
ワンオペ育児のお父さんネコが大奮闘の『おんぶねこ』 絵本と縁遠いパパにも刺さってプチブレイク
自分とネコを重ねあわせてしまい……泣ける「令和の育児絵本」のココを読む!
2025.04.17
まずは、講談社のライツMD部で働いている田村隆幸さんから。アニメや小説などがもとになってさまざまな商品が企画・発売されますが、ライツMD部はその商品化の窓口をつとめるセクションです。
田村さんは、この春から保育園に通う娘さんにたまに絵本を読み聞かせる程度で、それほど絵本を読んだ経験はないそうです。
「いま、まさに子育てに手が掛かっている時期ですよ! 絵本のお父さんネコと同じで、『このタイミングでギャン泣き!?』は日常茶飯事です。でも、描かれているのがネコでしょう。そして、ユーモアたっぷりにおはなしが展開するので、『苦しい』とか『しんどい』とかいった子育てのストレスの部分を感じずに読めるんです。そこが、この絵本のすごさだと思います」
冷静に分析してくれる田村さんですが、やはり絵本のオチにはグッときてしまったといいます。
「まだまだ先の話ですが、親から離れていくんですよね。想像しただけで、ちょっと胸が熱くなったといいますか……」

「この瞬間は、いつか終わってしまう」
絵本とは縁遠い人を探して、「週刊現代」編集部で編集者をしている足立敬さんにも読んでもらいました。
「週刊現代」は、ご存じのかたも多いと思いますが、大人向け、とくに男性向けの週刊誌です。表紙には「トランプ関税戦争 世界大恐慌への備え方」(4月28日号)とか、「痛み止めと降圧剤」(4月5・12日号)といった特集記事のタイトルが躍っています。
絵本の「え」の字もない……。
絵本を読み終えて一息ついた足立さんは、こんな感想から語り始めました。
「……共感ですね。すっごい共感です。まず、それがあふれてきました」
現在、もうすぐ3歳になる娘さんを育てるお父さんの足立さんが続けます。
「うちは、おんぶじゃなく抱っこ派で、保育園の送り迎えでも、公園に行くのも、いつでも専用ひもで娘を抱っこしていました。そうしないと泣いてしまうところも絵本と同じ。でも、2歳を過ぎたころだったかなぁ、ある日、『自分で歩く』と言い出しましてね……」
いざ、抱っこができなくなったとき、一抹の寂しさをおぼえたと言います。
「抱っこしているときは、腰が痛くてたまりませんでした。でも、いままで当たり前にしてきたこと、それができなくなる瞬間の連続なんですよね、子育てっていうものは……。口元にスプーンで食べ物を運んだり、保育園から手をつないで歩いて帰ったり、そういったことって、ずっと続くわけじゃない。この絵本を読んで、『娘とのこの瞬間は、いつか終わるときがくる。だから、もうちょっとだけがんばろう!』という気持ちにさせられました」
しみじみとそう話す足立さんは、ふだんの週刊誌編集の職場ではおそらく見せないであろう、やさしさとせつなさが同居したような笑みを浮かべていました(と、聞き手は感じました)。
それぞれの立場の心に響く
いかがでしたでしょうか。
講談社絵本新人賞の最終選考の場でも、「キャラクターの描き方のクセが強い!」と評されたネコさんたちは、絵本になって本屋さんへとやってきて、いままさに読み手の心をくすぐっています。
この絵本が、これからどのように読まれていくのかについては、ネコの本を専門に扱うnecoyabooks(東京都立川市)のゆうさんのコメントが言い当てているのではないでしょうか。
◯猫好きの方はもちろん、子育て真っ最中の方には共感を、子どもが成長された方には懐かしさを感じていただける一冊です。それぞれの立場で心に響く物語を、ぜひお楽しみください。
──necoyabooks(東京都立川市) ゆうさん
このクセ強絵本が気になったという方は、ご自身の琴線に触れるかどうか、ぜひお手に取ってお確かめください。

幼児図書編集部
絵本をつくっている編集部です。コクリコでは、新刊の紹介や作家さんのインタビュー、イベントのご案内など、たのしい情報をおとどけします! Instagram : @ehon.kodansha Twitter : @kodansha_ehon
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