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【不登校から医学部へ】中2で成績はオール1「昼夜逆転」したわが子を”夜遊び”に連れ出した母の気づき

不登校から小児精神科医を目指すまで 母親インタビュー第2回「成績オール1と孤独・夜遊び」/全6回 (3/3) 1ページ目に戻る

教育ジャーナリスト:おおたとしまさ

おおた:どんなに考え尽くされた優しい言葉でも、素直に受け取れないときはありますよね。

孝子:お医者さんに「私が仕事を辞めたほうがいいでしょうか」と聞いたら、「辞めないほうがいい。学校に行ってほしいというお母さんが家にいるほうが、子どもにとってはストレスだから、絶対に辞めちゃダメ」と言われたので、仕事は辞めませんでした。

だから私が出勤するときは、当然、息子は寝ています。帰ったときは、起きているんだろうけど部屋に閉じこもっているか、元気なときはリビングでだらだら寝転がってYouTubeを見ているか。

寝るのは、本人に聞いたら深夜2時くらいと言っていました。調子が悪くなると、ずっと眠れずに朝6時に寝ることもあって。本当に昼夜が逆転していました。親子関係が悪化していたわけではなくて、良くいえば、そっとしておいた、という感じです。

起立性調節障害と診断されていたころの俊徳さん。弟とキャッチボール。  写真提供:倉孝子さん
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孝子:そんな状況に私自身が慣れてくると、息子を「夜遊び」に連れ出すようになりました。軽いものでいえば、夜に散歩に行ったり、映画のレイトショーを観に行ったり。

あとは、私が飲み会に行くときに一緒に連れて行って、遅くなって、タクシーで帰ってくる、ということもしていました。夜は元気で、起きていられるので。

最初は嫌々ついてくる感じだったと思うんですけど、何回か行くと、意外と楽しいと言ってくれて。中学生は普通、飲み会には行かないじゃないですか。だから、大人の様子や話が面白かったみたいです。

周りも「なんで中学生がここにいるの?」という反応の人もいましたが、事情を話すとみんな寛容で、「そうなんだ、別にいいよね」という感じで。それがすごく大きかった。

息子も「いろんな人に会えたこと、いろんな大人の話を聞けたのが良かった」と言っています。うちは親族がみんなサラリーマンなので、サラリーマン以外のいろんな生き方を見られたのが良かった、と。

あるときなんか、農家の方がすごく気遣ってくれて、「うちに遊びに来ていいよ」と畑に連れて行ってくれたり。あの飲み会で知り合った関係がいまでも続いています。

「心配」を「大丈夫」と言い換え続けた

おおた:口出ししない、手放そう、と覚悟を決めても、やっぱり不安になって揺り戻しがあるんじゃないかと思いますが。

孝子:これには、私には明確なきっかけがあるんです。当時、私は自分の趣味活動に邁進(まいしん)していました。環境問題にはまっていたんです。

そんなとき、バリ島にある世界的に有名なオルタナティブスクールを出て、日本の大学を休学して、環境問題について各地で講演して回っている環境活動家の若い女性が札幌に来るというので、私がお話会を主催したんです。

彼女がすごく素敵な子で。「なんでこの子はこんなに素敵なんだろう」と思っていたら、案の定、「お母さんはどういうふうに育てたんですか?」という質問が会場から出ました。彼女はこう答えたんです。

「私自身は、体育と美術だけが5で、ほかは1とか2ばかりの子だったんですけど、お母さんが常に『あなたはそのままでいいんだよ』というメッセージをくれていた」と。

それを聞いて、はっと気づいたんです。私が愛情からしていることは、もしかすると、今の息子の状態を否定することになりかねないんだな、と。そこから、「心配」という言葉を使うのは絶対にやめて、「大丈夫」という言葉に言い換えよう、と決めました。

おおた:孝子さん自身が、周りから心配されたときにそれを否定ととらえてしまった経験があるのに、自分も同じことをしているとはなかなか気づけないんですよね。

孝子:当然、すぐに頭を切り替えられるわけではないんですけど、「大丈夫、大丈夫」と言っているうちに、どんどん自分がその言葉に洗脳されていって、気持ちが本当に大丈夫になっていったんです。息子が、もう中学3年生になっていたころですね。中3の春かな。

おおた:言葉を変えると、気持ちがあとからついてくる。案外そういうものかもしれませんね。

孝子:ちょうどそのころ、息子が「オレはラッパーになる。ラップの大会に出る」と言い出しました。

おおた:息子さんの中でも、何かが動き出しましたね。

******

次(第3回)は、不登校の息子が突然ラップ大会へ出場!? フリースクールでの出会いを経て、異例の高校受験に挑みます。

取材・文/おおたとしまさ(教育ジャーナリスト)


●おおたとしまさ
PROFILE
教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。リクルートから独立後、教育に関してさまざまな観点から取材を行い、著書は90冊以上。2026年5月に『フリースクールという選択』(講談社+α文庫)を上梓。どこの組織にも属さない在野の視点で現代の教育への考察・提言を続けている。メディアへの出演や講演も多数。

(Xアカウント:@toshimasaota

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おおたとしまさ

おおたとしまさ

教育ジャーナリスト

1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、教育をテーマにさまざまな取材・執筆を続けている。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。 主な著書に『勇者たちの中学受験』、『子育ての「選択」大全』、『不登校でも学べる』、『ルポ名門校―「進学校」との違いは何か?』、『なぜ中学受験するのか?』など80冊以上。

1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、教育をテーマにさまざまな取材・執筆を続けている。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。 主な著書に『勇者たちの中学受験』、『子育ての「選択」大全』、『不登校でも学べる』、『ルポ名門校―「進学校」との違いは何か?』、『なぜ中学受験するのか?』など80冊以上。