大ヒット絵本が受賞してきた絵本賞に「たべもの絵本」が続々! 今の子どもたちに“擬人化たべもの”が大ウケしているワケ
第8回「未来屋えほん大賞」で『ぎょうざが いなくなり さがしています』が大賞受賞
2024.09.05
全国展開している「未来屋書店」が毎年開催している「未来屋えほん大賞」の受賞結果が9月1日に発表になりました。大賞に選ばれたのは、『ぎょうざが いなくなり さがしています』(作:玉田美和子)です!
「未来まで読み継がれるベストセラー絵本を育てる。」というコンセプトで行われているこの賞は、今年で第8回となります。
過去の受賞作をみますと、100万部突破の大ベストセラー『大ピンチずかん』(作:鈴木のりたけ/小学館)や、大人気シリーズとなった「パンどろぼう」シリーズ(作:柴田ケイコ/KADOKAWA)の一作、『パンどろぼう vs にせパンどろぼう』があったりします。
つまり、これがきっかけで広く注目を集めるきっかけになったり、すでにブレイクしつつある絵本のさらなる飛躍に貢献したりする賞だと言えます。
今年の受賞作のうち上位10作をみますと、ある傾向に気がつきます。
お気づきでしょうか?
そうです、たべものの絵本が10位以内に、じつに4作品もランクインしているのです。
しかも、どれもこれも、ただ単に「おいしそうなたべものが登場する絵本」というわけではなさそうです。
絵本のなかで自由に動き回るたべものたち
幼いころ、大人たちから読み聞かせられた絵本、きっと人それぞれあろうかと思います。
子どもによって、大好きなページ、何度も何度も「もっかい読んで」とせがむページがちがう点も絵本の味わいのひとつですが、多くの人にとり、大人になった後までも鮮烈な印象として残っているのが、「たべもの」が登場するシーンではないでしょうか。
『ぐりとぐら』(作 : なかがわりえこ 絵 : おおむらゆりこ/福音館書店)に出てくる、野ねずみのぐりとぐらが森で見つけた大きなタマゴからつくった、ふんわりとしたカステラの絵──。その焼け具合や、まるで本当に嗅いだかのような甘い香りまで脳裏に焼き付いている方は多いことでしょう。
作中に「たべもの」が登場する絵本は無数にあります。
しかし、今回の未来屋えほん大賞の上位作品をみますと、「たべもの」はおいしく食べられるだけの存在ではなく、たべものそのものが自由に動き回るという作品が目立っているのです。
大賞にかがやいた『ぎょうざが いなくなり さがしています』は、主人公・としおくんが、「ぎょうざが いなくなり さがしています。とくちょうは ひだが5つある ひとくちサイズの やきぎょうざです……」との町内放送を耳にしたのをきっかけに、「すいぎょうざと けんかして……なきながら おみせを とびだしたかな。」とか、「5つの ひだが いやに なっちゃって、はるまきに なる たびに でたのかもよ。」とか、ぎょうざがいなくなった理由について、さまざまな妄想を爆発させるというおはなしです。
としおくんの妄想のとおりに、目、口のついたかわいいぎょうざさんが、画面狭しとばかり絵本の中を動き回ります。
いろんなおにぎりにゆたかな表情が!
2位の『まほうのわくわくおにぎり』は、まほうのおにぎりやさんの冷蔵庫のなかで擬人化された食材たちが、おいしいおにぎりになりたくてウズウズしているところから、おはなしが始まります。
できあがったおにぎりさんには顔がついていて、とにかくかわいい!
そして、「桜えびとしらすのざくざくおにぎり」など、リアルにつくって食べたら、ぜったい美味しいやつ! と伝わってくる創作おにぎりがズラリ。
それもそのはず、作者のまいのおやつさんは、ご自身でつくった料理レシピを写真やイラストで公開し、SNSの総フォロワー数が100万人を超えるというキャリアの持ち主です。