【闘病ママ】の罪悪感 「体験格差」「ヤングケアラー」の不安 親の治療と子育ての「両立支援」は誰もが必要

第3回「闘病ママの子育て」~親の役割編~

一般社団法人「てくてくぴあねっと」代表:うえやま みか

「相手に分かりやすく伝える努力」の必要性は、家族の間でもいえること。

うえやまさんは、子どもたちにも年齢に合わせた言い方で、自身の病気について伝えています。病気を強調するというよりは、自分はどんなことが苦手かを話し、その部分は協力をお願いするという伝え方です。

「脱いだものは洗濯カゴに入れてね。ママは下に落ちたものを拾うことが難しいから、洗濯カゴから出ていたら、しっかりカゴの中に入れてね」など。

「下の子はまだ5歳でそんなに分かってはいないからか、『うん、分かった~!』と素直に動いてくれます。小学3年生の長男は、最近は反抗期に差し掛かりなかなか動いてくれませんけど(苦笑)。

いつか私が入院してもやっていけるように、子どもたちにも最低限自分のことは自分でできるようになっていてほしい。お手伝いも自分からできるようになったら安心です。

ただ、お手伝いの協力を求めすぎるとヤングケアラーにさせてしまうのではないかという不安もあります。これは、多くの闘病ママに共通する悩みではないでしょうか」

ヤングケアラーとは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に強いられ、子どもに必要な時間(勉強や部活、遊びなど)に支障をきたしている子ども・若者を指します。

「ヤングケアラーとお手伝いをよくしてくれる子の線引きは難しいですが、“遊びや勉強、睡眠など子どもの重要な時間を削ってでも家のことをしているかどうか”ということだと思います。この線引きをしっかり踏まえ、過度な期待を抱かないようにしています」

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「てくてくぴあねっと」では不定期で「親子の思い出作りプロジェクト」を開催。写真はクリスマス絵本をプレゼントするための準備作業。  写真提供:一般社団法人てくてくぴあねっと

救いは痛みを分かち合える仲間たち

無力感、あきらめ、割り切り──さまざまな思いを味わいながらも、治療と子育てに奮闘するうえやまさん。なんとかがんばれているのは、子どもの笑顔と、“闘病仲間”の存在が大きいと話します。

「私が団体理事を務める『てくてくぴあねっと』(以下『てくてく』)は、闘病しながら子育てをする親たちとオンライン上で話し合える場を設けています。

月に1度、Zoomで開催するオンラインカフェでは病気を抱えながらの子育ての悩みや、病気と子育てと仕事の両立など、気になることを話し合えます。約160名の会員がいるLINEのオープンチャット(以下「オプチャ」)では、支援制度の情報交換や、悩み、励ましの言葉が連なります。いずれも参加は無料で、匿名でOK。

今悩んでいるかたは、よかったらここで苦しい思いを吐き出してほしい。それで心にスペースができたら子どもと楽しめる余裕が生まれるかもしれないから。

私自身、オンラインカフェやオプチャのおかげで、追い詰められるような気持ちや孤独感から抜け出すことができました。分かってくれる同じ立場の人がいるだけで、全然違うんです。

自分一人で抱え込まないで。これ以上自分を責めないで。今でもじゅうぶんがんばっている。がんばりすぎて体調を崩して入院したら、家も子育ても回らなくなる。それが一番つらいから」

「てくてくぴあねっと」では、不定期で会員たちに食料を届ける活動も。  写真提供:一般社団法人てくてくぴあねっと

今健常な親も決して他人事ではない

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