「叱りすぎ!?」の不安から解放される 一人っ子を叱る「7つの基準」

一人っ子のしつけ「ウワサの真相」#3

明治大学文学部教授:諸富 祥彦

7つの基本ルールを破ったら叱る

諸富先生のカウンセリングでは、「一人っ子だからワガママと思われないように、きちんとしたしつけをしなきゃ」と自分にプレッシャーを与えている方がいるそうです。しかし、「きちんと」とはとても広い意味を持っています。先生の考える「きちんと」とは、どのようなものでしょうか。

「私が考える、子どもに身につけさせたいルールは7つです。この7つのルールは、これから子どもが社会生活や集団生活を送る上で基本となる振る舞いをピックアップしたものです。

私はこれを『人生の基本的な型』と呼んでいます。

一人っ子は親子が密接な分、子どもの行動にあれこれ注意したくなりますが、7つのルールを基本にすればすべてを叱ることはありませんし、子どもに最低限守らせたいことが見えてきます。本当に叱らなきゃいけない場面がわかるでしょう」(諸富先生)

【諸富流】子どもが守るべき「人生の基本的な型」

(1)社会のルールを守る(礼儀正しく振る舞う、信号を守る、目上の人を敬うなど)
(2)きちんとあいさつする
(3)人を傷つけない
(4)物を粗末にしない
(5)約束を守る
(6)自分のことは自分でやる
(7)お金の貸し借りをしない

「きちんとあいさつをする」も型のひとつ。 写真:アフロ

7番目の「お金の貸し借りをしない」は小学生になると大事なルールです。塾通いが始まって子どもだけで行動することが増えてくると、お金の貸し借りすることがあると先生は話します。

金額の大小にかかわらず、お金の貸し借りはトラブルの原因になります。こういったルールを守れなかったときこそが親が叱る場面です。

叱るときは一点集中がベスト!

「特に小学校に入ると『宿題やったの? 明日の準備はしたの? プリント出しなさい』と複数の指示を一度に伝える方がいます。

しかし、叱るときは1点集中が基本です。ひとつの指示でひとつのことをさせましょう。

また、できれば簡単なものから徐々に難易度を上げて、成功体験や達成感を与えてあげると、次の行動へと移りやすいでしょう。

とくに一人っ子は達成意欲が強い子が多いので、少しずつ積み重ねることで行為が改善されていくでしょう」(諸富先生)

言葉遣いは肯定的に

この一指示一動作は小学校の先生も取り入れている手法で、行動心理学の「スモールステップの原則」という考え方です。

「動作を指示するときは、子どもへの伝え方も大切です。指示は肯定的な言葉を使いしょう。例えば『いつになったら片付けるの?』ではなく、『片付けると、明日また気持ちよく部屋を使えるよね』という具合です。

子どもが取り組んだことで、楽しさやいい気持ちを感じるような声かけをしましょう」(諸富先生)

子どもが小学校の高学年になっても、スモールステップが基本だと諸富先生は話します。成長すれば一度にたくさんのことが処理できるようになりますが、一点集中の叱り方で子どもの達成感を積み重ねていくことが大切です。

シリーズ4回目の最終回は引き続き「一人っ子の叱りかた」について紹介します。


取材・文/梶原知恵

20 件
もろとみ よしひこ

諸富 祥彦

明治大学文学部教授

明治大学文学部教授。教育学博士。1986年筑波大学人間学類、1992年同大学院博士課程修了。英国イーストアングリア大学、米国トランスパーソナル心理学研究所客員研究員、千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現職。40年近いカウンセラーキャリアを持つ。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーでもある。 【主な著書と監修書】 『ひとりっ子の育て方』(WAVE出版) 『イラストでわかる自己肯定感をのばす育て方』(池田書店) 『思春期の子の育て方』(WAVE出版)など

明治大学文学部教授。教育学博士。1986年筑波大学人間学類、1992年同大学院博士課程修了。英国イーストアングリア大学、米国トランスパーソナル心理学研究所客員研究員、千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現職。40年近いカウンセラーキャリアを持つ。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーでもある。 【主な著書と監修書】 『ひとりっ子の育て方』(WAVE出版) 『イラストでわかる自己肯定感をのばす育て方』(池田書店) 『思春期の子の育て方』(WAVE出版)など

かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。