助産師が正す【臨月時の誤情報】「出産間近は胎動がなくなる」は間違い

助産師・田中まゆ「妊娠から子育てまで それ間違ってます!」〜出産前の胎動〜

助産師・思春期保健相談士:田中 まゆ

「胎動が少なくなる」と思うことの危険

「胎動が少なくなる」と誤解していたとしても、「そういえば出産までそんなに減らなかったわ」だけで終わるのであれば、私もここまで口酸っぱく言っていません。

妊婦さんたちに毎回訂正しているのは、「胎動が少なくなる」と思い込んでいることにより本当に赤ちゃんがお腹の中で元気がなくなっているのを見過ごしてしまう可能性】が潜んでいることを一番心配しているからです。

●臨月を迎えた妊婦さんのお腹の赤ちゃんが、ある日、妊婦検診に行ったら赤ちゃんの心拍が止まっていた……
●出産予定日を過ぎた赤ちゃんがお腹の中で亡くなっている……

私が助産師をしている中でも実際に目にしてきました。

それまでの妊娠生活、ずっとお腹の中で育ってきて大きくなった赤ちゃんが亡くなってしまうなんて、妊婦さん自身も、その周りも、とても想像しなかったことと思います。赤ちゃんグッズも用意していたことでしょう、名前も考えていたことでしょう。

当然産まれてくると思っていた赤ちゃんが亡くなっている、とてつもない悲しみが医療従事者にも伝わってきます。

ただでさえ悲しいことなのに、もし「胎動が少ないけど、それが普通だと誤解し見過ごしていた」としたら、どんなに自分を責めてしまうでしょうか。

もちろん、妊娠・出産の中には防ぎきれない症例もありますし、妊婦さん自身に責任があるものではありません。ですが、どこか一瞬でも「あの時、病院に行っていれば」と後悔するようなことは、できる限りないようにと強く願います。

また、赤ちゃんの元気がないことを見過ごしてしまう以外にも、「胎動が少なくなる」の誤認識を持つことで以下のような問題も起こります。

・臨月で胎動があることがおかしいんじゃないかと不安になる

・早く産みたいのに胎動があるからなくなってほしいと願う

・陣痛が来ていても胎動があるからまだ本当の陣痛じゃないと思って病院へ行くのが遅れ、出産が病院到着ギリギリになる


正確な判断ができなかったり、間違った行動をするしまうことにつながるのです。実際に、「臨月に胎動が少なく感じたが安産だった」という方がいたとしても、感じ方には個人差があり、さらには危険を見過ごす可能性があるならば、わざわざ伝えなくていい情報だと私は思っています。

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