2025年中学入試 「国語物語文」の3大特徴と出題予想ランキング10〔中学受験の専門家が解説〕
冬休みに読んで差をつけろ! おさえておくべき本を首都圏中学受験塾・教室長が回答
2024.12.16
【出題予想ランキング6位】『リカバリー・カバヒコ』
学校の先生の中でファンが多いと感じるのが青山美智子さんです。
2024年出題だと『月の立つ林で』は洗足学園中、明治大学付属八王子中、江戸川学園取手中で出題されました。主人公は大人で仕事や家族関係に悩みながら成長していく物語なので難易度は高くなります。
青山さんの作品で2025年入試に出題されそうなのが『リカバリー・カバヒコ』です。じつはすでに2024年の芝中の2回目で出題済みです。そのため少しランキングを下げています。短編集というのも出題されやすい要素です。
本屋大賞7位ということで多くの書店でもキャンペーンされていたので先生方の目についた可能性は高いです。
“ちょっと違うかな。人間の体はね、回復したあと、前とまったく同じ状態に戻るというわけじゃないんだ。”(『リカバリー・カバヒコ』より)
【出題予想ランキング7位】『成瀬は信じた道をいく』
本屋大賞つながりで、今年の1位、宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』の続編『成瀬は信じた道をいく』も必ず目を通しておきたいです。
今年『成瀬は天下を取りにいく』は栄東中と豊島岡女子学園中でも出題されました。私もすっかりファンになってしまい、成瀬のクリアファイルを愛用しています。受験生には元気がもらえる一冊です(成瀬も受験生です)。まだ読んだことがない方は損しています。中学校の先生もファンが必ずいるはずです。紅白歌合戦のけん玉のシーンが見せ場です。私も成瀬の影響でけん玉を練習しています。
“成瀬は大きなことを百個言って一個でも叶えたらいいと主張してきたが、一個だけじゃなくそこそこ叶えている。途中で投げ出してイラっとさせられることも多いけれど、成瀬なりに咲く花と咲かない花を見極めているのかもしれない。紅白歌合戦に出たいと思ってまいた種は、今夜咲こうとしている。”(『成瀬は信じた道をいく』より)
【出題予想ランキング8位】『ブルーラインから、はるか』
本屋大賞のノミネートの発表は2025年2月3日です。残念ながらノミネートを見てからの出題予想ができません。
しかし本屋大賞以外にも中学受験で狙われる文学賞があります。毎年鉄板で出題されているのがちゅうでん児童文学賞です。『みつきの雪』、『ベランダに手をふって』、『シャンシャン、夏だより』、『雪の日にライオンを見に行く』と連続で入試問題に採用されています。今年も注目したい作品です。
主人公が男の子なのでぜひ女子に読んでもらいたいです。国語では他者理解がとても大切です。自分と違う性別の子どもが主人公の本を読むことで他者理解が進みます。
“風馬の背中で、おれの心臓の音が跳ねかえる。バクバクがズキズキに変わるくらい、はげしく打つ。たのむよ、なんとかなってくれ。”(『ブルーラインから、はるか』より)
【出題予想ランキング9位】『王様のキャリー』
もう一つ、受賞作品を紹介します。こちらは講談社児童文学新人賞受賞作です。昨年話題になった『給食アンサンブル』の如月かずささんも選考委員をされています。子どもたちに紹介したところかなり評判がよかったです。
入試問題は夏休みに作られるので、8月20日という刊行日がすこし気がかりではありますが、入試に出る、出ないはおいて読んでおきたい一冊です。挿絵もあって読みやすいです。eスポーツを題材にした今どきの作品です。おすすめは理王の家でカレーライスを食べるシーンです。『王様のキャリー』のタイトルの意味は最後の最後でわかります。
“「勝生くんって、理王の脚のこと、なにか聞いた?」「え。いや、なにもです」「あの……僕、リオのファンだったから。聞きたいこといっぱいあって、部屋でもずっとゲームの話をしてたんです」”(『王様のキャリー』より)
【出題予想ランキング10位】『ルール!』
工藤純子さんの『ルール!』です。こちらは校則がテーマの小説です。発売日が2023年の10月ということで少しランキングを下げています。
“「スマホ、いりませんから」あたしはそれだけ言うと、くるりと背中を向けて職員室を出た。”
(『ルール!』より)
私学ではもともと校則がそれほど多くはないので私の感覚ではこの物語はずいぶん校則が厳しいなと感じました。文芸部や生徒会が協力するシーンは感動的でよかったです。スマホ使用や頭髪の校則など、学生なら一度は不満に思ったことがある、身近な、感情移入しやすいテーマです。
冬休み・ラストスパートで心がけたいこと
冬休みなどに息抜きで3冊程度なら読めそうです。ぜひ皆さんも合格した先輩たちに続きましょう。
そのためには自分の意志で本を選んで行動することが大切です。人に言われたからやるのでは効果は半減します。自分の意志で決めるのです。そうすると不思議と運を引き寄せることができます。
この中から気に入った本をお守りとして受験会場に持っていってください。そして朝、お気に入りの一冊に目を通して活字に触れておきましょう。入試がその日の最初の活字にならないようにするためでもあります。またお気に入りの一冊といっしょであればきっと心強いはずです。
わずかかもしれませんがこの記事で志望校合格を応援できれば幸いです。
akira
学生時代から塾講師として中学受験指導に携わり、大学卒業後は塾業界に就職。2023年、関東圏にある現在の教室に室長として就任。保護者や生徒に対するきめ細かいコミュニケーションを重視した教室運営を行うことにより、御三家をはじめ、早稲田、渋谷幕張の合格者数は高い進学実績がある。SNSでも独自の学習指導法を公開している。保護者はもちろん、塾関係者からもそのノウハウに注目が集まっている。 X(旧Twitter):@AArukikata
学生時代から塾講師として中学受験指導に携わり、大学卒業後は塾業界に就職。2023年、関東圏にある現在の教室に室長として就任。保護者や生徒に対するきめ細かいコミュニケーションを重視した教室運営を行うことにより、御三家をはじめ、早稲田、渋谷幕張の合格者数は高い進学実績がある。SNSでも独自の学習指導法を公開している。保護者はもちろん、塾関係者からもそのノウハウに注目が集まっている。 X(旧Twitter):@AArukikata