外の世界に一歩を踏み出すのを応援してくれる3冊
『ムーミン谷の仲間たち』(著/トーベ・ヤンソン 訳/山室静、講談社刊)
©️Moomin Characters™
石崎:ムーミン一家をとりまく、ムーミン谷に暮らす仲間たちとの楽しい生活を描いた短編。ムーミンシリーズにはたくさんの登場人物がいます。
この本にはそれぞれの登場人物が主人公の9つの短編が収録されていて、ムーミンの世界がコンパクトに楽しめる1冊です。世の中にはいろいろな人がいるというのは、子どもたちには絶対に必要な視点ですからね。
子どもたちには「目に見えない子」のお話がおすすめ。ある日、姿が見えなくなってしまった女の子がムーミントロールの家にやってきます。女の子はなぜ見えなくなってしまったのか、どうすると見えるようになったでしょう。
「しずかなのが好きなヘムレンさん」のお話は、定年後のお父さんにこそ読んでほしい。年金をもらって好きなことをしたいと願うヘムレンさんは、子どもたちに請われて公園に遊園地を作ろうとしますが――。これを読んで、しみじみしてくれるお父さんであってくれるといいなと思います。ぼくはこのヘムレンさんが大好きなんですよ。
(編集部註:青い鳥文庫版『ムーミン谷の仲間たち』には、石崎洋司さんによる巻末エッセイが収録されています)
\青い鳥文庫版『ムーミン谷の仲間たち』/
『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』上・下(著/リチャード・アダムズ 訳/神宮輝夫、評論社刊)
石崎:ウサギたちが住んでいる野原に危険が迫り、11匹のウサギが平和な土地を求めて旅に出ます。やっとたどり着いた理想の地、ウォーターシップ・ダウン。でも、穏やかな日々はつかの間で……。
高校3年のときに初版を読みました。危機が来ると知ったウサギが、野原から逃げ出そうと長(おさ)ウサギを説得するけれど、変化を恐れて動かない。しかたなく群れの中の数匹が脱出していきますが、行く先々にウサギの村があって……。
途中で立ち寄った農場には、いけがきの切れ目があって、そこから逃げようとすればできるのに、農場のウサギたちはそうしないのです。外の世界に行けるのに、行こうとしない。それは高3のぼくにとって衝撃でした。現代にも通じる話だと思います。
『「オードリー・タン」の誕生 だれも取り残さない台湾の天才IT相』(著/石崎洋司、講談社刊)
石崎:3冊目は自身の著作です。生まれながらの心臓病、ギフテッドであるための苦しみといじめで、8歳で世界に絶望し不登校。家族とも対立して、死をも考えた台湾のオードリーは、どうして希望を取り戻せたのか? なぜ「だれも取り残さない社会」を目指すのか……?
ITの天才にして、トランスジェンダーを公表した世界が注目する「新しい民主主義」の旗手、「オードリー・タン」が生まれるまでの伝記物語です。
オードリーがとにかくすごい。さらに、お母さんも素晴らしいのです。今、日本でも研究者がどんどん海外に流出してしまうのが問題視されていますが、台湾も同じ状況でした。でも、オードリーは「海外から知識を持って帰ってくれるのだから、よいことだ」と言います。
『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』と同様に、ずっと同じ環境にいるだけではなく、外の世界に出ることの大切さを教えてくれる、そんなオードリー・タンの生き方をえがいた本です。
ぼくは、本を読む意味は、「今ここにある世界から違うところに行ける」「違う世界を見られる」ことだと思います。過去や未来に行くことはできません。国内や海外などに行くのもハードルが高いでしょう。本はそれを可能にしてくれるのです。
──石崎さんが子どものころに病気で外に出られなかったことが、物語を通して外の世界につながるようになった一因かもしれませんね。
「君へ贈る」石崎洋司さんのアドバイス
──今を生きる子どもたち、そして親世代にもアドバイスをいただけますか。



































