8児を育てる小児科医ゆび先生が “パパの産後うつ”に助言 「パパはこうすべきと考えると子育ては苦しくなる」

#2 ゆび先生インタビュー ~パパの産後うつ~

小児科専門医・インフルエンサー:ゆび先生

子育て歴17年のゆび先生が感じるパパの変化

──最近はパパの育休取得率も増えています。ゆび先生は一番上のお子さんが17歳と、一番下が1歳(2025年7月現在)と16歳差ですが、世の中のパパの子育てへの関わり方に変化を感じますか。

ゆび先生:長女が生まれた17年前と比べると全然違いますね。パパの育児参加率は確実に高くなっています。小児科の外来も、パパが連れてくる患者さんが増えたなという印象です。

ただ、パパ自身が育児に参加したくて子どもと過ごしているのか、渋々やっているのか、奥さんのためなのか、または世間体なのか。ここが重要です。小児科医として診察室で見ていると、どういうスタンスで連れてきているパパなのか、見てすぐにわかります。

「いつからお熱出ていますか」と聞いても「わからないっす」と答えるパパもいます。きっと奥さんに連れていけと言われたから来ただけなのでしょう。それでは育児参加とはいえません。

育休もそうです。育児をしたいから取るのか、自分が休みたいから取るのか、周りが取るから取るのか、ママや会社から言われるから取るのか。目的で関わり方はだいぶ違いますよね。

もし育休が取れなくても、パパにできることはたくさんあります。僕は健診で小児科医として赤ちゃんを診る側ですが、健診の当番でないときは、妻と一緒にわが子の乳幼児健診に行きます。絵本や栄養について客観的に知る機会にもなるので新鮮ですね。

真面目なパパほど産後うつに!?

──最近は子どもが生まれた後、パパがメンタル不調になる「パパの産後うつ」が話題になっています。産後の父親のメンタル不調のリスクは、母親と同じくらいだそうですが、元気がないパパが気になることはありますか。

そうですね。僕の周りでもうつっぽくなっているパパがいて心配です。ママの産後うつももちろん一定数いますけど、最近増えているという印象はパパです。

やっぱりまじめな方が多いんですよね。かつての僕のような「べき論」を持っていて、「パパはこうあるべき」と思っているパパがまいってしまうケースが多い。よくいうとまじめですが、それは臨機応援にできないということの裏返し。

「べき論」で育児をしていると、ストレスを感じやすくなってしまうんです。僕たち夫婦だって、あのままの考えだったら危うかったかもしれません。

パパママが少しでもラクになれればと子育ての新刊を書いたゆび先生。  写真提供:今井出版
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育児は細かいルールを決めてしまうと大変なことになります。「自分の仕事だ」と思うお世話については一生懸命やるのだけれど、「ママの仕事だ」と思い込んでいることには手を出さなくなるからです。

例えば「おむつ替えはママの仕事」と夫婦で決めていたとします。するとまじめなパパは「しなくていい仕事」だと認識してしまいます。だからパパがおむつを替えることになったとき、すごく抵抗を感じるんです。

でもそもそも目の前でわが子が泣いている。くさいと思っているのは自分。自分の目の前で愛するわが子が不快な思いをしている。そうなると、自分のためにもこの子のためにも自分が替えないと、って思うのが自然です。

その気持ちよりも「ママの仕事だから」とルールを優先すると、夫婦お互いのストレスになります。奥さんだって「近くにいるあなたがやってよ」という気持ちになります。

「でもこれがルールだったじゃん」となったとき、まじめな人ほどストレスを感じてしまうんです。

育児ってがっかりすることの連続じゃないですか。思いどおりにいかないことだらけです。だからガチガチにルールで固めていると自分たちが苦しくなります。育児中は視野が狭くなりがちなので、少しずつ広げていくことで気持ちが楽になると思います。

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