4歳の女の子が嬉し泣き! ぬいぐるみ専門病院の驚きのサービスとは

杜の都なつみクリニック院長・箱崎なつみ先生インタビュー 第2回

編集者・ライター:山口 真央

お子さんがもし、お気に入りのぬいぐるみを、間違って傷つけてしまったら──? 親御さんは悲しむお子さんをなぐさめることしかできず、途方にくれるのではないでしょうか。

「ぬいぐるみ専門病院® 杜の都ぬいぐるみクリニック」では、ボロボロになったぬいぐるみも、まるで新品のようになおしてくれる診療所です。ぬいぐるみを「修理」ではなく「治療」と考えるこのクリニックには、毎年1000体を超えるぬいぐるみが入院しています。

クリニックには、お客様の気持ちを第一に考えた独自のサービスがあるのだとか。どのようなサービスがあるのか、またぬいぐるみ治療のやりがいについて、院長の箱崎なつみ先生にお話を伺いました。

杜の都なつみクリニックに入院中のぬいぐるみたち。

1万5000体の治療から生まれた「オリジナル」サービス

──「杜の都なつみクリニック」で独自に取り組んでいるサービスを教えてください。

技術面以外で、お客様の気持ちを考えたサービスとして「こころハート」があります。中綿の入れ替えをする際、もともと入っていた中綿をハートのガーゼに包み、お体のなかにしまいます。

クリニックの開業時からあるサービスですが、自然と思いつきました。中綿って、ぬいぐるみの「本体」なんです。お客様の愛着がある中綿を少しでも残してあげることで、その子らしさが残ると私は考えています。

ピンク色のガーゼに、古い中綿を包んだ「こころハート」のサービス。

あとは「付き添い」のサービスもあります。入院するときに、ぬいぐるみが一人で寂しくないよう、一緒に暮らしているぬいぐるみを付き添いとしてあずけることができます。

私は今まで、1万5000体体以上のぬいぐるみをあつかってきました。長年、治療していくうちに、自然と「こういうメニューがあったらいい」と思いつき、今の治療スタイルを築いてきました。

開業して8年になりますが、小さなお子様からお年を召した方まで、幅広い年齢の方がお越しいただいています。国内外のメディアにも取り上げていただいて、海外からエアメールで入院する子も増えてきています。

それぞれの事情で病院にやってきたぬいぐるみたち。入院中の様子は、杜の都なつみクリニックのホームページで確認できる。

4歳の女の子からあずかった「くまちゃん」の治療

──やりがいを感じた瞬間を教えてください。

4歳ぐらいの女の子とお母様が、くまのぬいぐるみを持ってきていただいたことがありました。

相談内容は、生地がはげてしまったぬいぐるみを、別の修理屋さんに持っていったところ、まったく違うぬいぐるみになってしまったとのこと。もともとのお写真と見比べると、たしかに別の子になっているという印象でした。

来店されたとき、その女の子は元気いっぱいだったのですが、お母様が「家を出るまでは、くまちゃんと離れるのが寂しくて泣いていたんですよ」と教えていただいて。この子のために、頑張らなくちゃと思いました。

女の子が持ってきたくまのぬいぐるみは、もともとの生地とは違うものがつかわれていたそう。「たくさんのサンプルのなかから、その子にぴったりの生地を選ぶ必要があります」と話す箱崎さん。

無事に治療を終え、仕上がったぬいぐるみのお写真を、女の子とお母様にメールでお送りさせていただきました。あとでお母様からお聞きしたのですが、その写真を見たとき、女の子は嬉し泣きをしたそうです。

離れたぬいぐるみを心配する気持ちと、もとの姿に戻ってほしいと祈る気持ちと、4歳ながらに複雑な気持ちを抱えていたと思います。お母様も、娘さんの成長を感じて感動したとおっしゃってくださいました。

ぬいぐるみ治療の仕事では、こんな感動的な出来事が毎日のように起こります。私たちもお客様と一緒に、うれしい気持ちを分かち合えるのが、何よりの幸せです。

「ぬいぐるみ診療所」のリアルが描かれた童話が人気! はやくも3冊目が刊行

作/かんのゆうこ 絵/北見葉胡 定価/1320円(税込み)

杜の都なつみクリニックの箱崎なつみ先生のインタビュー、素敵でしたね! 実は児童文学の世界にも、ぬいぐるみや診療所を舞台に描いた物語あります。

大人気「はりねずみのルーチカ」シリーズのかんのゆうこ&北見葉胡コンビが、ぬいぐるみ診療所を舞台に描く心のいたみをいやす物語。大変評判で、待望の3冊目が発売しました!

りりかさんは、ぬいぐるみのおいしゃさん。ぬいぐるみだけでなく、ぬいぐるみの持ちぬしの心までいやします。今日は、大事にしていたペガサスのつばさを切ってしまった少年がお母さんと診療室にやってきました。少年が心に隠していた秘密をお母さんが知ることで、本当の願いを思い出すことになるのです──。

箱崎なつみ先生もこの童話を読んでくださり、感想を聞かせてくださいました。

「まず描写のリアルさに驚きました。ぬいぐるみを修理ではなく、治療と考えているりりかさんは、とても私自身に似ていると感じました。

ぬいぐるみを治療するには、やさしさが大切だと思います。りりかさんの「依頼者のためになりたい」と願う気持ちには、とても感情移入することができました。

りりかさんだけでなく、診療所にやってくる依頼者も素敵な人たちばかり。ぬいぐるみを大切にする人々のお話は、忘れかけていた温もりを思い出させてくれました。」

ぬいぐるみが好きな人、ぬいぐるみの気持ちを知りたい人、自分の本当の気持ちを知りたい人、大切な人に気持ちを届けたい人にぜひ読んでもらいたい、感動の「ぬいぐるみ童話」です。

「りりかさんのぬいぐるみ診療所」パネル展

『りりかさんのぬいぐるみ診療所 パンダのなみだ』発売を記念して、2023年2月22日~3月15日にて丸善丸の内本店で「りりかさんのぬいぐるみ診療所」パネル展が開催されました。店頭をかざったぬいぐるみたちをご覧ください。

やまぐち まお

山口 真央

編集者・ライター

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生ま...