名古屋発・低学年から「自分で学ぶ力」を育てる公立小学校のスゴい実践

【小学校教育2.0】名古屋市立矢田小学校の挑戦#1「2年生のプロジェクト型学習」

ライター:川崎 ちづる

プロジェクト型学習で学んだ内容を発表する子どもたち(2年生)。  写真提供 矢田小学校

「単なる暗記に意味があるのか」「自分で考えることが課題解決能力を育てる」、小中学校での学習に対し、このように考える人も増えてきました。

2020年度から小学校の学習指導要領が新しくなり、「主体的・対話的で深い学び」を目指して、公立小学校の授業も変化しつつあります。

しかし、小学校低学年では「(主体的な学びは)まだ早い」と考える人も多いのではないでしょうか?

「1~2年生は基礎的な知識を身につける時期だから、勉強が楽しくなくても仕方ない」「黙って先生の話を聞けるようになることが先決」などという声は、学校現場からも家庭からも根強く聞かれます。

そんな「低学年への視点」を覆し、1~2年生から子どもの自主性を大切にした授業を実践しているのが、名古屋市立矢田小学校です。

低学年でプロジェクト型学習の要素や自由進度学習を取り入れて数年が経った今、子どもたちは確実に自ら学びを進めていく力をつけ、のびのび、そしていきいきと学習に向き合うようになりました。

本連載では、その具体的な取り組みと子どもたちの様子を3回に渡ってご紹介します。

第1回は、2年生の生活科で行われているプロジェクト型学習の内容について、先生方にうかがいました。

なぜ低学年から「自分で学ぶ力」を育てるのか?

名古屋市立矢田小学校では、「子どもが自ら問いを立て、見通しをもって課題に立ち向かっていく力」を育むために、低学年からプロジェクト型学習※の要素を取り入れています。

※プロジェクト型学習とは
プロジェクト型学習(PBL/Project Based Learning)は、子ども自身が課題を設定し、その解決のための計画を立て、探究し、成果を発表する学び。

2019年に、「ナゴヤ・スクール・イノベーション事業」※のモデル実践校となったことがきっかけで、探究型の学びを全校で開始しました。

※「ナゴヤ・スクール・イノベーション事業」とは
子ども一人一人の興味・関心や能力、進度に応じた「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を市全体で推進するために、名古屋市教育委員会が行っている事業。モデル実践校では、学校全体で授業改善の実践研究に取り組んでいる。

プロジェクト型学習などの探究的な学びを導入する小学校は、少しずつ増えてきてはいるものの、多くは3年生以上の取り組みで、低学年ではまだまだ珍しいのが実情です。

その要因について、矢田小学校教務主任の山内彰一先生はこう説明します。

「3年生以上には『総合的な学習の時間』があり、プロジェクト型学習を行いやすい環境が整っていますが、1~2年生はそうした『テーマを自由に設定できる科目』がないんですね。つまり、探究学習を行う上で、制度的な課題があるんです。

ただ、特定の教科学習でも、決められた『めあて(目標)』の範囲のなかであれば、プロジェクト型学習の要素である、『子どもが自分で課題を設定する』『自ら計画を立てて進めていく』などを取り入れることは十分できます。

矢田小学校では、主に生活科のなかで、プロジェクト型学習の要素を取り入れた学びを実践しています」(山内先生)

実際に「プロジェクト型学習の要素を取り入れた授業」では、子どもたちは真剣に考えてアイデアを出し合い、具体化させ、目を輝かせながら学習に取り組んでいるといいます。

子どもたちが主体となって学習を進め、地域施設への訪問の準備を進めています。  写真提供 矢田小学校
実際にインタビューに行きました。  写真提供 矢田小学校
発表まですべて自分たちで決め、資料を作ります。  写真提供 矢田小学校

「『手はおひざ、背筋ピン』といった言葉に象徴されるように、低学年は特に、先生の話を静かに聞くことや、決まりを守って行う学びを重視する傾向があります。

これはこれで大切ですが、教員の言うことを聞かせる指導中心では、いわゆる『指示待ち』の子どもばかりが育ってしまう面もありますよね。

『1~2年生だからまだ早い』ではなく、学習への基本的な姿勢を身につける低学年こそ、自分で考えて学びを進める力や、友だちと関わり合って課題に取り組む力も同時に伸ばしていくことが大切だと考えています」(山内先生)

では、実際にどのような授業を行っているのでしょうか。

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