幼児期は勉強より遊びが大事! 「早期教育」が学力につながらないこれだけの理由

【今こそ学力観のアップデートをするとき】本当の学びとは何か#3「思考力を育てる遊び」

「遊び感覚で学べる」は本当?

少し前から、「遊びが大切」とよくいわれるようになりましたが、その本当の意味を理解できている大人は多くないと今井先生は話します。

「遊びの重要性」を指摘し、世界中から注目されているアメリカの研究者にキャシー・ハーシュパセック氏及びロバータ・ゴリンコフ氏がいます。

彼女たちは、次のような『遊びの五原則』を提唱しています」(今井先生)

【遊びの五原則】

1 遊びは楽しくなければならない。

2 遊びはそれ自体が目的であるべきで、何か他の目的(例えば、文字を読むため、英語を話せるようになるため)であってはならない。

3 遊びは遊ぶ人の自発的な選択によるものでなければならない。

4 遊びは遊ぶ人が能動的に関わらなければならない。遊ばせてもらっていたら遊びではない。

5 遊びは現実から離れたもので、演技のようなものである。子どもが何かの「ふり」をしていたらそれは遊びである。


出典 『学びとは何か──〈探求人〉になるために』(今井むつみ/岩波書店)

「『遊び感覚で○○を学ぶ』といった教材などをよく見かけますが、これが果たして『遊び』といえるのか、よく吟味する必要があるでしょう。

重要なのは、この『遊びの五原則』を、子どもが満たしていると感じられることです。大人が『遊び』と考えていても、子どもが『やらされている』とか『勉強している』と思っている場合は、『遊び』とはいえないのです」(今井先生)

おもちゃ選びも注意が必要!

幼児期に子どもが使うおもちゃ選びにも、実は大切なポイントがあります。

「ある特定の機能を持ち、遊び方が限定されてしまうおもちゃ、例えば、ボタンを押すと音楽が流れたり、動き出したりするおもちゃは、子どもにとっては魅力的で、最初のころは喜んで遊ぶでしょう。

しかし、実はこうしたおもちゃは、子どもの創造性を育むことにはつながらないということが、次のような実験からもわかっています」(今井先生)

【実験】

子どもを2つのグループに分けて、Aグループには答えがひとつに決まってしまう遊び道具を与え、Bグループには「正しい答え」のない遊び道具を与えました。一定時間その道具で遊んだあと、レゴブロックを与えてどのようなものを作るのかを見てみました。

【結果】

Aグループは、行き詰まると思考停止になってしまい、何度も同じことを繰り返していました。あきらめるのも早かったそうです。これに対し、Bグループの子どもたちは、バリエーションに富む構造のものを作り、独創的な名前をつけました。試行錯誤を繰り返し、飽きることもありませんでした。

「この実験からもわかるように、目的が限定されたおもちゃは、子どもが自分で考え想像する機会を奪ってしまう可能性があります。

● すぐに飽きてしまうおもちゃ
● 一度ある方法で完成させると他のやり方を考える必要がないおもちゃ
● 音や動きの刺激が強く子どもに考える余地を与えないおもちゃ

こうしたおもちゃを与える前に、大人はよく考え、長期的に見て子どもの能力を伸ばしてあげるためには何が必要なのか、よく考える必要があると思います」(今井先生)

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