親も子どもも「音読」飽きちゃった! 楽しく続ける「コツ」を国語専門現役小学校教諭が伝授
現役小学校教諭・土居正博先生に聞く「音読」を楽しく取り組む方法 #3 音読学習のモチベーションの上げ方
2024.04.10
小学校教諭:土居 正博
小学生の国語教育を専門とする現役小学校教諭・土居正博先生に聞く「音読」を親子で楽しく取り組む方法について。
前回では、音読の情緒面への効果や学力・生活面への影響についてお話しいただきました。しかし、音読が学力に関係するのは理解できても、毎日となると音読の宿題を面倒に感じる親子も少なくないでしょう。
そこで最終回となる3回目では、土居先生に音読学習を楽しく続ける方法を教えてもらいました。
土居 正博(どい・まさひろ)
1988年東京都八王子市生まれ。神奈川県川崎市立公立小学校教諭。東京書籍小学校国語科教科書編集委員。全国大学国語教育学会会員。国語科学習デザイン学会会員。
2018年「読売教育賞」、2023年「博報賞(奨励賞)」受賞。国語科を専門として、子どもたちの力を伸ばす指導法や理論の開発に取り組んでいる。
「ながら聞き」の後はフィードバックを
──子どもの音読の宿題ですが、毎日だと、日によっては音読を聞く時間が取りにくい場合が出てきます。なにかをしながらの「ながら聞き」になってしまう場合でも、音読を聞く効果はあるのでしょうか。
土居正博先生(以下、土居先生):どの家庭も本当にお忙しいと思うので、家事の合間の「ながら聞き」で問題ありません。
ただ、一言でよいので、「上手だったね」と声をかけたり、コメントを書いてあげたりと、フィードバックすることは必要だと思います。
──ほんの少しの関わりでも良いのですね。
土居先生:そうですね。あまり難しいテクニックと考えずに、聞いてあげるだけでも子どもは喜びますよ。
その上で、音読の目的や大切さを保護者の方が理解すれば、大切なポイントにそって褒めてあげることができます。例えば、「句読点で上手に息継ぎができたね」「漢字を間違えずに読めたね」など。
毎日のことですから「聞くのがつらい」と思うのは当然です。前回の音読の知識をほんの少し上積みするだけでも、毎日の宿題が価値あるものに変わると思います。
音読が苦手な子は原因を探ってあげて
──音読が苦手でやる気が出ない子には、どのようにかかわれば良いでしょうか。
土居先生:まずは、苦手になっている原因を探してあげてください。
よく見かけるのが、音読が苦手だと読むのに時間がかかってしまい、嫌になって投げ出してしまう子です。そうなる前に、子どもの障壁となっている原因を見つけてあげたいですね。
例えば、漢字が読みづらい子には、振り仮名を振ってあげる、句読点で区切るのが苦手な場合だったら、文に線を引いてわかりやすくする、などの方法があります。
──上手に読めなくて嫌になってしまう子もいますよね。
土居先生:スラスラ読めなくて嫌になってしまう子に対しては、まず親が文章を読み、子どもが後から追いかける方法を試してみてください。
文字を読むのが苦手な子どもでも、耳から聞いた音をアウトプットすることはできます。
注意したいのは、親の顔を見ながら読ませるのではなく、文字を目で追わせること。文章をしっかりと追いながら読むことで、声と文字が結びついていきます。
どこを読んでいるのかわからなくなっているようなら、いっしょに指でなぞってあげるのも良いでしょう。
──もし、子どもが音読の宿題を途中で投げ出してしまった場合は無理強いしない方が良いでしょうか。
土居先生:何においても無理強いは良くありません。しかし、途中でやめてしまうことを放置しても成長にはつながらないでしょう。
音読を途中でやめると、毎日読んでいる部分と読んでいないところの「ムラ」ができてしまいます。なるべく最後まで読んで、文章の「一つのまとまり」を耳で聞き理解することが大切です。
すると、「文章のはじめ」「展開」「終わり」などの文章の構造が、リズムのように自然と体に刻み込まれていきます。
──音読が苦手な子の家庭では「音読しなさい」「やりたくない!」のやりとりが発生することも多いと思います。途中まででも読めたら褒めることは必要でしょうか。
土居先生:音読の重要性や意義を伝えるとともに、途中まで読んだ部分で良いところを褒めてあげてください。
その上で、「途中でやめてしまうと、お話のはじめの部分ばかり練習することになる。最後の文章がいつまでたっても上手にならないよ」など、ムラができないようにまんべんなく読む大切さを伝えましょう。
もし、子どもにとって文章が長すぎる場合は、「今日は〇ページまで、明日はその続きから」などと区切って読ませるのも良いと思います。