子どもの非認知能力を伸ばすため“時間がない親”ができる3つのこと〔専門家が解説〕

#3 島根太郎氏に聞く「学童と非認知能力」~時間がない親ができる非認知能力の伸ばし方~ (3/3) 1ページ目に戻る

株式会社東急キッズベースキャンプ代表取締役社長 社長執行役員:島根 太郎

日常の悩みを解決に導く3つの方法

「出した物は出しっぱなし」「明日の学校の準備を忘れる」「何度言っても宿題をしない」のに、「YouTubeを見始めると止まらない」「ゲームの時間が増えていく」など、多くの保護者が悩む日常的な問題について、島根さんはこうアドバイスします。

【1】スモールステップで目標達成

「片付けにしても、宿題にしても、最初から完璧を目指す計画を立てさせないことが大切です。『これくらいからやってみたら?』というスモールステップで目標達成していくほうがいいでしょう」

例えば、小道具として100円ショップに売っているようなホワイトボードを用意。そこに「朝は何時に起きる?」「宿題はどのタイミングにやる?」「ゲームは何時までやっていいことにする?」など、1日のスケジュールを自分で書いてもらうのです。

「スモールステップとは、小さな一歩。どんな習慣も小さな一歩を踏み出し、継続するうちに身についていくもの。

例えば、今まで1日2時間YouTubeを見ていた子が『明日から10分にする!』と宣言しても、それは現実的ではありません。大切なのは、確実に達成できる小さな一歩から始めること。

仮にチャレンジしてみて失敗しても𠮟るのではなく、『いきなり10分は難しかったね。1週間に15分ずつ短くしてみたら?』とサポートしながら、スモールステップで少しずつゴールに近づいてきましょう」

【2】自己決定の原則を守る

じつは、子どもたちも1日の流れはわかっています。

「やらなければいけない宿題があることも、明日の学校の準備をしなくちゃいけないことも、寝る前に部屋を片付けたほうが気分がいいことも、わかっています。でも、できない。

そんな子どもたちのやる気スイッチを入れるには、やっぱり自分で決めてもらうのが一番です」

例えば、YouTubeやゲームなど、依存性のあるものについては、「お父さんも失敗するんだよ。15分って決めたのに1時間見ちゃった」と正直に話して、一緒に対策を考える。やることをやったら、寝る時間までは好きにやればいいという約束を作るのも1つの方法です。

島根さんはここでも「大事なのは、子どもによる自己決定」とアドバイスしてくれました。

「保護者側も『今すぐやって!』というせっぱ詰まった気持ちになる前に『この後、どうする予定?』と質問してみましょう。

すると、子どもも『この番組を最後まで見たら、部屋を片付ける』『宿題やってから、ゲームで遊ぶ!』など、自分なりにその後の流れを決めてくれます。

人は自分で決めたことを口に出すと、モチベーションが高まるので実行してくれる確率も上がるはずです」

【3】「褒める」と「𠮟る」の比率は9:1で

島根さんは、キッズベースキャンプのキッズコーチ(学童で子どもたちと一緒に過ごす支援員)がもっとも気を付けていることとして、「褒める」と「𠮟る」の比率を挙げました。

「私たち大人も誰かから厳しい指摘をされるときは、ポジティブな部分を先に7割、8割くらい伝えてもらえないと、素直に受け取ることができませんよね。この比率、子どもの場合はより高まり、9割くらいは褒めてあげないと、1割の指摘がうまく伝わりません。

なかなか難しいことですが、𠮟る前に、お子さんの良いところ、親から見て不十分でも子どもなりに努力していること、成長しているところを見つけて認めてあげること、言葉に出して伝えることが大切です」

忙しい日々の中で、子どもの非認知能力を伸ばすために特別なことをしようと意気込む必要はありません。島根さんは先述した「完璧でなくても大丈夫」という心構えを繰り返します。

「大切なのは、日常の中で子どもと向き合う時間を大切にすること。完璧でなくても、子どもは親の愛情を感じ取っています。その子なりの考えを尊重しながら、失敗を恐れず、一緒に成長していく気持ちで接していきましょう」

取材・文/佐口賢作

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●島根太郎(しまね・たろう) PROFILE
株式会社東急キッズベースキャンプ代表取締役社長 社長執行役員。2006年に日本初の民間学童保育施設「キッズベースキャンプ」を創業。2008年に東急グループ入り。民間学童保育のパイオニアとして業界を牽引している。2025年5月に初の著書『子どもの人生が変わる放課後時間の使い方』(講談社+α新書)を出版。

島根太郎氏が長年の学童現場でつちかった子育ての有意義な取り組みについて記した『子どもの人生が変わる放課後時間の使い方』(講談社+α新書)
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しまね たろう

島根 太郎

Taro Shimane
株式会社東急キッズベースキャンプ代表取締役社長 社長執行役員

一般社団法人キッズコーチ協会代表理事。一般社団法人民間学童保育協会、東京都学童保育協会理事。 1965年東京都目黒区生まれ。中央大学卒業。輸入雑貨事業や自然食事業等を経て、2003年株式会社エムアウトに入社。心理学に関わる事業開発を経験し、「小1の壁」の問題解決と非認知能力の教育を志し、2006年に日本初の民間学童保育サービス「キッズベースキャンプ」を創業。民間学童保育のパイオニアとして業界を牽引している。 2008年12月には東急グループ入りし、東急グループの子育て支援事業の中核企業としての展開を開始。保育士資格保有。 2025年5月に初の著書『子どもの人生が変わる放課後時間の使い方』(講談社+α新書)を出版。 ●キッズベースキャンプHP

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一般社団法人キッズコーチ協会代表理事。一般社団法人民間学童保育協会、東京都学童保育協会理事。 1965年東京都目黒区生まれ。中央大学卒業。輸入雑貨事業や自然食事業等を経て、2003年株式会社エムアウトに入社。心理学に関わる事業開発を経験し、「小1の壁」の問題解決と非認知能力の教育を志し、2006年に日本初の民間学童保育サービス「キッズベースキャンプ」を創業。民間学童保育のパイオニアとして業界を牽引している。 2008年12月には東急グループ入りし、東急グループの子育て支援事業の中核企業としての展開を開始。保育士資格保有。 2025年5月に初の著書『子どもの人生が変わる放課後時間の使い方』(講談社+α新書)を出版。 ●キッズベースキャンプHP

さぐち けんさく

佐口 賢作

Kensaku Saguchi
フリーライター/インタビュアー

20代で『月刊BIGtomorrow』(青春出版社)のデータマンとして、ライター業をスタート。以降、人物インタビューを中心に、雑誌、書籍、Webサイト、広告制作などで活動中。これまで携わった書籍は約130冊。 元気な男児2人のパパ。いつも家にいる父ちゃんとして、子育てもガッツリ向き合っている。サッカーは箱推し。

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20代で『月刊BIGtomorrow』(青春出版社)のデータマンとして、ライター業をスタート。以降、人物インタビューを中心に、雑誌、書籍、Webサイト、広告制作などで活動中。これまで携わった書籍は約130冊。 元気な男児2人のパパ。いつも家にいる父ちゃんとして、子育てもガッツリ向き合っている。サッカーは箱推し。