子どもにはお友達といい関係を築いてほしいし、場をわきまえた行動を覚えてもらいたい……。我が子の将来を思うと、親としてはなんでも注意したくなります。しかし、いくら親心の表れとはいえ、叱りすぎは避けたいものです。
子どもが一人っ子だと、親の気持ちが厳しいしつけとなって反映されてしまうのではないか、と心配する方もいます。子育て、とりわけ一人っ子の叱り方について、明治大学文学部教授で教育学博士の諸富祥彦先生に教えていただきました。
全4回の第3回目のテーマは「一人っ子を叱るコツ」です。
(全4回の3回目。#1、#2を読む)
一人っ子だからこそ叱り方に気をつけたい
「一人っ子だからといって特別な叱り方があるわけではない」と諸富先生はいいます。しかし、一人っ子だからこそ、叱り方には十分気をつけたいともいいます。どうしてでしょうか。
「一人っ子は親のしつけを一身に受けることになるので、注意されたり、叱られたりする機会が多くなりがちです。また、親としても子どもの姿を目にすることが多く、つい口を出してしまうということもあるでしょう。
これからご紹介することは、きょうだいのいるご家庭でも通用することですが、特に一人っ子のご家庭では気をつけてみるといいですね」(諸富先生)
「怒る」と「叱る」は全然違う
まず、「怒る」と「叱る」を区別して欲しい、と諸富先生は教えてくれました。
「怒るというのは感情に任せた行為です。親がガミガミ怒っていると、子どもは『ママ(パパ)はすごく不機嫌だ。ボク(私)のことが嫌いなんだな』と思ってしまいます。
親は怒っているときに気をつけてほしいことを注意していると思いますが、子どもは怒られていることに意識が向いてしまい、じつは何も伝わっていないんですよ。
また、特に一人っ子の場合、ガミガミが続くと子どもは逃げ場がなく苦しい状況に陥ります。親のほうも我が子ひとりしか目に入らないので、苦しさを覚えることになります。
怒るというやり方はやめて、両者がしんどい状態を避けねばなりません」(諸富先生)
「怒る」の弊害とは
「怒る」という行為に子どもは恐怖も覚えます。親の目がつりあがっていること、声が大きいことを子どもが受けると、親がどんなに言葉を連ねて注意しても頭には入ってきません。
「ガミガミ型の伝え方では子どもは親に嫌われていると思って、自分を愛する気持ちである自己肯定感が下がってしまいます。
また、『これをやらないと怒られる』という気持ちでルールを守るようになります。人は嫌な気持ちや逃げ場のない状態では、本当の意味でなにも学べません。
叱られたあとで子どもがルールをちゃんと守れるようになるには、いい気持ちで学べることが大切です。ですから親のほうは、子どもがそれを守ったあとに、子どもが楽しさや清々しい気持ちを感じるような叱り方を心がけましょう」(諸富先生)