自治体から問い合わせが急増! 老舗遊具メーカーが追求するインクルーシブ公園作りの哲学

シリーズ「インクルーシブ公園」最新事情#3‐1 遊具メーカー「コトブキ」福田英右氏インタビュー ~メーカーとしてできること~

遊具は楽しく遊べることが大前提

──インクルーシブな遊具を作るうえで、大切にされているのはどんなポイントでしょうか。

福田さん 基本的なところだと、車いすでも安心できるルートを確保すること、身体的な障がいに配慮するだけでなく、発達障害や知的障害など、さまざまな個性を持つ子が楽しめるよう、視覚・聴覚・触覚を使って楽しめるアイテムも取り入れることなどです。ほかにもいろいろありますが、カラーリングも重要ですね。

子どもはみんな明るくて元気な色が好きだと思われがちですが、コントラストが強すぎたり、カラフルすぎたりすると、視覚過敏の子どもはまぶしくて近づけないこともあるんです。

全体的に色弱の子どもでも認識しやすいブルーを多く取り入れ、段差などの注意を促す場所にはイエローを使うなど、できるだけ多くの子どもにストレスを与えない色使いを心掛けています。

──色ひとつとっても、子どもによって見え方・感じ方が違うのですね。

福田さん そのとおりです。そして、もっとも大切なのは、遊びとして「楽しい」「おもしろい」ということ。これは絶対ですね。障がいのある子どもだけが楽しい遊具では、まわりの子どもたちとの交流はなかなか生まれません。

健常の子どもたちも当たり前に楽しくて、障がいのある子どもたちも当たり前に楽しい。そこで、子どもたち同士がつながるような遊具が理想です。

子どもは千差万別ですし、障がいがある子の場合、障がいの症状や程度も千差万別です。メーカー側が「こう遊ぶもの」とルールを決めすぎると、障がいによって対応できない子どもは、公園に遊びに来られなくなってしまいます。できるだけ、いろいろな遊び方ができる遊具を目指したいですね。

子どもは、大人の意図どおりには遊ばないのですが、それが遊びの魅力だったりもします。意図しない動きをどんどんしてほしいですし、遊具によって子どもの自由な発想を育てられたらいいなと思います。

3~4人が入れる小さなドーム状の遊具「コージードーム」。自閉症スペクトラムの傾向がある子どもなどが、にぎやかな場所から離れたいとき、心を落ち着けられる空間。  写真提供/コトブキ

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後編も、引き続き「コトブキ」の福田さんにインクルーシブな遊具についてお話しいただきます。

取材・文/星野早百合

インクルーシブ公園を作るうえで欠かせない、誰でも遊べる遊具について語ってくれた福田英右さん。  写真提供/福田英右

福田英右(ふくだ・えいすけ)PROFILE
遊具メーカー「株式会社コトブキ」マーケティング本部プロダクトマーケティング課に所属。障がい児の受け入れを積極的に行っている関東最大級の幼稚園「柿の実幼稚園」(神奈川県川崎市)での勤務を経て、「コトブキ」に入社。インクルーシブな遊具を含めた遊具の事業部・プレイグラウンド事業部事業推進室、営業本部営業企画部を経て現在へ。障がいの有無など関係ない“みんなが一緒”の社会実現を目指している。

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ほしの さゆり

星野 早百合

ライター

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。