思春期に悩む子どもへ贈る本「名前をつけられない関係性」を描いた3選

出版ジャーナリスト・飯田一史のこの本おススメ! 第7回 「名前をつけられない関係性の物語」 (2/3) 1ページ目に戻る

出版ジャーナリスト:飯田 一史

1.ルドルフとイッパイアッテナ

『ルドルフとイッパイアッテナ』
著:斉藤洋、イラスト:杉浦範茂(講談社)
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劇場アニメ化もされた『ルドルフとイッパイアッテナ』は、岐阜で飼われていた黒猫ルドルフが、魚屋から逃げようとした拍子に長距離トラックに乗ってしまい、大都会・東京に運ばれてしまうことから始まります。

知らない土地で途方にくれるルドルフは、現地のボス猫と出会います。彼の「おれの名前は、いっぱいあってな」という言葉をきっかけに、ルドルフは「イッパイアッテナ」という名で呼ぶようになります。

イッパイアッテナは町の人たちからトラ、ボス、デカ、ドロと別々の名前で呼ばれています。若いうちは、親といっしょにいるときの自分、学校にいるときの自分、ひとりでいるときの自分の違いに悩んだりもします。

イッパイアッテナもおそらく、それぞれの人たちに会うときには多少なりとも違う顔、違う態度を見せている、あるいは違った捉え方をされていて、それが名前の違いにも反映されているのではないでしょうか。

ルドルフとイッパイアッテナの関係もひとことで「友だち」とか「上下関係」とは言い切れないものです。

それから、人と人との関係性が大きく変わってしまう機会に、物理的な離別があります。進学を機に友だちと別々の学校に通う、先輩が卒業してしまって急に会う頻度が減る。それが迫っているという意識だけで、切なくなることもある。

『ルドルフとイッパイアッテナ』では、そういう2匹の関係と心情が描かれていて、「もし離れてしまうとしたら」「今、相手に対して何をしてあげられるのか」「どんな気持ちで別れにそなえておけばいいのか」「離れてしまったあとは?」など、そんなことを見つめさせてくれる物語です。

次は2組の家族の共同生活の物語『みかんファミリー』
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