じつは「天の川全体を見られる人は地球上にだれもいない」ってホント? 思わず秋の夜空を見上げる天の川のこと
今知るべき「宇宙という新教養」。宇宙を知るとちょっぴり人生観が変わる深い理由
2023.10.24
10月に入り、かっこうの天体観測シーズンがやってきました。
夏に旅行先で、びっくりするほどきれいな天の川銀河を見て、その迫力にびっくりした人も多いかもしれません。
空に帯のように輝く天の川銀河。「いつか全体を見てみたい」そんなふうに思った人には残念なおしらせです。
じつはこの地球上のどこに行っても、天の川銀河全体を一度に肉眼で見ることはできません。
世界ではじめてブラックホール撮影に成功したEHTプロジェクトの日本代表である本間希樹先生の『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑』から、天の川銀河の全体がなぜ見られないのか。「思わず人に言いたくなる宇宙ネタ」を紹介します。
『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑 宇宙のふしぎ、おもしろすぎて眠れない!』
著/本間希樹 イラスト/ボビコ 協力/東京大学CAST
知ってるつもりで知らないことだらけの宇宙のことがよくわかる!
ブラックホールの撮像に成功した本間希樹先生が、やさしくやわらかく教えてくれる宇宙の図鑑決定版!
「みなさんは天の川を見たことがありますか? 夏の夜、月のない夜に町明かりの少ない暗い場所で空を見上げると、夜空を横切るように流れる天の川の壮大な姿を目にすることができます。白い帯のように見え、ところどころ暗い場所があって幾筋にもわかれて見えるなど、天の川はまさに夜空を流れる川です。
このように美しい天の川ですが、その正体はじつは無数の恒星が集まった『銀河』です。銀河とは数百億から数千億ともいわれる無数の星からなる巨大な星の集団です。
そのような銀河の中で、私たちの太陽系があるのが天の川銀河です。
天の川銀河は平べったい円盤の形をしていて、太陽系はその中心からかなりはずれたところにあります。私たちは天の川の円盤の中にいるので、内側からしか銀河を見られません。そのため、天の川は帯状に見えるのです。
銀河は中心ほど星が多いので、天の川の中心方向が見える夏には天の川は明るくて見やすく、逆に天の川の外側の方向を見ている冬には天の川は暗くて見えにくくなります。
じつは、私たちが夜空を見上げたときに見える星々はほぼすべて天の川銀河の中の星です。
実際、肉眼で見える天の川の外の天体は、アンドロメダ大星雲や南半球の大小マゼラン雲など、天の川の近くにある数個の銀河のみです。
それ以外の恒星はすべて天の川の中の星々ですので、私たちの太陽の兄弟といってもよいでしょう。
みなさんが次に天の川を見上げる機会があったら、無数の星々からなる天の川銀河の壮大な姿をぜひ思い描いてみてください!」
空を見上げて美しく輝いているからこそ、天の川銀河は遠い天体のように感じていた人も多いかもしれません。
しかし、じつは私たちは天の川銀河の一員だったのです。
だれかと夜空を見上げたとき、夜空にまたたく星を見て、「あの星はほとんど全部天の川銀河の星なんだよ!」と言ってみたくなりませんか?
中にいるので全体像は眺められなくても、四季それぞれに天の川銀河仲間の星々を眺めることで、天の川全体を1年かけて楽しむことができます。
10月に入りましたが、夜の早い時間帯にはまだ夏の大三角を空高くで楽しめ、それを貫いて、天の川が秋の夜空を横断します。
夜空に輝く同じ銀河仲間の星を、ちょっとゆっくり眺めてみませんか?
参考図書
『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑 宇宙のふしぎ、おもしろすぎて眠れない!』
著/本間希樹 イラスト/ボビコ 協力/東京大学CAST
知ってるつもりで知らないことだらけの宇宙のことがよくわかる!
ブラックホールの撮像に成功した本間希樹先生が、やさしくやわらかく教えてくれる宇宙の図鑑決定版!
「人間は星のかけらからできている?」「宇宙の最初は目に見えないほど小さい点だった??」「宇宙にも天気予報がある?」「太陽の寿命はあと50億年?」「一番近くの星に行くのに4万年?」など、宇宙の始まりから身近な時と暦など、知りたいことをわかりやすいQ&Aで紹介。持ち歩きやすいハンディ版。
著者プロフィール/本間希樹(ほんま・まれき)
国立天文台 教授 水沢VLBI観測所長。国立天文台のVERAを用いて、銀河系の3次元構造の研究。また、銀河中心の巨大ブラックホールを事象の地平線スケールまで分解するEHTプロジェクト(サブミリ波VLBI)の日本代表。EHTプロジェクトでは2019年4月10日夜、国立天文台を含む世界16の国と地域の研究機関が共同で記者会見を開き、ブラックホールの「影」の撮影に成功したことを発表。