「早生まれは不利」の原因は親!?心配する親がやりがちな誤ちと本当にすべきこと
人生相談本コレクター・石原壮一郎のパパママお悩み相談室〔09〕
2021.11.03
コラムニスト&人生相談本コレクター:石原 壮一郎
「早生まれが不利」はもっともらしいが無意味
昨年(2010年)7月、東京大学大学院経済学研究所の山口慎太郎教授が、早生まれに関する論文を発表して話題になった。調査によると、早生まれの子は高校入試時の偏差値や30~34歳の所得が少し低めという結果が出たそうじゃ。ただ、山口先生は知力や体力の差が原因ではなく、まわりの大人たちの関わり方が影響していると推察する。
勉強や読書や塾通いにかける時間は「早生まれ」の子のほうが多い。いっぽうでスポーツや外遊びに使う時間は少なめである。それが「自己効力感(自分はできるという気持ち)」などの低さにつながる傾向があるとか。「早生まれの不利」をカバーしよういう親のがんばりが、長い目で見ると子どもの足を引っ張ってしまう可能性があるようじゃ。
<石原ジイジの結論>
「早生まれ」と「遅生まれ」の比較は、雑談の話題としては面白いが、真剣に気にする必要はない。いや、あとから変えられない以上、意地でも気にしてはいけない。
個人差に比べたら微々たる差だし、我が子を見るときにいちいち「早生まれだから」というフィルターを通していたら、たくさんの大事なことを見逃してしまうじゃろう。
自分自身は3月生まれで、孫も1月生まれである。「自分は早生まれで損した」と言い出す情けないジイジになるつもりはないし、孫に対して「早生まれでかわいそう」という失礼な目を向けるつもりもない。もし孫にそんなことをいうヤツがいたら、(少なくとも心の中では)「大きなお世話じゃ!」と全力で言い返すつもりである。
「早生まれ」についての研究は、差の原因を考察して親の姿勢を顧みるという意味では、もちろん意義は大きい。そこでは「ちょっと不利」という調査結果が出たようじゃが、日本人のノーベル賞受賞者には早生まれが多いという話もある。関連記事の中には「遅生まれで小さい頃は何でもうまくできていたので、打たれ弱い人間になった」という声もあった。いいも悪いも有利も不利も、たいていのことはコインの裏表である。
「早生まれ」であることがマイナスに働くとしたら、親が次のような落とし穴にはまったときではなかろうか。
その1「子どもの苦手なことや物足りない部分をすべて『早生まれ』のせいにする」
その2「本人に対して何かというと『早生まれだから』『早生まれなのに』と言う」
以前に「一人っ子」の回(#2)で、「親が『一人っ子はかわいそう』と思ってしまうのは、我が子に対する侮辱である」と書いたが、早生まれもまったく同じである。早生まれかどうかなんて、背負っているたくさんの要素のひとつに過ぎぬ。「もっともらしい理由付け」に飛びつくのは、我が子のありのままを見ることの放棄である。
「〇〇は有利、△△は不利」という話も、親は気になるところだが、子どもは知ったところで無意味じゃ。有利だと言われても何の保証にもならない。不利だと言われても今の条件で戦うしかない。
そもそも「早生まれは不利」という言い方は、同級生との表面的で短期的な勝ち負けに一喜一憂する狭い見方がベースになっている。
有利だの不利だの競馬の予想のようなことに熱中したところで、子どもの成長にはつながらぬ。
その子の特性や環境を考えて、いちばん合う肥料や水のやり方を考えてあげるのが、すくすく育ってその子ならではの花を咲かせるための唯一の方法ではなかろうか。
石原 壮一郎
コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか
コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか