
発達障害の特性のある子どもを育てる父親への支援【後編 父親の育児支援】〔言語聴覚士/社会福祉士〕が解説
#15 発達障害の特性のある子どもを育てる父親のサポート
2025.07.01
言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也
(4)一緒に遊ぶ中で関係を築く
父親もできるだけ「子どもと遊ぶ」時間を作りましょう。
男児の場合は、母親よりも同性の父親に「仲間」意識を持ちやすいです。子どもは仲間である父親のやることに興味を持ち、父親も子どもの「好き」が「わかるなあ」と共感する場合が多いです。
また、身体を使った遊びの相撲や球技、キャンプなどの遊びは「父親の出番」であることが多いです。
ゲームや釣り、虫取りなど親子で「趣味が合う」遊びや、身体を動かす遊びなどで、子どもとお互いに楽しい時を過ごす。遊びの中で父親が自然に子どもに何かを教え、そこで父親と子どもの間に良好な関係が築かれるケースも多いです。
父子でゲームをするご家庭もあるようですが、時間を決めたら父親も終わりの時間を守りましょう。そうして子どもに見本を示すことも大事です。
父親が子どもと良い雰囲気で過ごしていたら、「◯◯、楽しそうだったわね。あなたすごいじゃない!」と母親がほめることも父親の育児参加を後押しするのかなと思います。
(5)父親のネットワークづくり
発達障害の特性のある子どもの父親への支援が少ない中で、父親同士のネットワークも未整備です。同じ悩みを持つ父親とつながりたい、でもそのような場所がないと悩む父親も多いと思います。
北海道のある社会福祉法人では父親だけの会があって、講師を招いて勉強したり悩みを話し合ったりする場を設けています。
地域には発達障害の特性のある子どもを持つ親の会があります。まずそこにアクセスして、その中で父親同士でつながる、「父の会」を作るなどはひとつの方法でしょう。
同じ立場の人とつながること、自分の気持ちを伝えること、学ぶことは、子育てに向き合い悩んだときの大きな支えになります。母親が互いにつながることで支え合う姿を専門職として見てきたからこそ、強くそう思います。
父親のネットワーク構築は公的にも取り組むべき課題だとは思いますが、まずは誰か1人とでもつながろうとしてみてほしいと私は思います。
専門職、支援者そして家族はそれを応援しましょう。
最後に:
子育てにおいて親は子どもの「背景」になってしまいがちです。しかし親もまた、一度きりの人生を生きる人です。その人らしい生き方ができるように、必要な支援がなされるべきです。
これまで親への支援は、母親への支援が主でした。日々の子育ては多くの部分を母親が担っていることからしたら自然なことではあります。
しかし父親もまた支援を必要としています。今後は、父親への支援を充実させ、父親と母親が協力して子育てができるようにしていかなくてはならないと思います。
次回は発達障害の特性のある子のきょうだい児について考えていきます。
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今回は「発達障害の特性のある子どもを育てる家族への支援」の中から、発達障害の特性のある子を持つ父親の支援について原哲也先生に解説していただきました。
次回第16回では、発達障害の特性のある子をきょうだいに持つ子ども、「きょうだい児」の支援について、具体的に教えていただきます。
原哲也
一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表理事・言語聴覚士・社会福祉士。
1966年生まれ、明治学院大学社会学部福祉学科卒業後、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院・聴能言語専門職員養成課程修了。カナダ、東京、長野の障害児施設などで勤務。
2015年10月に、「発達障害のある子の家族を幸せにする」ことを志し、長野県諏訪市に、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN、児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじおを設立。幼児期の療育、家族の相談に携わり、これまでに5000件以上の相談に対応。
著書に『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)、『発達障害のある子と家族が幸せになる方法~コミュニケーションが変わると子どもが育つ』(学苑社)などがある。
原哲也先生へのご相談を募集
コクリコでは、原先生の連載で取りあげるご相談を募集しています。お子さんの発達障害、発達特性、療育、家族の関わりについてなど、お悩みをお寄せください。
くわしくはこちら https://cocreco.kodansha.co.jp/general/present_event/sPFh8

わが子が発達障害かもしれないと知ったとき、多くの方は「何をどうしたらいいのかわからない」と戸惑います。この本は、そうした保護者に向けて、18歳までの療育期を中心に、乳幼児期から生涯にわたって発達障害のある子に必要な情報を掲載しています。必要な支援を受けるためにも参考になる一冊です。
原 哲也
1966年生まれ、明治学院大学社会学部福祉学科卒業後、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院・聴能言語専門職員養成課程修了。カナダ、東京、長野の障害児施設などで勤務。 2015年10月に、「発達障害のある子の家族を幸せにする」ことを志し、長野県諏訪市に、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN、児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじおを設立。幼児期の療育、家族の相談に携わり、これまでに5000件以上の相談に対応。 著書に『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)、『発達障害のある子と家族が幸せになる方法~コミュニケーションが変わると子どもが育つ』(学苑社)などがある。 ●児童発達支援事業「WAKUWAKUすたじお」
1966年生まれ、明治学院大学社会学部福祉学科卒業後、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院・聴能言語専門職員養成課程修了。カナダ、東京、長野の障害児施設などで勤務。 2015年10月に、「発達障害のある子の家族を幸せにする」ことを志し、長野県諏訪市に、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN、児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじおを設立。幼児期の療育、家族の相談に携わり、これまでに5000件以上の相談に対応。 著書に『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)、『発達障害のある子と家族が幸せになる方法~コミュニケーションが変わると子どもが育つ』(学苑社)などがある。 ●児童発達支援事業「WAKUWAKUすたじお」