「自由進度学習」で子どもも先生も劇変! 広島・公立小・驚きの実例公開

【小学校教育2.0】廿日市市立宮園小学校の挑戦#1「自由進度学習、驚きの効果」

ライター:川崎 ちづる

学習教材や順序・範囲も選べる!

宮園小学校で行っている自由進度学習は、学年によって詳細な進め方は異なりますが、まずは子どもたちと「学習計画表」を共有するところから始まります。

3年生の学習計画表。  写真提供:宮園小学校

学習計画表には、学習項目ごとに教科書やプリントなどのページ、ドリル、タブレットなどの該当問題などが記してあります。子どもたちは、好きな教材を使って学習を進めていき、わからないところが出てきたら、友だちに聞いたり、先生に質問したりして解決していきます。

学習内容は、随時タブレットなどによるチェックテストを行い、定着しているかを確認していきます。

子どもたちは各々のタイミングでチェックテストに取り組み、学習内容の確認をしています。  写真提供:宮園小学校

研究主任の二野宮加代子先生は、「教科書だけでなくいろいろな教材を用意しているのは、選択肢を設けることで、子どもたちが自分で決める機会を増やすため」と話します。

宮園小学校では、「学びの主体は子どもたち」という考え方のもと、多様な選択肢を提供し、子どもたちが自己決定していくことを大切にしています。だからこそ、「選択肢」は教材だけでなく様々な場面に設けられ、子どもたちが自分で決めながら学習を進めるスタイルになっています。

「学ぶ順序についても、子どもが自分で選択できる部分を用意しています。最初に基礎的な考え方を学んだ後は、どこから取り組んでもよいことにし、子どもたちはそれぞれ、好きなところから学習します。

4年生の学習計画表。赤枠の中は自分の好きなところから取り組むことができます。  写真提供:宮園小学校

さらに、全員が必ず学び終える部分と、選択式で取り組む『発展コース』や『チャレンジコーナー』を用意し、学ぶ範囲も選べるようにしています。

学習計画表の一部。赤枠が発展コースで、取り組むかどうかは自由です。  写真提供:宮園小学校

発展コースについては、やってもいいし、やらなくてもいい。興味を持った子はより学びを深められるように工夫しつつ、強制はしません。自分で選べることが子どもたちの主体性を引き出し、自立した学びにつながると考えています」(二野宮先生)

思考力・判断力を育てる「学習コーナー」

宮園小学校の自由進度学習には、もう一つ、特徴的な取り組みがあります。それが冒頭でもご紹介した「学習コーナー」です。学習コーナーでは多種多様な「体験的学習要素」を取り入れています。

学習コーナーの一例。説明と必要な道具などが用意されています。  写真提供:宮園小学校

例えば、小学校4年生の算数「小数」では、1教室分のスペースを使ってAからFまで6つの「学習コーナー」があり、子どもたちはチームで協力して課題に取り組んでいきます。

Aコーナーは「ピタリ賞!」と題して、下記の3つの問題が用意されています。
①ねんどを使って1.34kgを作ろう
②メジャーを使って2.04mに合わせよう
③ねんどを使って0.478kgを作ろう

友だちと協力しあって、熱心に取り組む子どもたち。  写真提供:宮園小学校

コーナーには粘土やメジャー、はかりが用意され、子どもたちはそれらを使って問題にチャレンジ。友達と相談しつつ、楽しそうに、時に真剣に取り組む姿が見られます。

教室だけでなく、廊下でも学びが展開されています。  写真提供:宮園小学校

なぜこのような「体験的な学び」を、積極的に取り入れているのでしょうか。

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