矢部太郎 体が弱く“ヒーロー”に憧れなかった子ども時代 「人気漫画家」の才能を育んだ“父のほめ方”とは

#2 矢部太郎インタビュー~子ども時代~

芸人・漫画家:矢部 太郎

絵を描くのが好きでおしゃべりな子どもだった

──矢部さんの子ども時代について、お話を聞かせてください。振り返って、どんな子どもでしたか?

矢部太郎さん(以下矢部さん):保育園から小学生のころは、すごくおしゃべりだったと思います。絵を描くのはそのころから好きでしたね。父(絵本作家・やべみつのり)が絵を描く仕事をしていたので、家で一緒に絵を描いたり、動物園に連れていってもらって動物の絵を描いたりしていました。

──子ども時代に経験していて、よかったなと思うことはありますか?

矢部:今、絵を描くことが仕事になっているので、幼少期に絵を描いていてよかったと言える部分はあるかなと思っています。父とはものづくりをすることが多く、一緒に遊ぶのはすごく楽しかったですね。

子ども時代の矢部さん。家にいるお父さんとつくし取りに行ったり毎日楽しく遊んで過ごしたという。  写真提供:吉本興業
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──矢部さんが子ども時代、親しんでいた本や児童文学というと?

矢部さん:父の仕事柄、絵本や本は家にたくさんあって、父が描いた絵本のほかに、父の持っている本もいろいろと読んでいました。図書館に行くのも好きでしたし、本はわりと買ってもらえていたと思います。ブルーノ・ムナーリの絵本『やになった』はお気に入りで、今も自分の部屋の書棚に置いています。

象が象でいるのがイヤになって、何になりたいかというと鳥になりたいと思っている、というふうに、いろいろな動物が自分でいることがイヤになり、ほかの何かになりたいと考える。お話の最後に出てくるのが牛なのですが、牛は象になりたいと思っている、というふうに循環しているんですよね。

絵本の中にマドがあり、マドを開くとその動物の頭の中がのぞけるという仕掛けもあって、とても楽しい。ブルーノ・ムナーリの本は父も好きで、家にいっぱいありました。デザインが素敵で、読み手が楽しめるように作られているのを感じます。

児童文学では『エルマーのぼうけん』が好きで、よく読んでいました。エルマーが動物島にとらわれている竜の子を助けるため、持ってきたリュックの中に入っているもので困難を乗り越えていきます。

毛がクシャクシャになっているライオンを、リュックにあった櫛(クシ)でとかしてあげるなど、知恵を使って動物とうまくコミュニケーションをとって危機を打開するというところが心に響きました。

矢部さんが子ども時代のエピソードを描いた「宝物」。  引用『ご自愛さん』(PHP研究所)

僕自身、体が弱かったり運動が苦手だったりしたので、どこまでいっても暴力や強さに距離をおいてしまうというところがあり、ヒーローものやバトルものが好きになれずにいます。“エルマー”は冒険譚(ぼうけんたん)ではありますが、知識や考える力で乗り越えて前に進むというのは現代的な姿勢で、好きなところです。

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