「そんなに死にたいなら死ねばいいじゃん!」
モヤモヤしながら眠りについたその日の夜。夜中に物音で目が覚め、廊下に出てみると、姉の部屋から泣き声が聞こえてきました。少しだけ開いたドアの隙間からのぞくと、母が姉を抱きしめている姿が見えました。
姉は、声を詰まらせながら訴えていました。
「もう無理……消えたい……死にたい……」
母も涙をぽろぽろこぼしながら「大丈夫、お母さんがついてるから。ずっとあなたを守るから」と必死に声をかけています。
その光景を見た瞬間、私のなかに昼間以上の激しい怒りが込み上げてきました。そして気づけば私は、姉の部屋のドアを乱暴に開けて踏み込んでいました。
「ねえ、お姉ちゃん! いつまで甘えてるの!? みんな、お姉ちゃんのことばっかり! 私だってずっと、ずっと我慢してきたんだよ!」感情が抑えきれなくなった私は、一番言ってはいけない言葉を口にしてしまいました。
「そんなに死にたいなら、死ねばいいじゃん!」
口にした途端、血の気が引きました。取り返しのつかないことを言ってしまった──後悔しても、出てしまった言葉は戻せません。
姉や母の顔を見ることができず、逃げるように自分の部屋へ戻りました。
初めて知った姉の葛藤
翌朝、なんともいえない気持ちでリビングに下りていった私。母からきっと昨晩のことを𠮟られるだろうと予測していました。しかし母はいつもどおりの笑顔で「おはよう!」と声をかけてきたのです。
そして母からかけられたのは、思ってもみない言葉だったのです。「ねえ、今日は学校を休まない? お母さんと一緒に出かけようよ」母の目は少し腫れていたものの、昨日の修羅場には一切触れませんでした。
母が連れていってくれたのは、私がずっと行きたがっていたショッピングモール。何ヵ月ぶり、いや何年ぶりかで母を独り占めできた時間。好きなブランドの服を買ってもらい、お昼には、私の大好きなオムライスを食べました。
帰り道、車を運転しながら、母は前を向いたまま「今まで本当にごめんね。寂しい思いをさせていたね」と私に謝ってくれたのです。そして母は、姉が小学生のころから、陰湿なやり方で何度も仲間外れにされてきたことを話してくれました。
姉は家族に心配をかけまいとひとりで抱え込み、限界を迎えてしまったのだといいます。クラスが変わっても、「また嫌われるかもしれない」という恐怖が消えず、学校へ行こうとしても体が動かなくなってしまったのだそうです。
それまでの私は、姉がわがままで学校に行っていないのだと思っていました。姉が弱いから学校に行けないのだと。でも母の話を聞いて、初めて姉の苦しさを想像しました。何も悪くないのに、突然仲間外れにされる怖さ。それが毎日続くかもしれないと思いながら学校へ向かうつらさ。
助手席で母の話を聞いているうちに、私の中にあった姉に対するとげとげした気持ちは少しずつやわらいでいきました。
▶︎悩むわが子に渡したいものは?

































