【闘病ママ】の罪悪感 「体験格差」「ヤングケアラー」の不安 親の治療と子育ての「両立支援」は誰もが必要

第3回「闘病ママの子育て」~親の役割編~

一般社団法人「てくてくぴあねっと」代表:うえやま みか

子どもから“経験”を奪っているかもという不安

子育て支援制度や、無料子育てイベントなど、子育て世代をとりまくサービスは増えてきています。しかし、その多くは健康な親を前提に作られているもの。特に闘病ママ・パパを悩ませるのは、「親の役割」を求める保護者同伴の学校行事やイベントです。

「学校の課外活動や地域行事など、低学年の小学生、未就学児の参加には親同伴が必須なものが多いんです。でも私は、関節痛で歩くこともつらくて同伴は難しい。私も夫も参加できないときは、子どももその行事に参加できません。

ほかの類似体験を探して夫が都合のつく日に連れていってもらったり、田舎に帰省したとき、自然に触れ合う体験をするなどして埋め合わせをする努力はしています。それでも、子どもから経験の機会を奪っているんじゃないかという心苦しさは消えません。夏休みなど長期休みのときはなおさら体験の格差を感じます。

年齢が上がれば、子どもだけで参加できる体験イベントも増えてきますが、親同伴がルールの年ごろでは、集合場所に連れていくこと自体ハードルが高いと感じる方も多いのではないでしょうか。数週間、数ヵ月先のイベント当日に自分の体調が安定している保証はない。子どもたちには、本当にごめんね、っていつも思っています」(うえやまみかさん・以下同)

子どもに申し訳なさを感じてしまうこともありますが、そんなときはこう考えるようにしていると話します。

「全てを完璧にこなすことは到底無理。自分たちができる範囲で自分なりにできることを続けていければいいのではないか、と。

子どもたちにも、そうした思いはゆっくりとでも伝わっていくのでないかと思います」

うえやまさんのお子さん。子どもたちをめいっぱい自然に触れさせることができるのは長期休みで実家に帰省したときなど機会は少ない。  写真提供:一般社団法人てくてくぴあねっと
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PTAには「やりたい気持ち」「できること・できないこと」を具体的に

うえやまさんの長男が通う小学校は、在学中は毎年何らかのPTAの役割を担うルールがあります。どの保護者にも事情があるため、病気を理由にまぬがれるのは難しいことでした。

子どものことなので、できるなら何かしたいという気持ちもある一方で、はたして自分に務まるのかという不安も。

そこで、PTAの役割決めのときには“できること・できないこと”を具体的に伝えることにしたと、うえやまさんは話します。

「感情の部分は抜いて、具体的に伝えることを意識しています。『子どもに関わることなので、できる限りやりたい気持ちはある。だけどこういう病気で、○○はできない。一方で○○ならできるので、できる部分はしっかりやらせていただきたい』と。

するとほかの保護者もどんな役割ならまかせられ、その中でどんなサポートが必要かを判断でき、快く助けてくださいます。

自身の病気のことを周囲に伝えるには勇気もいりますし、そもそも強制されるものでもありませんが、PTA活動など周囲の方と誤解なく円滑に活動を進めていく必要があるときには、こちらもできる範囲で相手に分かりやすく伝える努力をしてみるとよいと思います」

多くの親が我が子をヤングケアラーにしないよう気をつけている

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