広島発・自由進度学習+教え合い 良い人間関係が成績に与えた好影響

【小学校教育2.0】 江田島市立三高小学校の挑戦#2 「自由進度学習の展開」

ライター:川崎 ちづる

自由進度学習では、先生は子どもたちのサポートに徹します。  写真提供:三高小学校

2020年度からイエナプランを参考に学校づくりを進めている広島県江田島市立三高小学校。異学年グループの探究学習からその実践をスタートさせましたが、自立的な学びの範囲を広げていくために、同年3学期から自由進度学習も開始しました。

一部の学年が複式学級である特徴を生かすことで、異学年の学び合い、助け合いが生まれ、子どもたちの学習意欲が大きく向上。成績アップにもつながりました。

第2回では、三高小学校が行う自由進度学習の内容と子どもたちの学習姿勢の変化、さまざまな方法に挑戦しながらも臨機応変に対応してきた取組経緯などをうかがいました。

先生を待たなくていい「自由進度学習」が快適!

初めての異学年探究学習で手応えを感じた2020年度(異学年探究学習については、#1を参照)。3学期からは、新たな取組に着手しました。イエナプランのブロックアワー※に当たる活動として、「自由進度学習」を一部の教科でスタートさせました。

※ブロックアワーとは
イエナプラン教育の特徴的な活動の一つで、自立学習・基礎学習を行う。一週間を基本として、各教科の基礎的・基本的な学習などの課題を設定。

子どもたちは、「しなければならない課題」と「自分自身が選択した内容」について、どのように学ぶかを自分で計画し、自立的に学習する。

自由進度学習とは、子どもたちが教科書やプリントなどの自分に合った教材を使って、自分のペースで学びを進めていく方法です。

三高小学校は小規模校のため、3・4年生、5・6年生が複式学級※であり、これまでも同じ教室で学習しています。以前の授業では、先生は5年生の指導をしてから6年生、と順番に進めていました。

複式学級とは
2つ以上の学年で構成される学級。1学年の児童数が少ない場合に編制することが認められている。

三高小学校は、全校児童が47名の小規模校(2022年5月現在)であるため、学級編制は、1年生、2年生、3・4年生、5・6年生、特別支援学級(知的)、特別支援学級(自閉・情緒)となっている。

しかし、自由進度学習を始めてからは、先生に頼らなくても、子どもたち同士で助け合って学習を進めていくことができるようになり、大喜びだったといいます。

自由進度学習に取り組む子どもたち。  写真提供:三高小学校

昨年度3・4年生の担任だった里岡靖彦先生は、子どもたちの様子をこう振り返ります。

「子どもたちは、自分で問題を解き、答え合わせをしながらスムーズに学習を進めていきます。

疑問点などが出てきたら、近くにいる友達に聞いたり、お互い説明し合ったりして、自分たちで解決します。

答え合わせも自分で取り組みます。  写真提供:三高小学校

これまでは、わからないところが出てきても黙って教師を待たなくてはならなかったのが、自由進度学習だと『ちょっと○○ちゃん、こっちに来て教えて』などと声をかけることができる。

待ち時間が減って自分のペースで進めていけることが、すごく快適だったようです」

わからないところは友達と教え合います。  写真提供:三高小学校

自由進度学習は、一歩間違うと、子どもたちが単に黙々と自習する「孤立した学び」になりかねません。しかし、三高小学校では子どもたち同士が自然と互いに教え合い、助ける「学び合い」が広がりました。

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