
子どもの非認知能力を伸ばすため“時間がない親”ができる3つのこと〔専門家が解説〕
#3 島根太郎氏に聞く「学童と非認知能力」~時間がない親ができる非認知能力の伸ばし方~ (2/3) 1ページ目に戻る
2025.08.20
株式会社東急キッズベースキャンプ代表取締役社長 社長執行役員:島根 太郎
親も子どもも失敗して当たり前
「大前提として……」と、島根太郎さん(民間学童「キッズベースキャンプ」代表取締役社長)が切り出した子育ての心構えは「完璧でなくても大丈夫」というメッセージでした。
「子育ては親も失敗して、子どもも失敗しての繰り返しです。そして、親が自己嫌悪に陥る原因は、感情的に怒りすぎてしまったということがほとんど。でも、安心してください。
親子関係のよい点は、修復するチャンスがいくらでもあることです。楽しい体験を一緒にしたり、おいしいものを食べたりするだけで、気分は変わります」
一方、小学生で脳の前頭前野が発達途上にある子どもたちは、まだまだ自分を十分にコントロールできないため、失敗だらけで当然だと島根さんは言います。
「自己をコントロールする非認知能力を伸ばす視点から大切なのは、子どもが自分で計画を立て、自分で決めたことを達成するという体験の積み重ねです。当然、すぐにはうまくいきませんから、余白のある無理のない計画になるよう助言するのも親の役目です。
また、できなかった過程を指摘して『こうしろ、ああしろ』と言うのではなく、『自分で決めたことだし、もうちょっとがんばってみよう』と子どもを信じる応援団の役割を演じるよう心がけること。親も失敗するけど、子どももしくじる。失敗と修復を繰り返しながら、親も子も一緒に成長していくことができるのです」
非認知能力を伸ばすため時間がない親でもできる3つのこと
①土日のちょっとした時間を子どもと一緒に
「平日は忙しくても、土日のちょっとした時間だけを子どもに割いてあげましょう。例えば、二重跳びの練習を一緒にしたり、子どもが好きなサッカーやバスケットボールで対決したり。
『できた!』という輝く瞬間を共有することは、親としてもすごくうれしいですし、子どもにとっても自信になります。
また、鬼ごっこもいいですね。タダだし、どこでもできるうえに、ほかの運動をするときの俊敏性や瞬発力を鍛えることにもつながります。本気の鬼ごっこは、判断力や危機回避能力といった非認知能力も伸ばしてくれます」
島根さんは、息子さんたちの自転車の練習に付き合った体験を振り返ります。
「僕も平日はなかなか遊べない父親でしたが、週末に2人の息子の自転車の練習は全部付き合いました。乗れるようになって『やった!』と叫んでいる姿は今もはっきり覚えています。親の僕にとってもとてもかけがえのない大切な思い出です」
②長期休みの昔ながらの遊び
「お盆やお正月など親もお休みが取れるときに、普段はやれない昔ながらの遊びに取り組むのもオススメです。凧揚げやコマ回し、シャボン玉、けん玉、ボードゲーム、トランプ、花札、将棋など」
このような遊びなら特別な場所に出かけなくても、家庭の中や近所の公園で十分に子どもとの時間を作ることができますし、お金もそれほどかかりません。
「これらは私たちが学童を運営するなかで、お子さんの非認知能力を伸ばす効果があると実感している遊びです。共通点は、創意工夫で楽しさが増すところ。
親も久しぶりにやってみて、『回せなくなっている!』なんて言いながら一緒に楽しむことができるはずです」


③日常の中で良いお手本を示す
「近所の人に挨拶をしているかどうか。思いやりのある態度で店員さんに接しているか。公共のマナーを守っているか。
ドライブに出かけると必ずマナーの悪いドライバーに出会います。そこで親がイライラしてクラクションを鳴らしたり、舌打ちしたりすると、子どもは覚えています。親が悪いドライバーになると最悪です。
子どもたちは日常の中で、保護者を見て、真似していきます。保護者の実際の行動が、『社会軸』に関連する非認知能力について良くも悪くも見本になるのです」