「発達障害」そもそも何か? パパママに覚えてほしい「これだけ」を専門家が解説

【セミナーレポート】榊原洋一先生【正しく知って安心! 「子どもの発達障害」】#1

小児科医/お茶の水女子大学名誉教授:榊原 洋一

子どもの発達障害について、榊原先生にわかりやすく解説していただきました。(イメージ写真)  写真:アフロ
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数ある年齢別知育絵本のなかで、長年一番人気の「えほん百科」シリーズ(累計250万部)。その信頼を支えているのは、子どもの発達研究の第一人者である榊原洋一先生の監修です。

講談社コクリコCLUBでは、榊原先生のオンラインセミナーを実施。「えほん百科」シリーズにならう形で、榊原先生から4回にわたり子どもの発達についてお話をいただいてきました。

セミナーを通じてみなさまからいただいた質問に「発達障害」にまつわるものが多くあったため、今回は特別に「子どもの発達障害」について的をしぼり、お話をうかがいました。2023年3月24日に開催されたオンラインセミナーの再録です。

(全3回の1回目)

榊原洋一先生プロフィール

榊原洋一(さかきはら・よういち) 1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。

「発達障害」は障害の中で最も多い

本日のテーマは「子どもの発達障害」ということで、とくに未就学児についてお話しいたします。

まず、そもそも発達障害とは何かをご説明しますね。こちらのグラフは、日本の20歳未満の人がもつ障害の種類とその割合を円グラフで表したものです。

子どもの障害には、知的障害や肢体不自由などさまざまなものがありますが、最も多いのが発達障害なんです。

子どもの障害の種類と割合  資料:榊原洋一先生作成

「肢体不自由」という障害があります。例えば、車いすに乗っていたり、杖が必要だったりするなど、肢体不自由の障害のあるお子さんは5万人です。脳性麻痺や筋ジストロフィーなどが肢体不自由の代表的な病気です。

この5万人という数字ですが、意外に少ないと思われたのではないでしょうか。肢体不自由の障害は目に見えやすいので、一般的には実際の数よりもずっと多いイメージがあるようです。

「知的障害」は18万人。知能指数(IQ)という指標があります。その平均値が100で、70に満たない方が知的障害に当てはまります。知的障害はその程度によって、軽度、中程度、重度に分類されます。その総計が18万人です。

子どもの障害の種類と人数  資料:榊原洋一先生作成

まだ世の中に発達障害という言葉がなかった時代には、子どもの障害では知的障害が最も多いと考えられていました。

「視聴覚障害」は2万2000人。生まれつき、または後天的に視力や聴力に障害のあるお子さんです。こちらも、思ったより少ない印象があるかもしれません。

そして、「発達障害」ですが、実は130万人います。とても多いんです。20年くらい前から、障害の中でも特に数が多い障害であることがわかってきました。

「発達障害」は診断名ではない

発達障害については、まず、みなさんに必ず覚えていただきたいことがあります。

それは「発達障害というのは診断名ではない」ということです。診断名ではないってどういうこと? と不思議に思われるかもしれません。

発達障害というのは、実は、いくつかある障害の「総称」なんです。

例えば、「消化器病」という言葉がありますが、これも診断名ではなく総称です。消化器病には胃潰瘍もあれば、大腸がんもあります。この「胃潰瘍」や「大腸がん」が診断名であって、消化器病はそれらをまとめた大枠に過ぎないんです。

なぜ私がこの点を強調するかというと、ちゃんと理由があります。

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