
“紙の本ならでは”の遊びが詰まった1冊
続いてご紹介するのは、イギリスのロングセラー『ゆかいなゆうびんやさん』シリーズの1作目、『ゆかいなゆうびんやさん おとぎかいどう自転車にのって』(文化出版局)。

絵本のページが封筒の仕様になっていて、中に実物の手紙が入っているというユニークな仕掛け絵本です。
郵便屋さんは、この手紙をいったい誰に届けるのでしょうか。どんな手紙が入っているのでしょうか。読み手のお子さんは、先の読めない展開にきっとワクワクするはずです。
ページをめくり、順番に手紙を開いてみましょう。最初の封筒に入っていたのは、女の子が『3匹のくま』の一家に宛てたパーティーの招待状のようです。次の封筒には、怪しい魔女グッズを扱うお店から『ヘンゼルとグレーテル』の魔女に宛てた広告のカタログ。次は、大金持ちになった『ジャックと豆の木』のジャックが、旅先から大男に送った絵はがき……。そう、手紙の届け先は、すべておとぎ話の主人公たちなのです。
手紙の内容も書体も、それぞれの書き手によって実に個性豊か。ほかにも『赤ずきんちゃん』に依頼された弁護士がおおかみに宛てた通告書や、『シンデレラ』のドラマティックな人生を描いた絵本の出版許可願もあり、思わず大笑いしてしまいます。
そして最後に郵便屋さんが向かったのは、誕生パーティーが開かれているひとりの女の子の家。誕生日祝いの贈り物にもぴったりですね。
ただ、この絵本の真のおもしろさがわかるのは、おとぎ話の内容を知っていてからこそ。「誕生日祝いだから奮発しよう」というのであれば、物語に登場するおとぎ話を子ども向けにやさしく描いた本とセットで贈ると、より喜ばれるのではないでしょうか。
絵本は、ときにおもちゃのような役割も果たします。本物の手紙のように、封筒から取り出して読む。紙の絵本にしかできない贅沢でユーモアあふれる遊びが楽しめる1冊です。