【息子がいじめの加害者に】親子で助けを求めたスクールカウンセラーとは

スクールカウンセリングって必要? 親としていじめどうする?#2

信頼できる大人は親以外でもいい

息子タケにとっては、人生初のカウンセリング。漫画の中でも初めは複雑な表情をしていたタケが、家族や学校以外の大人にいじめの経緯と気持ちを話します。

大原さんはカウンセリングを受けた大きな理由を、次のように語ります。

「以前、精神科医に『いじめをする子は何か問題を抱えていることが多い』と聞いたことがありまして……。今、息子がいじめをするほど心に何かを抱えているのなら、解決するべきだと思ったんです。

いじめ事件は、大人が主導するかたちで解決という体裁を整えたとしても、加害者側がきちんと理解し反省ができなければ、さらにこの先、大きな問題や事件を起こしてしまう可能性があります。

根本的な解決をしなければ、タケの未来が不安でした。当時は本当にカウンセリングを受けて良かったと思いました」(大原さん)

タケのカウンセリングは終了時間を30分もオーバーするほど行われましたが、それほどカウンセラーを信頼して話しました。相談室から出てきたタケの表情は、スッキリしていたと大原さんは当時を思い返します。

提供:大原由軌子

また、カウンセラーからは「タケ君は自分でやったことは理解しているし、いじめたことを反省しています。彼は正常な発達をしています」とお墨付きをもらい、相談を受けたあとは、今までどおり学校に登校し、一度も不登校などにはなりませんでした。

「当時、タケは信頼できる大人に相談する大切さを子どもながらに学んでいました。困ったときは助けを求めていいのだと気が付けたことは大事だったと思います。

息子の人生にとってカウンセリングの先生は大切な出会いでした」(大原さん)

ただ、カウンセリングも相性があります。なかには担当する臨床心理士と話が進まずに終わる子もいます。お子さんの様子を見て、相談で思ったような進展がない場合は一度のカウンセリングで諦めず、地域の保健センターなどの専門機関を通じてほかの先生に頼ってもいいでしょう。

どんなことがあっても許されない、いじめ。ただ、一方的に加害者を責めることだけが解決につながるわけではありません。

大原さんの息子であるタケにとって、第三者の専門家に複雑な胸の内を話し、意見をもらうことは、自分自身のいじめ問題解決に最も必要な選択だったといえます。

またタケではなく、大原さん自身も息子が自分の口で正直な気持ちを話せたことに安堵しました。「精神に問題はない」という太鼓判を押され、解決に向けて次の一歩を踏み出す勇気に変わっていきました。


最終回は、タケはSくんとのいじめ問題をどう解決させたのか、漫画発売後の炎上に対してそれでも大原さんが伝えたかったことは何かを聞いていきます。

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大原 由軌子(おおはら ゆきこ)
1970年生まれ。長崎県佐世保市出身。短大卒業後、グラフィックデザイナーとして14年間、都内に勤務。2006年、パニック障害+神経症持ちの夫との日々を描いた『大原さんちのダンナさん このごろ少し神経症』(小社刊)でデビュー。著書に『息子がいじめの加害者に? 大原さんちの大ピンチ』のほかに、『お父さんは神経症』『京都ゲイタン物語』(小社刊)、『大原さんちの2才児をあまくみてました』(主婦の友社)、『大原さんちの食う・寝る・ココロ』(集英社)2023年9月新刊『大原さんちの不登校』(文藝春秋)などがある。2012年より「まぐまぐ!」からメールマガジン『大原さんちの九州ダイナミック』を週刊で配信中。2013年からはテレビ長崎の情報番組『ヨジマル!』に火曜日コメンテーターとして出演。また、大原さんちのホームページ「大原さんちの九州自由道(フリーウェイ)」もスタートした。


取材・文/飯塚まりな

漫画家・大原 由軌子さんの「いじめをしていた息子『あんなに仲良くしてたのに』親としていじめどうする?」掲載は全3回。
1回目を読む。
3回目を読む。
※公開日までリンク無効

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