発達障害・発達特性のある子を育てる親や家族のストレス 〔言語聴覚士/社会福祉士〕が解説

#11 発達障害の特性のある子どもを育てる母親のストレス〔言語聴覚士/社会福祉士:原哲也先生からの回答〕

一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也

乳幼児を育てる母親の育児ストレス

現在、働く母親の割合は77.8%と過去最高、一方、子育て世帯の65%が生活状況が「苦しい」といいます(国民生活基礎調査 2023年 厚生労働省)。

注:国民生活基礎調査 2023年 厚生労働省

また、乳幼児をもつ母親の育児ストレスについて言及しているいくつかの論文によると、母親の育児ストレスについて次のようなことが言われています。

1.生活・意識の変化によるストレス
・言うことを聞かない、癇癪を起こす、大人の理屈が通らない、ぐずるとなだめにくいなどの子どもの行動への対処の難しさから子どもを否定的に見てしまうことによるストレス
・自分の時間がなく、行動を制限されることによるストレス

2.生活環境からのストレス
・夫の無理解や非協力によるストレス
・経済苦や経済的負担感、収入への不満

3.専業主婦の場合
・子どもとだけ過ごす時間が長く、社会から隔絶された孤立感、閉塞感を感じる

4.就労している場合
・育児・家事と職場での業務と、多重の役割を担うことの負担
・子どもの急な体調不良の際、調整が大変
・専業主婦に比べて、夫の家事分担や育児への非協力などから夫に対してネガティブな感情を持つ傾向がみられる

(主な参考文献 『乳幼児をもつ母親の育児ストレスの要因に関する文献検討』前田 薫ら〈三重県立看護大学紀要,21,97~108,2017年〉)
『子育てをしながら就労する母親が感じる困難とその関連要因の文献検討』岡崎草代夏ら(仙台青葉学院短期大学 研究紀要青葉 Seiyo 第14巻第1号 2022年)

発達障害の特性のある子どもの母親のストレス

上記の定型発達の子どもの育児における母親のストレスに比べて、障害のある子どもの母親の育児ストレスが大変大きいことは、多くの研究でも明らかです。

そのストレスは具体的にどんなものか、私が直接、母親から聞いたことばを中心に挙げてみます。

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