親も子どもも「音読」飽きちゃった! 楽しく続ける「コツ」を国語専門現役小学校教諭が伝授

現役小学校教諭・土居正博先生に聞く「音読」を楽しく取り組む方法 #3 音読学習のモチベーションの上げ方

小学校教諭:土居 正博

音読のモチベーションを上げるには

──毎日同じ文章を読んだり聞いたりしていると、親子ともに飽きてしまいます。モチベーションを上げる方法はありますか。

土居先生:読み方のバリエーションを変えてみるのはいかがでしょう。

例えば、子どもが好きなキャラクターの話し方で読んでみる方法があります。くじ引きでキャラクターを決めても楽しいですよ。

このように、シチュエーションを変えて、楽しそうに読ませると、表現力にもつながります。

ほかにも、子どもが読んだあとに、もう一度内容を考えさせるのも適度な緊張感があっておすすめです。子どもが「~なのです」と読み終わったら、「どのように?」「なんでだと思う?」と聞き返してみるなどです。

──なるほど。例えば、先生ならどのように聞き返しますか?

土居先生:小学校2年生の教科書に、「お手紙」という物語があります。誰からも手紙をもらったことがない「がまくん」が、家の前で手紙が届くのをずっと待っているんですね。

その様子を見た「かえるくん」は、がまくんに喜んでほしくて手紙を書きました。かえるくんは、書き終わった手紙を直接がまくんに渡さず、「かたつむりくん」に届けてもらうよう頼みます。

しかし、かたつむりくんは、歩くスピードがゆっくりなので、がまくんの家に着いたのは4日後でした。手紙が届くまでの間、がまくんとかえるくんは2人で家の前でずっと待っていたのです。

このお話を読み終わったあと、「なぜかえるくんは、かたつむりくんに手紙を渡したのかな」と子どもに問いかけてみます。きっと、子どもからさまざまな考えが出てくるでしょう。

「いっしょにまちたかったのかな」「まつじかんもしあわせだったのかな」など、それぞれの考えを、親子で話し合うのも音読に飽きないための方法の一つです。ぜひ試してみてください。

音読には名文や古典、論語なども活用してほしい

──音読には教科書が最も適しているのでしょうか?

土居先生:教科書だけでなく、さまざまな文章に触れるのが良いでしょう。

教科書は子どもの学年に最も適した文章が載っているので、年齢を飛び越えたり、戻ったりする学習はできません。

学校では一人ひとりの能力に合わせた音読学習が難しい面があるので、家庭では子どもの様子に合わせた教材を試すと良いと思います。

──どのような教材がおすすめですか。

土居先生:偉人たちの名文や古典なども活用できますよ。孔子の論語などもおすすめです。

言葉の意味はわからないかもしれないけれど、漢字の読み方や文章のリズムを学ぶことができます。

親子でいっしょに勉強できますし、「言葉の意味をいつ理解できるようになるのだろう」と、子どもの成長がさらに楽しみになるかもしれません。

──教科書以外の音読は、どのくらいの年齢からはじめると良いでしょうか。

土居先生:年長くらいの年齢で少しでも文字を読んだり書いたりしているのであれば、どんどん音読させてあげてください。

未就学児の特徴は、「書ける」語彙と「読める」語彙の数がまったく違うことです。

文字を書けるということは、読む力も間違いなく備わっているので、読める語彙をどんどん増やすことが大切です。

大人でも「薔薇」の文字を読めても、正しく書ける人は少ないですよね。書く力よりも読む力を先に伸ばすのが重要なので、文字を読める年齢になったら音読にチャレンジしてみてくださいね。

───◆─────◆───

つい「面倒くさい」と思いがちな毎日の音読学習。音読の仕方や聞き方を少し工夫するだけで、いつもと違う親子のコミュニケーションにつながると教えていただきました。

「ながら聞き」でも、子どもへのプラスのフィードバックがあればきっと励みになるはずです。
子どもの小さな成長に気づく「楽しさ」を感じるためにも、毎日の音読を聞く時間を大切にしていきたいですね。

取材・文/中井ようこ(メディペン)

土居先生に聞く「音読」連載は全3回。
1回目を読む。
2回目を読む。

18 件
どい まさひろ

土居 正博

DOI Masahiro
公立小学校教諭

1988年東京都八王子市生まれ。神奈川県川崎市立公立小学校教諭。東京書籍小学校国語科教科書編集委員。全国大学国語教育学会会員。国語科学習デザイン学会会員。 2018年「読売教育賞」、2023年「博報賞(奨励賞)」受賞。国語科を専門として、子どもたちの力を伸ばす指導法や理論の開発に取り組んでいる。 主な著書「イラストでよくわかる! 音読指導の新常識」(学陽書房)

1988年東京都八王子市生まれ。神奈川県川崎市立公立小学校教諭。東京書籍小学校国語科教科書編集委員。全国大学国語教育学会会員。国語科学習デザイン学会会員。 2018年「読売教育賞」、2023年「博報賞(奨励賞)」受賞。国語科を専門として、子どもたちの力を伸ばす指導法や理論の開発に取り組んでいる。 主な著書「イラストでよくわかる! 音読指導の新常識」(学陽書房)

なかい ようこ

中井 ようこ

Nakai Yoko
公認心理師

小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。

小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。

めでぃぺん

メディペン

medipen
医療ライターズ事務所

医療ライターズ事務所。 看護師、管理栄養士、薬剤師など、有医資格者のライターが在籍。 エビデンスに基づいた医療記事を得意とするほか、医療×他業種の記事を手掛ける。 産婦人科関連、小児科、皮膚科、医療系セミナーレポートや看護師専門サイトの記事の実績多数。 medipen

医療ライターズ事務所。 看護師、管理栄養士、薬剤師など、有医資格者のライターが在籍。 エビデンスに基づいた医療記事を得意とするほか、医療×他業種の記事を手掛ける。 産婦人科関連、小児科、皮膚科、医療系セミナーレポートや看護師専門サイトの記事の実績多数。 medipen