小学生から17歳が市長を選ぶ「こども選挙」 茅ヶ崎から全国12都市に広がった理由

子どもによる、子どものための「こども選挙」#1~スタートから選挙委員集結まで~

子どもが社会と関われる場をつくりたい

当初は市内の小・中学校と連携して、授業の一環にすることも視野に入れていたという「こども選挙」。それが実現できなかったのは、「日本は政治を学校現場に持ち込むことに、必要以上にナーバスになっているのかもしれない」と、池田さんは考えています。

「学校で教えているのは政治の“仕組み”だけなんですね。例えば各政党の主張や議員一人ひとりの考え方など、現実の政治を具体的に取りあげることはありません。それでは政治への関心は薄いままです。投票年齢が引き下げられたところで急に『選挙へ行こう!』と言われても、少し無理があるように思います」(池田さん)

例えば、投票率が80~90%と高いことで知られるスウェーデンでは、若者の投票率も毎回80%を超えています。そんな同国のシティズンシップ教育を代表するものに「学校選挙」と呼ばれる模擬選挙があります。

「スウェーデンでは、総選挙のたびに学校単位で学校選挙(模擬選挙)を行っています。各党から人を招いて、子どもたちと討論会や意見の交換をするんです。教科書には、投票に行くことや自分の意見を表明するためにデモを行う大切さ、デモのやり方まで書かれています。

この教育がいいかどうかは別の議論が必要ですが、子どもにとって社会や政治が身近にあるんだろうなと思います」(池田さん)

政治や選挙、ひいては社会参加が身近でない状況があるならば、子ども自身が主体的に社会と関われる場をつくっていこう。「こども選挙」には、そんな思いが込められています。

選挙運営を担う「こども選挙委員」は小学3~6年生

2022年8月には、公募により「こども選挙委員」が決まりました。選挙の運営はこども選挙委員が担います。

募集条件は、小学3年生~17歳でしたが、蓋を開けてみると全員小学生。市内在住の小学3~6年生の女子14名、男子1名の計15名でした。

気になる子どもたちの参加理由は……?

「初めから『選挙を体験したいんです!』なんて意欲的な子どもは少数派で、ほとんどが『親に連れられて来ました』みたいな感じでした。何をするのかよくわかっていない……といった雰囲気でしたが、進めていくうちにみんなの意識は驚くほど変わりましたね」(池田さん)

ワークショップを通して池田さんは、子どもたちの「考える力」を感じたという。  写真提供:こども選挙実行委員会
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「こども選挙委員」は、投票日までの約2ヵ月間、4回のワークショップや勉強会を通して民主主義や選挙について学び、自分たちが暮らす茅ヶ崎について考えました。それらをもとに市長候補者への質問を考え、それぞれに投げかけます。果たして子どもたちが考えた質問とは?

次回は、子どもたちが体験したワークショップや、「こども選挙」実現に向けて立ちはだかった困難について、引き続き池田さんに伺います。

取材・文/稲葉美映子

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いけだ かずひこ

池田 一彦

Kazuhiko Ikeda
「こども選挙」発起人、株式会社be代表

クリエーティブディレクター。プランニングディレクター。アサツーDK、電通を経て、2021年に地元茅ヶ崎市に株式会社be設立。 「全ての仕事は実験と学びである」をモットーに、事業開発からコミュニケーションデザイン、UX設計まで幅広いレイヤーのディレクションを手掛ける。 新規事業開発やサービス開発において5つの発明で特許を取得。特許を発明。キッズデザイン賞・最優秀内閣総理大臣賞、グッドデザイン賞・金賞、ADFEST・ゴールド、ACCクリエイティブイノベーションなど国内外アワード受賞多数。 ●公式HP「こども選挙」 ●株式会社be

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クリエーティブディレクター。プランニングディレクター。アサツーDK、電通を経て、2021年に地元茅ヶ崎市に株式会社be設立。 「全ての仕事は実験と学びである」をモットーに、事業開発からコミュニケーションデザイン、UX設計まで幅広いレイヤーのディレクションを手掛ける。 新規事業開発やサービス開発において5つの発明で特許を取得。特許を発明。キッズデザイン賞・最優秀内閣総理大臣賞、グッドデザイン賞・金賞、ADFEST・ゴールド、ACCクリエイティブイノベーションなど国内外アワード受賞多数。 ●公式HP「こども選挙」 ●株式会社be

いなば みおこ

稲葉 美映子

ライター

フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。

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