【子どもの牛乳】「牛乳は子どもに悪い」は間違い! 牛乳を飲むメリットと適正量〔小児科医が解説〕

#16 令和の「子どもホームケア」~子どもの牛乳~ (2/2) 1ページ目に戻る

小児科専門医:森戸 やすみ

身近な食品ほど誤情報が広まりやすい

親世代が子どもだったころは、「体によい食品」の代表だった牛乳。ところが現在では、「子どもの体に悪い」といった気になる声もSNSで散見されます。

学校給食でも提供される牛乳ですが、なぜこのような噂が広まっているのでしょうか。

子どもが牛乳を飲むメリットや飲み方、気になる牛乳の噂について、森戸やすみ先生に聞きました。

───
牛乳は昔から体によい食品として知られ、特に欧米では、完全栄養食品に近い食品として親しまれてきました。

ところが1980年代以降になると、日本を含む世界各国で「牛乳を多く飲む国ほど骨折が多い」「心血管系疾患になりやすい」「がんになりやすい」などの噂が広まり、徐々に牛乳の健康リスクが疑われるようになったのです。

その後の調査・研究の結果、これらと牛乳に関連性はないことが明らかになっています。

でも、牛乳のように身近な食品が「実は危険だ」という意外性のある誤情報はあっという間に拡散されるのに対し、「安全だ」「危険というのは間違いだった」という正しい情報や誤情報の訂正はあまり広まりません。

そのため、今でも「牛乳は体に悪い」「子どもに飲ませないほうがいい」と、一部で言われ続けているのでしょう。

牛乳はおいしく栄養を摂取できるすぐれた食品

牛乳は、子どもの成長期に欠かせないカルシウム、良質なタンパク質がとれる体にとてもよい食品です。

カルシウムは丈夫な骨や歯を形成する大事な栄養素ですが、小魚や大豆製品は苦手な子も多く、子どもが十分な量をとるのはなかなか難しいもの。

牛乳なら母乳や育児用ミルクから自然に移行しやすいですし、牛乳に含まれるカルシウムは吸収率が高いので、手軽においしくとれるのがいいですね。

また、体の免疫機能を高めるビタミンA、細胞の再生や脂質の代謝を促すビタミンB2をはじめ、ビタミンCを除くビタミン類も豊富です。ビタミン類は相互作用により、それぞれの機能を高めます。そういう意味でも、牛乳はすぐれた食品なのです。

さまざまな栄養素をバランスよく含むため、免疫系の調節や感染防御作用、整腸作用、睡眠の改善など、体の機能を整える働きも期待できます(※1)。乳アレルギーでないなら、子どもに与えない理由はないでしょう。

生乳100%を原料にした牛乳には、加熱殺菌加工だけの「牛乳(無調整牛乳)」、成分を一部調整した「成分調整牛乳」、乳脂肪分を調整した「低脂肪牛乳」「無脂肪牛乳」があります。

おもに乳脂肪分の割合の違いで、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E)の量や味わいに多少の違いはあるものの、カルシウムやタンパク質などの栄養素はほぼ変わりません(※2)。

ただ、子どもにとっては脂肪(脂質)も大事な栄養素。肥満が気になる場合などを除いて、成長期にあえて「低脂肪牛乳」「無脂肪牛乳」を選ぶ必要はないでしょう。

子どもが飲むなら「牛乳(無調整牛乳)」「成分調整牛乳」のどちらかがいいですね。

体によい食品でもとりすぎには注意

では、牛乳はいつから子どもに飲ませていいのでしょうか。

飲み物として与える場合は、1歳になってから。それまでは、シチューやスープなどの離乳食に少量混ぜる程度にします。1~2歳なら、1日あたりの摂取量は300~400mlが目安。母乳や育児用ミルクを飲んでいるなら、その分を減らします。

牛乳は体によい食品ですが、飲みすぎには注意しましょう。牛乳は鉄の含有量が少ないため、牛乳でおなかがいっぱいになり食事が進まないと、「鉄欠乏性貧血」を起こす恐れがあります。

育児用ミルクには鉄が添加されていますが、母乳も鉄含有量が少なく、食事で摂取しないと不足してしまうのです。

どんなに体によくても、特定の食品ばかりとり続けるとリスクがあります。摂取量は3~5歳も300~400ml、6~12歳で300~500ml、12~18歳で400~600mlが目安。ほかの食品や食材もバランスよくとりましょう。

牛乳は加熱しても栄養素はほぼ変わらないので、料理に使うのもおすすめです。牛乳が苦手なお子さんには、ココア、1歳以上ならはちみつを加えると、飲みやすいかもしれません。

また、ヨーグルトやチーズなどの乳製品でも、牛乳と同じ栄養を摂取できます。

子ども用のチーズには、牛乳に少ない鉄が添加されているものもありますね。ヨーグルトはなめらかで甘みもあり、牛乳が苦手なお子さんでも食べやすいでしょう。ただし、甘いヨーグルトには糖分が含まれているので、食べすぎには注意してください。

牛乳の気になる噂の真相を解説

SNSで見たさまざまな“牛乳の噂”について、解説したいと思います。

▼牛乳を飲むと、鉄分が不足して「牛乳貧血」になる

「牛乳貧血」とは、牛乳ばかり飲んで食事をとれなくなり進行した「鉄欠乏性貧血」のこと。

さきほどお話ししたとおり、牛乳は鉄の含有量が少なく、ほかの食品や食材で摂取しないと鉄が不足します。原因は飲みすぎによる栄養バランスの崩れであり、牛乳が悪いわけではありません。

▼日本人の多くは「乳糖不耐症」で、牛乳を飲まないほうがいい

「乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)」とは、牛乳に含まれる乳糖(ラクトース)の消化不良により、おなかがゴロゴロする症状のこと。

赤ちゃんのころは乳糖を消化する酵素・ラクターゼが小腸で作られるのですが、離乳期を過ぎると徐々に減少するため、おなかがゴロゴロする人がいます。実は、日本人を含むアジア人は、大人になるとほとんどラクターゼが作られません。

ただ、日本人の多くが乳糖不耐症というわけではなく、乳糖は小腸で分解されなくても、大腸で消化・分解されます。また、ラクターゼが分解に関わるのは乳糖だけで、そのほかの重要な栄養素は吸収されます。「牛乳を飲まないほうがいい」とは言えませんね。

乳糖不耐症は病気ではなく、アレルギーでもありません。毎日少しずつ量を増やしながら飲むと、腸内環境が整って症状が改善したという報告も。

おなかがゴロゴロしやすい人は、少量ずつ数回に分けて飲む、温めるなど、工夫して飲むといいですね。また、乳糖不耐症が起こりにくいヨーグルトやチーズを食べるのもいいでしょう(※3)。

▼牛乳を飲むと、かえって骨がもろくなる

一時期、「牛乳を多く飲む国ほど骨折が多い」という説が話題になりました。たしかに牛乳や乳製品の消費が多い北欧では、他国に比べて骨折が多いという研究データが複数報告されています。

ただ、この結果には身長差や運動量、食生活、そして、日照時間と、複合的な原因が考えられます。

カルシウムの吸収にはビタミンDが必要で、食事以外にも日照(紫外線)によって体内で合成されますが、北欧は日照時間が少なく、これらの研究ではビタミンDについて必ずしも十分に検討されていません。

カルシウム豊富な牛乳を飲むことで、骨がもろくなることはありません。反対に、牛乳の摂取量を増やすと、成長期では骨量が増加し、中高年期では骨量の減少を抑制するという研究結果が多数報告されています(※4、5)。

体のこと、特に子どものこととなれば、「危険かもしれない食品なら避けよう」と思う気持ちはわかります。でも、SNSの声をそのまま信じるのではなく、信頼できる資料を情報源にしましょう。

牛乳については、一般社団法人Jミルク(※6)、農林水産省とJミルクの「牛乳でスマイルプロジェクト」(※7)のサイトが参考になりますよ。


【子どものホームケアの新常識 その16】
牛乳は、子どもの成長に重要なカルシウムやタンパク質、ビタミンなどをバランスよく含む体によい食品。ただし、食事に響かないように飲みすぎには注意する。


取材・文/星野早百合

〈参考〉
※1=一般社団法人Jミルク「牛乳に備わる健康機能」
※2=一般社団法人Jミルク「知って納得!牛乳の種類」
※3=一般社団法人Jミルク「牛乳を飲むと『おなかがゴロゴロ』が気になる人のためのQ&A」
※4=一般社団法人Jミルク「ウワサ6『世界4大酪農国』では骨折や骨粗鬆症が多い」
※5=一般社団法人Jミルク「牛乳が分かるQ&A Q17 牛乳を飲みすぎると骨粗鬆症になる?」
※6=一般社団法人Jミルク
※7=「牛乳でスマイルプロジェクト」

●森戸 やすみ(もりと・やすみ)PROFILE
小児科専門医。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。医療と育児をつなぐ著書多数

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Yasumi Morito
小児科専門医

小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。『子育てはだいたいで大丈夫』、共著に『やさしい予防接種BOOK』(共に内外出版)など、医療と育児をつなぐ著書多数。『祖父母手帳』(日本文芸社)の監修も手がける。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝える活動を行っている。

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小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。『子育てはだいたいで大丈夫』、共著に『やさしい予防接種BOOK』(共に内外出版)など、医療と育児をつなぐ著書多数。『祖父母手帳』(日本文芸社)の監修も手がける。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝える活動を行っている。

星野 早百合
ほしの さゆり

星野 早百合

ライター

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。