
成長のお守りにしてほしいメッセージ絵本
最後にご紹介するのは、『あなたがおとなになったとき』(講談社)。先にご紹介した2冊は、小さなお子さんにも伝わりやすい絵本でしたが、こちらはもう少し年齢が上、小学生から高校生ぐらいまでのお子さんにおすすめしたいと思います。
私は初めて読んだときに思わず涙してしまったほど、力強いメッセージが込められた素晴らしい絵本です。

新しい年が明けたとき、進級や進学をしたとき、そして、誕生日を迎えてひとつ年を重ねたとき。子どもの成長の節目のたびに私たち大人が祈るのは、その子の幸福ですよね。
成長するにつれて、思春期の心の問題など、たくさんの困難に直面するわけですが、「何があっても前を向いて生きてほしい」と心から願うものです。
「あなたがおとなになったとき」というフレーズが繰り返されるこの作品には、子どもが大人になったときの世界を思う、親から子どもへのメッセージが切々と綴られています。
大人になったとき、もうそばにいてあげられないかもしれない。世界は、今のような姿と少し違っているかもしれない。私たち大人は予想もしなかった災害や戦争、紛争が起こることを知っているからこそ、未来を心配するもの。それでも親には、子どもに伝えたいことがあるのだと、絵本は教えてくれます。
例えば、「ただいちどだけの きょうがはじまる」という一文。何があっても、どんなにつらいときでも、朝が来れば、ただ一度だけの今日が待っている。そして、人生には思いがけない喜びがある。だから、生きてほしいと語りかけるわけです。
印象的なのが、湯本香樹実さんの美しい文章とまるで二重奏のように、別の旋律を奏でているはたこうしろうさんの絵。文章にはありませんが、いつもそばに青い鳥が寄り添っていること、そして、どんなに高い壁だって、助けてくれる誰かがいればきっと乗り越えられることを、絵が語りかけているのです。
親はもちろん、子どもの幸せを願うすべての大人の想いを体現した1冊ではないでしょうか。贈る人の分身のように寄り添ってくれる、成長のお守りの絵本としてぜひ贈っていただきたいです。
取材・文/星野早百合
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星野 早百合
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。
東條 知美
1973年、新潟県上越市生まれ。白百合女子大学児童文化学科卒業。メディアファクトリー(現KADOKAWA)、国立国会図書館、幼児教育専門学校、小・中学校図書館などでの勤務を経て、「絵本コーディネーター」の肩書で活動中。 子育てや教育、ジェンダーなどのテーマの下、絵本の可能性と魅力を幅広い世代に伝えながら、全国自治体で課題解決へのヒントを探る講演を行う。各種メディアのほか、バラエティ番組や情報番組にも出演。バンタンデザイン研究所では、絵本作家コースの講師を務める。 公式サイト https://www.tojotomomi.com/ ブログ「僕らの絵本」 https://ameblo.jp/bokurano-ehon/entrylist.html
1973年、新潟県上越市生まれ。白百合女子大学児童文化学科卒業。メディアファクトリー(現KADOKAWA)、国立国会図書館、幼児教育専門学校、小・中学校図書館などでの勤務を経て、「絵本コーディネーター」の肩書で活動中。 子育てや教育、ジェンダーなどのテーマの下、絵本の可能性と魅力を幅広い世代に伝えながら、全国自治体で課題解決へのヒントを探る講演を行う。各種メディアのほか、バラエティ番組や情報番組にも出演。バンタンデザイン研究所では、絵本作家コースの講師を務める。 公式サイト https://www.tojotomomi.com/ ブログ「僕らの絵本」 https://ameblo.jp/bokurano-ehon/entrylist.html