元劇団四季・木南清香「子ども時代の私をとりこにした夢のステージ」

外反母趾（がいはんぼし）をきっかけに、小４で大好きなバレエをやめた木南さん。次に習い始めたのが将来の仕事となる、ミュージカル教室でした。

「小２のときに、地元で開催されるミュージカルの出演者募集のお知らせを、母が見つけてきたんです。ちょうどバレリーナ役が募集されていて、『バレエなら踊れるし、やってみたら？』とすすめられ応募したところ、出演が決まりました。

私は出演者の中では最年少で、周りからかわいがっていただけたこともあって、とにかく楽しかった！ という記憶があります。

自分が歌ったり踊ったりすることも大好きでしたが、観ることも同じくらい大好きだったので、お稽古場で他の出演者の歌やダンスを見られることが嬉しかったんです。それから、『ミュージカルをもっとやりたい！』と思うようになりました。」

初めてのミュージカル出演では出演料もいただき、“舞台を仕事にする”ということを、この頃から少しずつ意識し始めたといいます。

「初めてお仕事として舞台に立たせていただけて、少額ながらもギャラがいただけました。２年生の子どもながらもとてもうれしくて。

その後、小４で再びそのミュージカルへの出演が決まり、舞台に立てたとき、『将来はミュージカルを仕事にしたい！』と夢になりました」

もともと、幼い頃から歌ったり踊ったりすることが大好きな木南さんがミュージカルにのめり込むのは、もはや必然。

歌やダンスを楽しく学べる地元のミュージカル教室を親御さんが探してくれて、すぐに通い始めたといいます。
「ミュージカル教室には妹と一緒に通っていました。私はやる気がみなぎっていて、どんな小さなことも聞き逃すまいと前方でレッスンを受けるタイプ。

それに対して、妹は教室の後ろで控えめにレッスンを受けているおっとりしたタイプでした。そんな妹が、すぐに発表会の主役に抜擢（ばってき）されたんです。

姉妹で比べられて劣等感を抱いてしまう……という話を聞いたりしますが、私はそんなことはありませんでしたね。かわいい妹が抜擢されたことをうれしく感じていました」

当時はやる気だけでなく自信にもあふれていた、と笑う木南さん。

「小学２年生の時、母がミュージカル『レ・ミゼラブル』のオーディション告知を見つけて、私が興味あるだろうと、応募したことがありました。

オーディションへ行くと、まわりは事務所に所属して本格的なレッスンを受けているような子ばかり。それなのに、たまたま取材されたテレビで『自信はありますか？』と聞かれ、『うん！』と自信満々に答えた記憶があります。

もちろん、すぐに落ちてしまったんですけど。とてもポジティブな子どもでした（笑）」

次に木南さんがオーディションを受けたのは小６のとき。今度は自らミュージカル「アニー」のオーディションへ応募しました。

「今度は自分の意思でオーディションに応募して、しっかりレッスンを積んでから挑みました。そのときも、周りは劇団に所属してスパルタで稽古を受けているような子ばかりでした。

結果的にはまた落ちましたが、『そんな子たちの中でいいところまで残れたのはスゴイ！』なんて思いながら、帰った記憶があります。

思い返せば、『ミュージカルに出たい』と強く思うようになったのは、テレビで放送されていた『アニー』の密着番組を見てからでした。録画したビデオテープを、擦り切れるほど毎日繰り返し見ていましたね」

子どもは周囲からの影響でさまざまな物事に興味を持ち、実際に自分で見たり触れたりすることで心から“好き”だと思えるものを見つけていきます。そしてそういった過程は、子ども自身が将来について考え始めるきっかけとなるのです。

親にとって、まず大切なのは、“子どもが興味を示した物事を体験できる機会をつくること”。木南さんの話を聞いてそう感じました。

次回は、彼女がミュージカル俳優になるという夢を叶えるべく、どのように動き出したのか。学生時代のお話を伺います。

取材・文／柳未央（シーアール）


木南清香さんインタビューは全３回。次（＃２）は21年10月1日公開です（公開日時までリンク無効）。