家事のプロが実践 子どもを「家事シェア」に巻き込んで生きる力を養おう!

家事研究家・佐光紀子「幼児の家事デビュー」の教え 第2回

佐光 紀子

佐光さん曰く、幼児がお手伝いをしてくれたら、親は「褒める」より「盛大に喜ぶ」方が子どものモチベーションが上がるそうです
写真:mon_printemps_fleuri/イメージマート

毎日行う家事は、パパ・ママはもちろん、できれば子どもも巻き込んで家族全員でシェアしたい。ただ、自分のことすらおぼつかない幼児に「家事シェア」をさせるのは早いのではないか? 何をどう、どこまでまかせたらいいのか。失敗したらどうフォローしたらよいか。家事研究家で、家族間の家事シェアを提唱する佐光紀子さんに、コミュニケーションの方法も含めてアドバイスをいただきました。

家族はチーム! 一人一人に役割を持たせよう

子どもは幼いうちから、親がやることをよく見ています。その一つが、家事。テーブルの拭き方に始まり、掃除の仕方、玉ねぎの皮の剥き方まで実にさまざまな家事を目の端で捉えています。

いつしか子どもは、その中から一つ二つ、やってみようとします。そのやる気スイッチを見逃さず、任せてみること。そして失敗しても親は「助かったわ」と喜びモチベーションを継続させ、その子の「係」としてその仕事を定着させましょう。それはどんな家事でも構いません。

実は、未就学児ができる家事の係は、意外と多いんです。個人差はありますが、下記がその例です。

【2歳~4歳程度の幼児ができそうな家事係】

1)ご飯の時に家族全員のお箸をちゃんと出して並べる係

2)ほかの事をしているどちらかの親をダイニングに呼んで、食卓についてもらう係

3)親が玄関を出る時「携帯持った?」と確認してくれる係

4)保育園から帰ってきたら、みんなの靴をそろえる係

5)外に洗濯物を干しているときに雨が降ってきたら教えてくれる係
など

【5~6歳程度の幼児ができそうな家事係】

6)流れないように工夫して、お米をザルで研いでもらう係

7)玉ねぎの皮をむく係
など

3の「親が携帯電話を持ったか確認する係」は、忘れっぽいパパ・ママだと、教えてくれると本当に助かりますよね。「あ、忘れた、ありがとう!」と喜んで伝えると、「役に立った」って小さい子は誇らしく思うはず。

4の「靴をそろえる係」は、せっかく並べた靴がパパの帰宅後に崩れていたりすると、怒り出す子どももいるでしょう。それで他の家族が気をつけてくれるようになることもとても大事です。また、せっかく片づけたのにそれが壊される経験していくことも一つの成長ですね。

わが家の場合、次男が年長のころ、6の「米研ぎ」係でした。彼は、ぐるぐる回すところから始めて、ちゃんとお水を切る、測る、と少しずつ段階を踏んでいきました。おぼつかない手取りでお米がこぼれていくこともあれば、水が多すぎておかゆになったこともありました。そんな次男も続けていくうちにだんだん極めてくるようになり、今ではお米を研ぐのが一番ていねいで、計量もきちんと行います。彼が炊いたご飯は、開けた瞬間、家族みんなが分かるんです。逆に、雑な私が炊いたごはんも開けた瞬間にバレるんです(笑)。

家事シェアの第一歩は、各々に課せられた役割を認識してもらうこと。役割を持った子どもたちには、責任感と自信がついていきます。それを継続することで成功体験をさせ、頃合いを見てステップアップを。「玉ねぎをむく係」から「お味噌汁を作る係」といった具合に昇格していくと、より子どもの家事力は実践的になっていきます。

佐光さんの3人のお子さんは、今や母の佐光さん以上に家事ができる子どもに育ったそうです
ZOOM取材にて

トップダウン方式ではなく「お願い」をする

子ども一人一人に「係」ができたら、原則的にはその一つを続けてもらうことですが、ママの手がふさがっているときに手伝ってもらいたいこともあるでしょう。

そこで意識したいのは、ママが全部を仕切って、子どもがママの部下のようにならないこと。つまり、「指示」や「命令」ではなく、「お願い」をするよう心掛けてください。仕事では、ストレートにやってもらいたいことを伝える方がスムーズですが、子どもに対しては別です。

たとえば、下に物が落ちている。母は腰を痛めていてしゃがんで拾うのがつらい。そのとき、「そこにいるんだから、拾ってよ」なんて言われたら、「チッ、めんどくさいな」と思うのが人間。一方、「ママは今腰が痛くて、しゃがんで拾うことも立ち上がることもつらいの。どうしたらいいかしら?」「ママは腰が痛くてしゃがむとつらいから、お願い、拾ってくれる?」と、ほとほと困った顔して見られたら、「じゃあ拾ってあげるよ」と言う気持ちになるもの。スーパーヒーロー気分になってもらうことがポイントです。

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