栗きんとん味のトーストが定番! シンガポールの子どもと朝食事情

世界の子どもたちは何を食べているの? 「世界の朝ごはん」#4 シンガポール編

シンガポールの代表的な朝ごはん・カヤトースト。なんと、温泉卵につけながらいただきます。  写真提供:栗尾モカ
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国が違えば「朝ごはん」も大きく違うもの。世界の子どもたちは、朝ごはんに何を食べているのでしょうか?

第4回は、世界のならいごとにも登場した、シンガポール在住の漫画家兼ライターママの栗尾モカさんに、朝ごはんの様子から、シンガポールの普段の食事についてまで、話していただきました。

「中華」+「マレーシア」+「インド」が食文化の基本

我が家は、日本企業の駐在員である日本人の夫と9歳の長女、そして漫画家兼ライターの仕事をしている私・栗尾モカの3人家族。4年前の2018年からシンガポールで暮らしています。

まず朝ごはんの様子の前に、シンガポールの食文化についてお話しますね。

シンガポールは『プラカナン料理』と呼ばれる、マレー系と中華系がミックスした料理が特徴です。

シンガポールやマラッカ、ペナンなどのマレー半島の港町では、古くから交易が盛んに行われていました。

15世紀ごろから、商業活動のために移住してきた、中華系の移民と現地のマレー系の住民が結婚によって混ざり合い、彼らの子孫をプラカナンと呼びます。

料理もそれぞれの起源から、見た目は中華系なのですが、食べるとスパイスの風味やココナッツミルクというマレー料理の特徴に加え、インド系のエッセンスも入っているのがシンガポール料理です。

世界遺産にも登録されたホーカーとは?

現地の人たちにとって、ホーカー(屋台)は欠かせない存在。2020年12月にユネスコの世界文化遺産にも登録され、コロナ禍前は観光客も多く訪れていました。

「町のホーカー(屋台)の様子。ホーカーは、シンガポール人の食生活に欠かせません」(栗尾さん)  写真提供:栗尾モカ

ホーカーは朝早くから夜遅くまで営業しており、気軽に利用できます。朝のコーヒーだけでもいいし、仕事の合間のランチに麺やシンガポールチキンライスを食べたりも。また、夜はテーブルを囲んでみんなで飲んだりもできます。

なによりホーカーは値段も魅力。シンガポールは物価が高いので、普通のレストランのランチだと30ドル~(日本円で2800円~)ぐらいしますが、屋台は5~8ドル(日本円で約465円~745円。いずれも2022年5月末現在)ぐらいで簡単に食事ができます。日本でいうワンコインですね。

また、シンガポールは共働きの家庭が多く、ホーカーのテイクアウトもよく利用されています。

家庭のごはん事情も、母親だけがごはんを作る、という意識はシンガポールにはありません。かといって、父親が男女平等に食事を作ってくれるということでもなく、家庭によっては食事をまったく作らなかったりします。その分、テイクアウトやデリバリーを大いに活用しています。

だから、キッチンがピカピカのまま、なんていうご家庭も。

「ホーカーには、なんとミシュランガイドに掲載されたお店も!」(栗尾さん)  写真提供:栗尾モカ

断食中に太ってしまう人がいる!?

シンガポールでは、宗教と食の関係も、興味深いものがあります。シンガポール人のおよそ15%はイスラム教徒。イスラム教では、お酒を飲まない、豚肉を食べないという戒律があります。また、“ラマダン”と呼ばれる断食の習慣も。

ラマダンは、日の出から日没まで食事をせず、善行や宗教的な行いに励むことが奨励されます。

しかし、日没後には食事をとってもよいので、なんとラマダンの期間中に太ってしまう人もいるとのこと!

日の出前にはヨーグルトやデーツ(ナツメヤシ。ドライフルーツの一種)など、消化のいいものを食べますが、日没後はファミリーや親戚がそろってワイワイと食事をします。
ちなみに、夜のホーカーやレストランはもちろん普通に営業しており、賑わっています。

日没後の大勢での食事も、実はラマダンの楽しみの一つで、大量の箱詰めクッキーを親戚同士で贈り合ったり、極彩色のシロップを水で薄めたものを飲んだり。

糖分を大量に摂取している様子をよく見るので、断食しても太るのには納得するところがあります。

シンガポールの名物 激甘朝ごはん「カヤトースト」

私は、結婚前のCA時代にはよくベトナムに足を運んだり、結婚後はインドネシアで暮らしていたこともありました。

またコロナ禍前は、シンガポールの隣国のマレーシアや、タイに出かけることも多く、現在も東南アジア圏の食を探究し続けているのですが、そんな私もビックリしたシンガポールの朝ごはんがあります。それは、シンガポールの名物「カヤトースト」です。

先ほどのラマダン明けの糖分にもびっくりですが、このカヤトーストの甘さもなかなかのもの!

「こちらがシンガポールの甘い朝ごはんの代表・カヤトーストです」(栗尾さん)  写真提供:栗尾モカ

カヤトーストは、カヤジャム(ココナツミルクと卵、砂糖。そして独特の甘い匂いがするパンダンリーフを煮詰めたもの)を、カリッと焼いたトーストにたっぷり塗り、スライスされたバターと一緒に挟んだもの。

朝に甘いものを食べる国は他にもありますが、カヤトーストを初めて食べたとき、あまりの甘さにビックリしました。そして、さらにそのお供には、砂糖入りのミルクコーヒー! 

血糖値がしっかり上がるので、脳が目覚めるにはいい朝ごはんとも言えますね。

ちなみにカヤトーストは、温泉卵に絡ませながら食べるのが定番の食べ方。味わいは、栗きんとんのトーストに醤油かけの卵をからめた、という感じでしょうか。

最初は驚きましたが、でもこの甘じょっぱい組み合わせは意外にハマりました。

他の朝ごはんといえば、麺メニューも豊富。この“朝ごはんに麺を食べる”というのは、東南アジアの特徴のひとつで、ベトナムやマレーシア、住んでいたインドネシアでもそうでした。

定番のトッピングは鶏肉や白身魚。魚はお刺身のしゃぶしゃぶのような状態でのってきます。

「こちらはシンガポールの人気の麺メニュー、ラクサ。ピリ辛のココナッツスープが特徴のヌードルで、ホーカーで食べられます」(栗尾さん)  写真提供:栗尾モカ
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