「頭がいいから中学受験する」はもう古い! 「勉強が苦手な子」こそ輝く場所がある“新しい中受”とは

『中受 12歳の交差点』工藤純子×國學院大學久我山中学高等学校副校長 スペシャル対談 後編

ライター:山口 真央

『中受 12歳の交差点』は親子で読むべき物語

児童作家の工藤純子さん(左)と、國學院大學久我山中学高等学校の副校長、髙橋秀明先生(右)。
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髙橋『中受 12歳の交差点』は、的確に小学6年生の気持ちを代弁している物語です。

子どもたちって、頭のなかでたくさん考えていますが、うまく言語化できないこともある。そのせいで気持ちの行き違いが起きて、親子関係が悪くなってしまうケースも多いです。

大人は、子どもの考えていることを上手に汲んであげることが重要だと、この本を読んで改めて感じました。

工藤:私自身、子どものころに言語化できなくて悔しい思いをしてきたことが、児童書を書くモチベーションにつながっています。

髙橋:都立の難関校を受ける新さん、自分に合った私立中学を受ける広翔さん、バレーボールの特技を活かしたAO入試をするつむぎさん

どの主人公にも、中学受験の大変さだけでなく、たくさんの希望が描かれているから、中学受験にネガティブなイメージを持っている親御さんにもおすすめしたいと思いました。

工藤中学受験を経験する子どもは、いろいろなドラマを体験します。

それは家族とだけでなく、学校や塾にいる友達や先生との人間関係でも同じで、さまざまな感情が生まれているんです。

髙橋子どもにとっては、そのすべてが、成長につながりますよね。『中受 12歳の交差点』の最後でも、成長した子どもたちの姿を見ることができて、嬉しかったです。

最後に、工藤さんがこだわった言葉を教えていただけますか。

工藤:進路に迷う新に向かって、担任の南野先生が「どんなことでもいいんだよ。新さんにしか見つけられないものが、きっとあるから」という言葉をかけました。

この言葉をきっかけに、中学受験に前向きになれなかった新は、やっと「おれ自身で選びたい」と思えるようになります。

これは、子どもたちみんなに伝えたい言葉です。自分にしか見つけられない、自分自身の道が、きっとあります。

髙橋:力強いメッセージですね。学校は、生徒と先生が喜怒哀楽を共有できる大事な場所です。

子どもたちは自分の感じたことを大切に、親はお子さんの言語化できない思いを汲みながら、それぞれに合った進学ができることを願っています。本日はありがとうございました。

工藤:こちらこそ、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!

髙橋秀明
國學院大學久我山中学高等学校副校長。昭和60年、地歴公民科教諭として母校に奉職。学科主任他、特別講座推進センター主任、学年主任、入試対策部長、女子部長、教頭を歴任。平成31年より副校長。

工藤純子
児童文学作家。東京都生まれ。2017年、『セカイの空がみえるまち』(講談社)で第3回児童ペン賞少年小説賞を受賞。おもな作品に、『となりの火星人』『あした、また学校で』『サイコーの通知表』『だれもみえない教室で』『ルール!』(ともに講談社)、『てのひらに未来』『はじめましてのダンネバード』(ともにくもん出版)、『ひみつのとっくん』『しんぱいなことがありすぎます!』(ともに金の星社)、「恋する和パティシエール」「プティ・パティシエール」シリーズ(ともにポプラ社)、「リトル☆バレリーナ」シリーズ(Gakken)などがある。日本児童文学者協会会員。全国児童文学同人誌連絡会「季節風」同人。

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やまぐち まお

山口 真央

編集者・ライター

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。