生返事してませんか? 忙しくても子どもの声にきちんと耳を傾ける方法とは

シリーズ「子どもの声をきく」#1-2  子どもアドボカシー協議会理事長・相澤仁さん~子どもの声の聞き方 家庭での実践法~

NPO法人子どもアドボカシー協議会理事長・大分大学福祉健康科学部教授:相澤 仁

忙しいと親がつい言ってしまいがちな「あとでね」。それが続くと子どもは次第に話さなくなると相澤さんは言います。  写真:アフロ

昨今の日本では「子どもアドボカシー」という概念が少しずつ注目されています。子どもアドボカシーとは、子どもの声を聴いて、大人や社会に届ける活動のこと。

その“子ども”とは、児童養護施設など社会的養護を受ける子どもをはじめ、すべての子どもが対象です。

そもそも、なぜ子どもの声を聞くことが大事なのか、どう聞いたらいいのか、受け入れがたい子どもの「声」とはどう折り合いをつけたらいいのか。

NPO法人子どもアドボカシー協議会の理事長・相澤仁さんに、話を聞きました。

※全3回の2回目(#1を読む)

相澤 仁(あいざわ・まさし)PROFILE
1956年埼玉県生まれ。大分大学福祉健康科学部教授。現在、日本子ども家庭福祉学会会長、厚生労働省社会保障審議会児童部会部会長代理、全国家庭養護推進ネットワーク共同代表、全国子ども家庭養育支援研究会会長も兼任。

NPO法人子どもアドボカシー協議会理事長で大分大学福祉健康科学部教授の相澤仁さんに話を聞きました。  Zoom取材にて

親に「聞く準備」がないと子どもは話さない

子どもの話を聞くというのは、どういうことでしょうか。子どもから話しかけてきたら聞き役に徹するのもひとつ。会話のキャッチボールを楽しみながら耳を傾けるのもひとつ。

また、子どもが親から見て不可解な行動をしているときなどに、「どうしてそれをしているの?」「どうしたい?」「何か言いたいことない?」とこちらから質問して、言葉を引き出すのもひとつです。

「どのお洋服を選びたい?」「こういうことをしようと思うけど、それでいい?」「で、あなたはどう考えているの?」

このような子どもにも選択肢を与える言い方を、日常的にしていれば、通常は子どもが自然と意見を言えるようになるし、「言ってもいいんだな」と思えるようになるでしょう。

一方で、なかなか自分の意見や気持ちを親に話したがらない、話したくても言い出せない子どももいます。

「最近元気がない」「よく遊んでいたお友達の話を聞かなくなった」「学校に行きたがらない」など、親として心配なことがあっても、子どもが口を開かないケースもあるでしょう。親はとても心配ですよね。

理由はいろいろ考えられます。ひとつずつ、可能性を掘り下げてみましょう。

「あとでね」が実現しないと子どもは話さなくなる

ひとつは、親が子どもの声に耳を傾ける準備ができていない可能性。

忙しいとき、子どもに話しかけられても「あとでね」と言って、おざなりな対応を取っていないでしょうか。

例えば調理の真っ最中に話しかけられた。在宅ワーク中、数字の確認をしているときに話しかけられた。そんなとき「あとでね」と言ったまま結局は話を聞かなかった、ということはないでしょうか。

子どもは「あとでね」と言われてあとでやってくれるのかと思ったら、いつまで経っても「あとで」はやってこない。

実はこの「あとでね」は、親にとっての「NO」(=聞かないよ)であって、子どもにとっては「YES」(=聞いてくれる!)であるケースが往々にしてあるように思います。

そして「まだ?」「あとでね」の繰り返しの果てに、子どもたちはあきらめて、親に話さなくなってしまいます。

「親に話してもどうせ忙しくて聞いてもらえないだろう」と学習するのです。親がちゃんと聞いてくれるかどうか、子どもは見透かしているんですよね。

そうはいっても、親も忙しいわけですからいちいち手を止めて話を聞くわけにはいかない。そんな親ができることは、「今は手が離せないから、いついつに聞くね」と約束し、それを必ず守ることです。

「その時間なら、必ずパパママは自分と向き合ってくれる」と思えば、子どもはその時間を楽しみに待ってくれるでしょう。

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