2021.04.03

子どもの約20%が一人っ子の今、「一人っ子がかわいそう」になる真の理由とは?

「一人っ子はよくないのでしょうか?」〜石原壮一郎ジイジと一緒に人生相談本から見つけた “目からウロコの真理”〜 パパママお悩み相談室〔02〕

寄稿家:石原壮一郎

孫・F菜ちゃんと遊ぶ、石原壮一郎ジイジ
写真:おおしたなつか

パパママは今日も悩んでいます。夫婦の関係や子育てをめぐる困りごとに、どう立ち向かえばいいのか。

500冊を超える人生相談本コレクターで、2歳の孫のジイジでもあるコラムニスト・石原壮一郎氏が、多種多様な回答の森をさまよいつつ、たまに自分の体験も振り返りつつ、解決のヒントと悩みの背後にある“真理”を探ります。
今回は、
「一人っ子はよくないのでしょうか?」
というママ(5歳男児の母34歳)のお悩み。はたして人生相談本&石原ジイジの答えは?

直木賞作家・山口瞳は「一人っ子であることより親の過干渉」を指摘

よっこらっしょっと。さてさて、また出てきた石原壮一郎ジイジである。今回スポットを当てるお悩みは「一人っ子はよくないのでしょうか?」。相談を寄せてくれたママさんは、体調的な理由で二人目を産むのは難しい状況とのこと。しかし、まわりから「一人っ子はかわいそう」「一人っ子はワガママになる」などと言われて、我が子が一人っ子であることに後ろめたさを覚えているそうじゃ。

戦後、子どもの数はどんどん減っておる。国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとに行なっている「出生動向基本調査」によると、2015年に行なわれた最新の調査(注:2020年の調査実施は、先行する国民生活基礎調査の中止に伴い中止)では、子どもがいる夫婦のうち、一人っ子は約20%じゃ。ちなみに、二人兄弟が約58%で、3人以上が約23%である。1980年代から2000年頃まで、一人っ子は10%ぐらいで横ばいじゃったが、2010年の調査で一気に増加して、20%に近づいた。

人生相談本から見つけた「一人っ子」についての相談から、いくつかご紹介しよう。まずは、1960年代後半に週刊誌に掲載された【一人ッ子が心配です】というB生さん(40歳、会社員、東京都)からの相談。子どもは小学一年生の息子が一人で、35歳の妻と三人暮らし。妻が、一人っ子だと「我儘で、協調性にかけるとか競争心を失うとかの悪い性質を身につけやすい」らしいことを心配していて、二人目を望んでいるとか。直木賞作家の山口瞳さんは、自身も一人っ子の親である経験をからめながら、こう諭しておる。

〈一人ッ子に独特な性格があるとすれば、長男にも、次男にも、あるいは末ッ子にも、それがあるはずです。(中略)一人ッ子だからといって、甘やかしたり、同情しすぎたり、そのことで親が子供に責任を感じすぎたりすることが、いちばん、いけないのです。その点に関しては、子供は実に敏感なものです〉
(1966年1月~1967年9月に『週刊文春』で連載された「山口瞳のマジメ相談室」に掲載。 ※山口瞳著『キマジメ人生相談室』2012年、河出書房新社刊より抜粋)

きょうだい構成だけではない。都会生まれか田舎生まれか、親がお金持ちかそうでもないかなど、子どもを取り巻く環境は、ひとりひとり別々じゃ。それなのに一人っ子であることに対して、周囲からの「批判」が集まりやすかったり、親自身が引け目を感じがちだったりする。当事者である子どもにとっては、どちらも間違いなく大きなお世話でしかない。

80年代頃から「子育て以外の生き方」も求める女性が増加

続いては、1980~90年代に育児雑誌に寄せられた読者投稿でのやり取り。2歳の一人息子がいる東京都の31歳の女性から、「親も楽しみたいから一人っ子、ではダメ?」という悩みが寄せられた。周りからは、会えば必ず「2人目、そろそろね」と言われるものの、自分は産む気になれない。その理由は「私はこれ以上子どもを産んで、そして家に引きこもり、どんどん“おばさん”になっていきたくない」からだと書いておる。

「私たちは、俗に言うHANAKO世代(注:一般的には1959~64年生まれ)です」とのこと。相談者は31歳。90年代前半の時代背景を見事に反映した意見と言えるじゃろう。いっぽうで「私の言っていることは本当にわがままだっていうことはわかっています」ともある。今回の相談者と事情は違っても、一人っ子に対して後ろめたさを覚えている点は同じじゃ。本には、その投稿に対するふたつの対称的な意見が紹介されておる。

熊本県・28歳の女性〈私は、まったくもって、大、大、大賛成です。(中略)確かに、子どもはかわいいです。妻の私、母親の私、でも、それ以上に「私」を、私は大事にしたいのです。(中略)堂々と、一人っ子を育てましょうね。そして、自分自身も楽しみましょうね〉

福岡県・30歳の女性〈一人っ子で育った私も、息子に弟か妹をと思ってがんばっているけど、やっぱり去年、お腹の中でダメになってしまいました。病気も進んでいるし、この先、治療しても妊娠できるかどうかわからないけど、息子のためにせめてあと1人は! と思っています。(中略)親がたった1人の子に情熱かけるって、あまりよいものではなかった気がします〉
(1981~1996年に育児雑誌『プチタンファン』の読者投稿ページ「プチ・プラザ」に掲載 ※プチタンファン編集部編『「読んでくれて、ありがとう」ここに192人のママがいる』1996年、婦人生活社刊より抜粋)

この女性のように「親も楽しみたい」とまでは言い切らないにしても、90年代に入った頃から「子育てに可能な限りのエネルギーやお金をかけるのが当然」という考え方が、徐々に変化してきた気配はあった。冒頭の「一人っ子率」のデータは、結婚15~19年の夫婦の子どもの数(完結出生児数)を集計したものである。90年代から意識や実態の変化は起きていて、それが21世紀に入ってからの「一人っ子率」の上昇となって表われたわけじゃな。

ワタミ会長・渡邉美樹は「親の過保護」を問題視

「ひとりっ子の息子が学校でKY的な存在に」という悩みに答えるのは、ワタミ会長の渡邉美樹さん。心配なので学校の先生と密に連絡を取り合っているとか。「この先、彼が成長していくうえでうまく人間関係を作っていく方法、親としての心構えを教えてください」という相談に、かなりキツめの言葉を贈ります。

〈KYになるのは、ズバリ母親の責任です。ひとりっ子だからマイペースなのではなく、過保護に育ててしまったからまわりに気を使えない子どもになった。(中略)子どもがかわいくて仕方がない気持ちはよくわかります。しかし、だからこそ(先回りして世話を焼き過ぎずに)「我が子を千尋の谷に突き落とす獅子」の思いで、突き放すことも必要なのです〉
(2008~2010年に『すてきな奥さん』の「生きるヒント」に掲載 ※渡邉美樹著『ダンナに絶対聞けない主婦のお悩み相談室』2010年、主婦と生活社刊より抜粋)

母親だけを責めるのはお門違いだし、育て方だけで性格が決まるわけではない。そこは異を唱えたいが、「ひとりっ子だからマイペース」なんだと結論付けるのは、たしかに違うかもしれん。きょうだいがたくさんいてもマイペースなタイプは、世の中にいくらでもおる。

子どもにはそれぞれの個性があって、なかなか親の理想どおりには育たぬ。人はわかりやすい説明を求めてしまう生き物じゃが、親の理想どうりではない部分の原因を「ひとりっ子だから」というところに持っていくのは、ちょっと安易だし、子どもから目をそらしている行為と言ってもいいじゃろう。一人っ子だからこうだとか一人っ子だとかわいそうとか、考えたところで百害あって一利なしだと、ワシは思うな。

一人っ子を「かわいそう」にするのは親や周囲の偏見

<石原ジイジの結論>

そう言えばウチの娘も一人っ子じゃ。結果的に一人っ子になっただけで、とくにポリシーがあったわけではない。面と向かって言われた記憶はないが、世の中に「一人っ子はかわいそう」という見方があることは、もちろん十分に感じておった。
きょうだいがいる家が多数派で、しかも上の世代だときょうだいがいる比率はさらに高まるから、「ああ、少数派を下に見て安心したいんだな」ぐらいに思っておった。
さまざまな人生相談を読み比べた結論として、もし「一人っ子はかわいそう」という要素があるとしたら、次のふたつではなかろうか。

その1「まわりが『一人っ子はかわいそう』と親や本人に言い続けて、親もそう思い込んでしまう」

その2「まわりからも親からも『一人っ子だから、こういう性格』という偏見で見られがち」

雑誌やテレビで「一人っ子はかわいそう」という言説を目にするたびに、「そういう見方さえなければ、ぜんぜんかわいそうじゃないよ。やかましいわ」と反発を覚えたものじゃ。どんな環境や状況で生まれようと、それぞれ一長一短ある。そもそも、その子が背負うたくさんの要素のうち、一人っ子かどうかなんてことは極めて小さな問題に過ぎん。

まわりが親切や善意のつもりで「二人目もいたほうがいいよ」などと言ってくるのは、止めようがない。反発したり落ち込んだりしても疲れるだけじゃ。勝手に言ってろとスルーすればよい。しかし、どんな理由で一人っ子なんだとしても、親が「一人っ子はかわいそう」と思ってしまうのは、我が子に対する侮辱である。

「一人っ子はよくないのでしょうか」という悩みに対する回答は、「あなたがそう思っているなら、よくないかもしれない。そう思えば思うほど、さらによくなくなる」ということになるな。あれやこれや悩めばいいわけではない。場合によっては「そんなことはどうでもいい」と鼻で笑うのも、親としての戦い方であり、親の務めだと言えるじゃろう。

【石原ジイジ日記】
自分自身のもっとも古い記憶は、たぶん3歳ぐらいのときのものです。2歳の孫のF菜は、ジイジの家でアンパンマンのパズルに熱中したことも、公園で水浸しになって大泣きしたことも、大きくなったときにはまったく覚えていないでしょう。でも、こっちは覚えているので、それはそれでかまいません。

寄稿家紹介

石原壮一郎 いしはらそういちろう

コラムニスト&人生相談本コレクター。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。現在、2歳女児の現役ジイジ。

おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。21年3月に発売された『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。