細川貂々さんに聞く「新入学·進級の季節、子どもの心が前向きになる3つの方法

子どもが気をつけたいこと、親が気配りしたいことは?

ライター:高木 香織

春は入園・入学、進級の季節。新鮮な世界にドキドキワクワクの子どもたちがいるかたわらで、慣れない生活や勉強、初めて出会うお友だちとの関係に悩んでいる子がいることも見過ごせません。

そんなちょっと悩ましい子どもたちに、寄り添ってくれる絵本がありました! 今、注目の絵本『こころってなんだろう』は、自分自身の心を見つめながら、気持ちの整え方やお友だちとのあたたかなやり取りの仕方に気づかせてくれます。

そこで、『ツレがうつになりまして』や『それでいい。』など心が折れそうな人をやさしく包み込む作品で知られる著者の細川貂々(てんてん)さんに、新作絵本『こころってなんだろう』を開きながら、子どもが自分で気をつけられることや、親が気配りしたいことを、3つずつ教えていただきました。

子どもや親の心を楽にするためにできること

──絵本『こころってなんだろう』は、やさしい絵とあたたかな言葉が印象的です。この絵本で伝えたいことはなんですか?

細川貂々さん:自分の子を育てたり、PTAで子どもたちや学校の様子を見ていろいろ考えさせられました。その経験などから『こころってなんだろう』を描きました。この絵本で伝えたかったのは「子どもが自分で気をつけられること」と「親や周りの大人がしたいこと」です。

子どもに伝えたいこと

〈心を楽にする方法①〉「たすけて」「ありがとう」「ごめんなさい」を言う

──子どもたちが生きていくために、まずどんなことができるといいでしょう。

細川さん:「たすけて」「ありがとう」「ごめんなさい」が言えれば、とりあえず大丈夫。さらに「おはようございます」も言えたらもっといいですね。子どもたちばかりでなく、大人だって、生きていくうえでこの言葉さえ言えたら人間関係がスムーズになりますよ。

──友だちとのやりとりもスムーズになりそうですね。

細川さん:この4つの言葉、とくに「たすけて」は大人でも言えない人が多いのです。子どものうちから言えるようになるといいですね。

イラスト:細川貂々(絵本『こころってなんだろう』より)

〈心を楽にすること②〉友だちはいなくてもいい

──早く友だちができると親はほっと一安心。どうすると友だちができますか?

細川さん:友だちはいなくてもいいんですよ。友だちができるのが早いのは、言葉を使うのが上手な子です。もし友だちを作りたいなら、まず自分の気持ちを言葉で伝えられるように、大人が見守ってあげるといいですね。

──急いで友だちを作らなきゃ、とか、話し相手がいないからとさみしく思わなくてもいい。そう思うと、気持ちが楽になりますね。焦らなくても、そのうち自然にできますものね。

イラスト:細川貂々(絵本『こころってなんだろう』より)

〈心を楽にすること③〉居心地のいい場所を見つける

──学校が始まってしばらくたつと、なじめずに気持ちが落ち込む子どもたちがいます。学校に行くのがつらくなったら、どうしたらいいのでしょう。

細川さん:学校に行きたくなかったら、ムリして行かなくてもいいんです。ただそのときは、大人がその子の居心地のいい場所を見つけてあげることが大事です。家の中にいる場所がなかったら、家の外のどこかに見つけてあげたいですね。

──そこで過ごしたいと思える場所を見つける、そのお手伝いをするといいんですね。

親や周りの大人に伝えたいこと

〈親が気をつけること①〉「あたたかい無関心」で見守る

──小さな子どもは自分でできることが限られています。親や周りの大人が気をつけてあげたいことはありますか。

細川さん:はい、こちらも3つご紹介しましょう。

──先生やクラスメートとうまくいかないときは、心はどういう状態ですか。大人はどう接したらいいのでしょう。

細川さん:「いじけてる心の状態」になっています。そんなときは、大人は「あたたかい無関心」でいることが大切です。

──「あたたかい無関心」って、いい言葉ですね。具体的にはどうしたらいいのでしょう。

細川さん:いじけてるときは、子どもは「何でこんなことしちゃったのかな」などと恥ずかしく思っているんですね。だから、あれこれ聞かずに、そっと見守ってあげるんです。とてもつらそうだったら「どうしたの」と聞くけれど、できればそっとしておく。そして、相談されたら答えるようにして、なるべく子ども自身で解決させるように仕向けます。

──しばらくしてから、「あのときはね……」などと言ってくることがあります。それまで待つのですね。

イラスト:細川貂々(絵本『こころってなんだろう』より)

〈親が気をつけること②〉自分の子どもを褒める

──子育てで悩んでいるお母さんがたくさんいます。

細川さん:悩んでいることの裏返しなのか、自分の子どもを人に悪く言うお母さんたちも多いのです。でも、人と話すときに、胸を張って「うちの子は、ここがいいところなんですよ」と言ってあげるようになるといいですね。

──目の前で子どもが聞いていることもあります。人前で親に褒めてもらえたら、子どもたちもうれしいですよね。



〈親が気をつけること③〉子どもがおかしいと感じたら「大人力」を使って調べる

──子どもの様子から「何かおかしいな」と感じたら、どうしたらよいのでしょう。

細川さん:まず、犯罪や暴力などに巻き込まれていないかをチェックします。子どもに尋ねるのではなく、「大人力」を使って調べます。先生や信頼できる周りの大人たちに聞いてみて、子どもの状態を把握するようにします。

──子どもに聞いても、説明できないかもしれませんし……。そばにいる大人がまず気づいてあげたいですね。親へのアドバイスがありますか。

細川さん:子どもの存在自体が、素晴らしいことなんです。いろんな子どもがいて、どこの子もいい子。どんな子でも悩まなくていいんです。人それぞれであるように、子育てもそれぞれのやり方でいいんですよ。

──それには子どものよいところを見てあげたいですね。子どもたちは親が大好きなのですから、自分の子育てに自信を持っていいんですね。

『こころってなんだろう』
細川貂々 (著) 1595円 講談社

映画化もされた『ツレがうつになりまして。』や、水島広子医師との共著「それでいい。」シリーズなど、心をテーマに数多くのベストセラーを描いた作家・細川貂々氏による、「こころ」について学べる絵本。
何もわからなかった赤ちゃんから、コトバを覚えて子どもになって、「わたし」のこころがどんなふうにうまれるか、どんなことで変化するか、どうやってきもちをつたえるか、など、子どもも大人も繰り返し読んでおきたい<こころとの付き合い方>を、わかりやすく教えてくれます。
シリーズ化決定! 第2弾は「みらいってなんだろう」先のことがあれこれ心配になる人も読めば安心できる。
ほそかわ てんてん

細川 貂々

hosokawa tenntenn
漫画家、イラストレーター

1969年生まれ。セツ・モードセミナー卒業後、漫画家、イラストレーターとして活躍。夫と息子がいる。夫のうつ病を描いた『ツレがうつになり...

たかぎ かおり

高木 香織

Kaori Takagi
編集者・文筆業

出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言...