一般社団法人日本鞄協会ランドセル工業会(#1)によると、ランドセルの基本的な形や使い方は100年以上、変わっていません。
伝統的なデザインが重んじられるなか、従来の形や機能と向き合い、改めて「どうしてこの形なのか」、「このパーツはいるのか」、「何の役に立つのか」と細部を見つめ直し、新しいカタチを提案するブランドも。
見た目はランドセル、でも使ってみると全然違う。新しいブランドから登場した新機能を持つランドセルを紹介します。
重さと色選び 子どもに課されるラン活
子ども乗せ自転車のチャイルドシート用レインカバーブランドとして子育て世代に知られる、norokka(ノロッカ)。商品の企画・開発を行うのは、株式会社アークズの村住明彦さんです。
ノロッカから、2024年度向けにリリースされたランドセルが、その名も「自由なランドセル」(各46,200円・税込)。製品化のきっかけは、村住さん自身のラン活経験にありました。
「親として、子どものランドセル姿をとっても楽しみにしていたのですが、初めてランドセルを背負った息子を見たときに『重そうで、なんだかかわいそう』と感じたのです」(アークズ・村住さん)
また、ラン活をしながら親子間で繰り広げられる“色選びへの葛藤”にも疑問があったと話します。
「当時の息子は『青がいい』と言って譲らなかった。しかし、小学校4年生の今、息子はすっかり青から卒業して、黒が大好き。
子どもの好きなキャラクターや遊び、お気に入りの色が次々と変わっていくのは当たり前のことなのに、小学校入学前の子に色を決めさせて『高価なものだから、6年間使おうね』というのは酷(こく)な気もしたんです」(アークズ・村住さん)
重さと色選び、この2つに違和感を受けたことから「軽くて着せ替えができる、自由なランドセルを作ろうと決意した」と語ります。
「開発を始めたのが今から約5年前(2018年)。当時はまだ軽量ランドセルは多くありませんでしたが、ここ数年、軽量なランドセルやランドセル型リュックがたくさんデビューしています。
そこでノロッカにしかできないランドセルは何だろうと考えたときに『使い方の常識を大きく変えてみよう』と思ったのです」(アークズ・村住さん)
かぶせ=フラップって本当に必要?
“着せ替えられるランドセル”をコンセプトにしたとき、村住さんが真っ先に目についたのが、「かぶせ=フラップ」でした。かぶせとはランドセル本体を覆う「ふた」部分です。
「先入観をゼロにしてランドセルをみたとき、『かぶせって必要ないよね』という思いになりました。身長の約半分の長さのかぶせを大きく開けてものを出し入れするのって、子どもにとって使いやすいものではないのでは、と。
一方で、ランドセルの伝統的な形は尊重したいですし、子どものランドセル姿を楽しみにする親としての気持ちもあり、“形は変えず、使い方を変える”ことを思いつきました」(アークズ・村住さん)
そこで決めたのが、かぶせを着脱式にすること。その過程で思いついたのが特許取得の「上開きシステム」でした。
従来のランドセルは、机の上に寝かせて下部にある錠前を開閉し、かぶせを大きく開いて、ものを出し入れします。
ですが、ノロッカの「自由なランドセル」は縦置きのまま、かぶせ上部で開閉とものの出し入れが可能。かぶせ自体を取り外して使用もでき、別売りの違うかぶせ(別売りフラップ15,400円)に付け替えることもできます。
素材は耐久性に秀でたナイロン製にすることで、890gの軽さを実現しました。
さらに、「実際に子どもが入学してみると、さらに多くの発見があった」と村住さん。
体操着袋、水筒、タブレット、教科書以外の荷物が多く、それらを手に持ったり、ランドセルの横のフックに下げたりして持ち運んでいる子を多く見かけたといいます。
「ノロッカのランドセルを見て、シンプルなデザインだなと感じる方が多いと思いますが、それには理由があります。
子どもの安全性を第一に考え、左右にものをぶら下げられないように、フックやDカンなどの金具はつけられません。ですが、下部に着脱できるバッグをオプション販売でつけるなど、収納性にもこだわりました」(アークズ・村住さん)
2023年4月発売の2024年度モデルは、かぶせ(フラップ)が4色(各15,400円)。2023年4月中旬以降、アウトドアブランドやアーティストなどのコラボフラップの発売を予定中だといいます。
「付け替えを楽しんでもらえるユニークなフラップ(かぶせ)の準備を進めています。単純な“色選び”を超えた、ランドセルとの楽しい付き合いを、6年間通してしてもらえたら。子どもたちが笑顔になるアプローチをしていきたいと思っています」(アークズ・村住さん)