【息子がいじめの加害者に】親子で助けを求めたスクールカウンセラーとは
スクールカウンセリングって必要? 親としていじめどうする?#2
2023.12.05
我が子が起こした「いじめ問題」。
親として、加害者となった息子のタケと向き合い、被害者の家族への謝罪と対応の事実をありのままに描いた漫画家・大原由軌子さん。
第1回では、いじめ問題が起きてから息子タケにどのように事実確認を行ったのか、話を聞き出すうえで心がけた点を教えてもらいました。
第2回は、いじめ問題を解決するために「スクールカウンセリングを受けたこと」について紹介していきます。加害者であるにもかかわらず、なぜスクールカウンセリングを受けたのかに迫ります(全3回の2回目、#1を読む)。
◆大原 由軌子(おおはら ゆきこ)
漫画家・イラストレーター。長崎県佐世保市出身。2005年にパニック障害+神経症を持つ夫との生活を描いた『大原さんちのダンナさん』でデビュー。夫や2人の息子たちのことをエッセイ漫画で執筆。
すっかり尻込みになっていく息子
Sくんへのいじめ問題で悩む大原さん(いじめのエピソードは#1へ)。学校側からは、「息子タケは精神に問題があるのではないか」と問いかけられ、大原さんもすっかり気落ちしてしまいました。
実際は、Sくんをいじめたのはタケだけでなくほかにもクラスの男の子たちが数人いましたが、なぜかタケひとりがおとがめを受けることになっていたそうです。
Sくんの母親からは「Sくんとタケが接触しないでほしい」という要望があり、タケはできる限り子ども同士のかかわりを避けて接点を持たないようにしていました。
学校から帰宅後、親子で公園に行きキャッチボールをする際も、Sくんが友だちと遊んでいる様子を見つけると尻込みしてしまいました。
確かに、いじめ問題を起こした事実は間違っていない、謝るのは大原家と思いつつも、少々Sくんの母親からは厳しさを感じていた大原さん。
一方、タケに友だちがいなくなったかというとそうではなく、周りの友だちは「遊ぼう」と訪ねてきてくれました。気の合う子と元気に走り回る姿を見ると、子どもたちはそれぞれに思いがあると大原さんは感じました。
「子どもたちはだれが一番仲良しということはなく、そのときのタイミングで自分が『遊びたい』と思う子の元へ行き、遊んでくれているのだと思いました。いじめ問題を起こしたからといって、タケの周りから友だちが去っていくことはありませんでした」(大原さん)
そんなホッとするエピソードも束の間、ある日タケは学校の朝会で「この学校でいじめがありました」と全校生徒の前でいわれてしまいます。
これがきっかけで、弟のレイは「お前の兄ちゃんがいじめたんだろ?」と同級生から指摘され、担任ではない先生から、納得がいかないかたちで体罰を受けるといった理不尽なことも起こりました。いじめ問題とは直接関わりのないはずの弟までもが精神的に追い詰められ、兄弟で学校に通いにくい事態となったのです。
逆境に立たされる中、大原家の唯一の希望となったのは、親子で受けた「スクールカウンセリング」でした。
ママ友に相談しなかった理由
スクールカウンセリングとは、学校においてさまざまな問題に直面する児童・生徒に対して、「心理に詳しいスクールカウンセラーが第三者の立場となり、解決のための助言や指導を行うもの」です。
当時はいじめの加害者がカウンセリングを受けることは珍しく、周囲は驚いていたと大原さんはいいます。
「日本では被害者側だけがカウンセリングを受けるイメージが強いのですが、海外では加害者側にこそ必要だと考えられているそうです。まったくそのとおりだと思い、加害者としてカウンセリングを受けることにしました。
また、加害者側が絶対にやってはいけないと考えたのがママ友に相談することでした。
子ども同士の関係性を知っている仲なので、安易に話すことで他の生徒を巻き込んでしまう可能性があると思い、やりとりはしませんでした。
ママ友と話すと、名前や顔を知っているだけにどうしても複雑な感情が入ってしまうので、自分の逃げ場を作らないようにするためにも、大原家のことをまったく知らない、損得勘定のない専門家に話を聞いてもらうことにしたんです」(大原さん)
大原さんはカウンセラーから、いじめ問題解決のために必要なことをすべて教えてもらったといいます。
Sくんの家族に納得がいくまで謝罪することや、どこまで自分たちが対応するのか、逆にしてはいけないことなど、解決までの道のりを示してもらえたことで、やるべきことが明確になりました。