育児×カーリングで劇的に改善した時間の使い方と決断力 五輪メダリスト・本橋麻里 

ロコ・ソラーレ代表・本橋麻里さんインタビュー「スポーツと育児の相乗効果」3/4 ~カーリングと子育てのリンク編~

竹田 聡一郎

2児の母となった現在も週3〜4回の氷上トレーニングを欠かさない本橋麻里さん。
写真/森清  『0から1をつくる 地元で見つけた、世界での勝ち方』(講談社現代新書)より引用

2018年平昌(ピョンチャン)五輪で、カーリング日本女子代表として銅メダル獲得した本橋麻里さん。家族を持ち、育児の経験を積んでいくうちに、カーリングの技術、特にメンタル面やチームビルディング面でポジティブな変化が訪れたと言います。
決断力、効率などをキーワードに、カーリングと育児の共通点と相違点を紹介してもらいます。

カーリングと育児の共通点は下準備 それでも子育ては想定外

「育児とカーリングの共通点は?」
母親になってから本橋麻里さんはそんな質問を時折、受けるようになったと言います。「いくつか共通点はありますが、準備の重要性は共通しています」と回答しているとか。

12歳で始め、そのキャリアは20年を超えたカーリングでは「このショットを決めれば3点は取れるけれど、失敗してしまったら1点取られるかもしれない。そのリスク管理とそれに基づいた優先順位付けはできるようになりました」と自信を持って語ってくれます。

中長期的な強化についても「この練習をしたら、試合に勝てる。このトレーニングを継続すれば大会で優勝できる」という試合や勝利に向けた準備のノウハウも体得してきました。

ある意味では、世界的な強豪に成長した「ロコ・ソラーレ」というグループは、「世界で結果を残せるチームに」という目標から逆算し、その道筋を具体的にイメージして目標と結果を近づけるという行程を進んできた成功例です。

「氷上で起こるトラブルは、石を投げる練習が足りなかったとか、海外のアイスでの実戦経験が十分でなかったとか、基本的には必ず理由があります。どの準備が足りなくて、次の試合までにそれを埋めるためにどういうスケジュールでトレーニングを組むか。それに尽きます」

いわばチームビルディングのエキスパートである本橋さんでも、「育児だけはそのノウハウがまったく当てはまりません」と、認めざるを得ません。

敗因や強化のポイントのほとんどがミーティングで集約され、それを解消して次に進むことがカーリングではできる。一方で、育児は「そのルーティーンさえ簡単に破壊される」と本橋さんは指摘します。

「転ぶかもしれない、汚すかもしれない。私もつたない経験の中である程度の予測は立てて、さまざまな準備をしているつもりでも、想定を軽々と超えてくるのが子どもです。だから楽しいし、かわいいんですけれど、ちょっと目を離したスキにされるいたずらの怖さや、ケガされる緊張感に比べると、氷の上で起こることは想定の内側のこと。

育児を経験してからは、プレッシャーのかかるショットは怖くなくなったかもしれません。アイスコンディションは読めても、息子くんたちの行動は読めませんね。私もまだまだです」

コロナ禍で行動が制限されていることについても「だからこそできることもある、とポジティブに考えたい」(本橋麻里さん)
ZOOM取材にて
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