
【特別養子縁組】 「養親」久保田智子が生みの親に「産んでくれてありがとう」とは言わなかったワケ
養親当事者・久保田智子(兵庫県姫路市教育長、元TBSアナウンサー)インタビュー【3/3】~娘との出会いと今~
2025.04.04
兵庫県姫路市教育長:久保田 智子

「産んでくれてありがとう」とは言わないと決めた
特別養子縁組のあっせん団体から赤ちゃんが生まれる連絡を受けた数日後、久保田さん夫妻は生まれたての赤ちゃんを迎えるために産院を訪れました。そして、赤ちゃんと会う前に生みの母との対面を果たします。
「私が登録していたあっせん団体では、生みの親と育ての親の双方の同意があれば一度だけ対面することが可能でした。赤ちゃんと会う前の数十分でしたが、産院内でお話しすることに。
何を話せばよいのか、前の日から夫といろいろと相談していましたが、実際にお会いしてみると、まったく思うようには話せませんでしたね。
相談員さんが間を取りもってくれて、妊娠中の体調や、妊娠にいたる経緯や赤ちゃんお父さんのことなども教えてもらいました。私たち夫婦からは『頑張ります』とか『産んでくれてありがとうございます』とかは言わないようにしようと決めていたんです。
頑張ることは当たり前だし、生みの母は私たちのために赤ちゃんを産んでくれたわけではないので。
でも『大切に育てます』ということだけは最後にしっかりお伝えしました」
今振り返ると、かなり緊張していたという久保田さん。ただ、生みの母に会ったという事実はその後のハナちゃんの育児においても、大きなプラスとなったそうです。
「私にとっては生みの母にお会いしているっていうのはとても大きいです。見えないものとか、わからないものに対する不安って少なからずあると思うので、その点では安心して娘にも話すことができています。こういう雰囲気の人だったよって、娘にすごいポジティブに伝えられているんじゃないかなって思います。
ただ、私はたまたま生みの母も、私たち夫婦に会いたいという気持ちをもってくれたから実現したことなので、必ず会ったほうがよいということではありません。それぞれのご家庭での考え方を尊重していくことが、何よりも大切だと思います」
かわいくて小さな命に感動
生みの母との短い対面の後、いよいよハナちゃんとの対面を果たします。
「本当にかわいかったです! すごくかわいかった! 赤ちゃんってこんなに小さいんだって思って、大切にしなければと心から思えました」
その後、育児に奔走する日々が続くなか、久保田さんの中で養子縁組したことを世間に向けて公表していきたいという気持ちが徐々に高まっていきます。
「アメリカから帰ってきて間もなかったということもあり、養子縁組した家族であることを隠すことにとても違和感をもつようになっていました。
ある日、友人に食事に誘われ、子育てをしているから難しいと答えると『いつ妊娠してたの?』と驚かれたので、養子縁組をしたことを伝えると『そうなんだ……』と少し含みをもった反応が返ってきたんです。
誰に伝えて、誰には伝えないとか、その境界線って難しいですよね。おおやけに発表していたら、もっと当たり前のこととしてみんなに受け入れられるんじゃないかなと考えるようになりました」
ただ、夫の平本典昭さんは公表することに最初から賛成という訳ではありませんでした。