく。なんせ子どもなので、ほとんどは見え見えで他愛ないウソではある。「ウソはよくない」のは当然ではあるが、はたして強く𠮟るのがベストなのかどうか……。
そもそも子どもは、何を思ってなんのためにウソをつくのだろう。子どもの成長過程で多くの親が経験する事態に、人生相談はどんなアドバイスを授けてきたのか。
4歳9ヵ月の娘を持つママ。娘はアイスクリームが大好きで、一日に1つと決めているのに、こっそり食べることがあるとか。「食べたでしょ?」と聞くと「食べてない」と言いはる。
どう対応すればいいかという相談に、心理カウンセラーの内田良子さんは「子どもが見えすいたウソを言う場合は、二つのケースがある」と言いつつ、こうアドバイス。
〈一つは、「このことをお母さんは絶対に許さない、受け入れてくれない」ということがわかっていることをしてしまった場合は、「してない」と言い逃れをします。(中略)
子どもは悪いことをしてしまったとわかっているから言い逃れをしているわけですから、白黒をはっきりさせるような追求(原文ママ)まではいらないと私は思います。幼児期の子どもに大切なことは「許す」ということです。(中略)
もう一つは、子どもは現実と想像の世界の境がないので、想像の世界のことを現実のように言う場合です。それが親にとってはウソだということになるわけです〉
(引用:ほんの木編『お母さんの悩みをスッキリ解決 子育て・幼児教育50のQ&A』2007年、ほんの木)
後者は、たとえば実際はそうじゃないのに、幼稚園の先生に「今度うちで犬を飼ったの」という話をするといったケース。その場合は犬が飼いたいという気持ちを汲んで、話を広げるのがいいと内田さんは言います。「リアリズムだけでは子どもは育ちません」とも。
いずれにせよ、親の側が「ウソはいけない」という「原理原則」にこだわると、子どもを追い詰めてさらに困ったことになりそうである。
ウソを心配しすぎないのも真理
2つ目は、ホームレスの方々が人生相談に答えるという前代未聞のユニークな本に掲載されていたやり取り。
小学生になる我が子が、今までは何でも話してくれる素直な子どもだったのに、最近ウソをつくようになってショックを受けている。
「どう接していったらいいでしょうか?」という相談に答えるのは、ホームレスのTさん。「ここで癖にならないように、ちゃんと『噓はだめ』と𠮟ってあげないといけない」と言いつつ、こう続ける。
〈お便りを読んでいて、お母さん自身のことも心配です。もしかして普段から、お子さんに対して神経質になりすぎと違いますか。
お母さん自身が神経質になりすぎて、子どもが微妙にそれを感じ取って噓をつくのかもわからない。(中略)
そう言うのも、私は子どもの時にほとんど噓をついたことがなかったから。(中略)
ホームレス状態になってしまっても、性格はひねくれずに素直な気持ちのままだと自分では思っている。それはなぜかと考えたら、親にあまり干渉されずにのんびりゆっくり育ったので、そこがよかったのかもわかりません〉
(引用:『ビッグイシュー日本版』販売者&枝元なほみ著『世界一あたたかい人生相談─幸せの人生レシピ』2008年、ビッグイシュー日本)
Tさんは「冗談で人を笑わす噓は好きです」と言いつつ、「お母さんもこれからは笑いながらのびのびとおおらかに」とアドバイス。相談を寄せた母親が「神経質になりすぎ」なのかどうかは、あくまで推測で実際のところはわからない。
ただ、子どものいろんな行動をする生き物である。心配しようと思えばとことん心配になるが、ほとんどのことは「笑いながらのびのびとおおらかに」構えればそれで済むというのは、たしかに真理かもしれん。
マツコ・デラックスは「ウソをつく=バカな子」に苦言
3つ目は、すぐにわかる噓をつく中2の長女に悩んでいるママの相談。話題の中心になりたかったり、人より優位に立ちたかったりで「バレバレの子どもみたいな噓」をつくという。優等生タイプで友人も多い小6の次女が「長女のことを軽く見ているのも気になります」と書いている。
「親として何ができるでしょうか?」という問いかけに、タレントのマツコ・デラックスさんが厳しい言葉を返す。
〈お母さん、ちょっと娘さんに対して冷たくありませんか? お悩み文全体に漂う、他人事のような物言いが気になって仕方ありません。(中略)
娘さんにとってかけがいのない(原文ママ)存在で、いつだって味方でいてほしいはずのお母さんが、アナタは噓つきでバカみたいだ、本当に呆れてしまうなんていっていたら、娘さんはどんな気持ちになるでしょう?(中略)
娘さんが決して冗談で済まされない噓をついた時は、思いっ切り注意してあげればいいのです。でも最初っから母親が、うちの娘はおかしいという前提で語ってしまう気持ちは、今すぐ捨て去ってしまってください〉
(初出:ぶんか社「まんがグリム童話」連載「マツコ・デラックスのあまから人生相談室」&「本当にあった主婦の体験」連載「マツコ・デラックスの新あまから人生相談室」より。引用:マツコ・デラックス著『続あまから人生相談』2015年、ぶんか社)
マツコさんは、親としてできること、しなければならないことは「娘の味方になること」だと言っている。
さらに「次女ばかり褒めて、長女をないがしろにするなど言語道断です。お姉ちゃんをバカにする妹も、きちんと𠮟ってあげましょう」と、相談者がひそかに自慢に思っているであろう部分にも釘を刺す。
個性的で手がかかるからといって、親が「ダメな子」のレッテルを貼ったら、その時点でたくさんの可能性の芽を摘み取ってしまうじゃろう。