絵本作家に聞く絵本作りのポイント「迷ったときは人の意見を聞く」まつながもえさんインタビュー
『読者と選ぶ あたらしい絵本大賞』デジタルお絵描きアプリ「CLIP STUDIO PAINT」ユーザー絵本作家インタビュー
2024.12.24
まつなが:小さい頃からおはなしをつくるのがすごく好きで、小学生時代は、毎日大量のおはなしを書いていたんです。ところが中学から陸上競技を始めて、高校生、大学生とスポーツ三昧の日々を送っていたので、おはなしづくりから遠ざかっていました。
その後、就職して社会人になってしばらくしてから、やっぱり絵本をつくりたいという思いが強くなって。独学は無理だと思ったので、絵本講座に通うことにしました。それが、きむらゆういち先生の「ゆうゆう絵本講座」だったんです。
──「ゆうゆう絵本講座」ではどんなことをしましたか?
まつなが:講座では月に一度、できあがった新作を発表するという決まりがありました。私はとにかく数をつくるべきだという思いがあったので、毎月1作品(32ページ)を作って発表することを目標にしました。
きちんと完成させることができなくても受け入れてもらえたので、文字を入れてラフの状態のもので発表することもありました。発表した作品について、先生と生徒が順番に感想を言っていくのですが、そのときに笑ってもらえるのが、いちばんのモチベーションになりましたね。食べ物が主役の作品を描くときは、「もし自分がこの食べ物だったら、どんなことを考えるだろうか……」などと考えながら描いていました。
──作品の感想で、ネガティブな意見が出たときには、どんなふうに対処しましたか?
まつなが:自分では気づけない悪い部分を指摘されるので、「だったらそこを良くすればいいんだ」とポジティブに捉えて、作品をより良くする手がかりにしました。今でもそうですが、迷ったときには周りの人の意見がすごく役に立ちます。ですから、言われたことは「そうなんだ」と素直に受け入れています。
──ほかの人の意見を聞いて、取り入れるという前向きな姿勢がすてきです。講座に通うと決めたときから、絵本作家としてデビューするのが目標でしたか?
まつなが:最初は、ただ絵本をつくりたいという思いでした。でも講座で有名な絵本作家さんのお話を聞いたり、プロの作家さんや編集者の方たちと関わったりしているうちに、「絵本作家になりたい」と思うようになりました。同じ講座を受けていた方が、実際に絵本作家としてデビューしていく姿に、刺激を受けたのかもしれません。
名だたるコンペで連続受賞! コンペ応募のコツとは?
──デビューに向けて、どんなことをしましたか?
まつなが:私は、デビューするには「コンペに応募するしかない」と考えていました。応募するには作品を完成させなくてはいけないので、そこまで仕上げるのが大変で。しかもコンペに落ちると、その応募作品はほかのコンペに出すことができなくなる場合がほとんどでした。
だから、どのコンペにどの作品を出すのかとても悩みましたし、苦労して仕上げた作品がお蔵入りになるかもという不安は、いつも感じていました。でも、「むだになるものはないよ」と「ゆうゆう絵本講座」の人にも言ってもらえたので、すごく心強かったです。作品への意見もそうですが、私の場合は本当に周りの人の言葉に助けてもらったなと思います。
──コンペに応募し始めてから、すぐに受賞することができましたか?
まつなが:いいえ、応募し始めた頃はまったく賞に引っかからなくて、7回くらい応募しています。とある教室に入会するために作品を送ったら、「こんなものを描ける人間はいくらでもいる」という返信が来たこともあります。
コンペも、審査が数段階ありますよね。一次、二次と残り続けて「これはいけるかも!」と思っていたけれど、最終審査の結果に名前がなかった日はけっこう落ちこんで……。でも、「ゆうゆう絵本講座」で毎月1作品作っていたおかげでネタのストックがあったので、「今回これはダメだったから、次はあっちのネタのほうがいいかも」とすぐに気持ちを切り替えることができたんです。
──毎月がんばって積み上げてきたことが、コンペに挑む心の支えにもなっていたんですね。
まつなが:そうなんです。しかも「ゆうゆう絵本講座」で発表したときに「おもしろい」と太鼓判を押してもらえた作品があるというのが、私の強みでした。コンペに応募する作品は、ほかの人に「おもしろい」と評価してもらえたものだけにしていたんです。だから本当に人の意見を聞くのは大切だなと思います。
──最初にコンペで賞をもらった作品はなんですか?
まつなが:2020年に「第3回絵本塾カレッジ創作絵本コンクール」で大賞をいただいた、『はにわくん』です。
まつなが:1作目はビギナーズラックみたいな感じで作品をつくりあげることができましたが、2作目からが大変でした。「ゆうゆう絵本講座」に通いながら作品をつくり続けて、2021年に「第22回ピンポイント絵本コンペ」、同じ年に「第10回MOE創作絵本グランプリ」に応募しました。
──応募するコンペと、作品選びで気をつけたことはありますか?