「東大生」「社会のリーダー」に共通する食事マナーとは 料理と学力の意外な関係性
【子どもの学力を伸ばしたければ子どもに料理をさせなさい #3】東大生の8割がお箸を正しく持てる!?
2024.08.29
食育をすると「食」への理解や健康、体作りだけではなく、マナーも身につきます。礼儀作法には人柄が出るといわれており、親の目の行き届く小さなうちから家庭で丁寧に教えていけば、子どもは社会に出てから恥ずかしい思いをすることがなくなるでしょう。その食事マナーの最たるものが「箸使い」です。
シリーズ第3回は、子どものころから食育する意義について、受験食事マイスターの表洋子さんにお話をうかがいます(全3回の2回目、#1、#2を読む)。
◆表 洋子(おもてようこ)
料理家。受験食事マイスター。大手進学塾の食育担当として、生徒へのメニュー開発や保護者への食育アドバイスをサポートする。子どもを志望校合格へと導く、受験生家庭のための料理教室「賢母の食卓」主宰。
【子どもの学力を伸ばしたければ子どもに料理をさせなさい】の連載は、全3回。
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※公開日までリンク無効
東大生に際立っている共通点は、「お箸が正しく持てること」
「東大生の8割が鉛筆を正しく持てる」という調査結果があります(太田あや『東大合格生のノートはどうして美しいのか』文藝春秋)。
東大入試は問題量が多く、解いて書くスピードも求められるため、受験生は普段から見やすく丁寧な文字を書き、簡潔で整理されたノート作りをしておくことが重要です。そのため、鉛筆が正しく持てることは、楽に速く書くために有利になるといわれています。
この調査からはさらに、8割の東大生はお箸も正しく持てるだろうと推測されました。鉛筆とお箸は1本か2本の違いがあるだけで、持ち方が同じだからです。食事の際のお箸が正しく使えるかどうかが学習能力にも影響するなら、見過ごすことができない問題といえます。
お箸を正しく使うには、手の大きさに合ったお箸選びに加え、手指の力も必要です。
近頃の子どもは手指の力が乏しく、筆圧が弱いといわれています。手指を使う経験の多い子は手指の筋力もつき、最小限の回数で効率よく手を動かすといったように、考える力や段取り力も育ちます。そのため、幼児期から手指の力をつける遊びや、何かしらの手伝いをさせることが大切です。
また、お箸の使い方とともに気をつけたいのが食事をする姿勢です。姿勢が悪いと肩や首への負担が増えて脳への血流が悪くなり、脳の働きが落ちて集中力が下がります。
もし、食事をワンプレートで出していたなら、食器を手で持ち上げられずに口のほうを食器に近づける、いわゆる“犬食い”になるでしょう。そうなると、胃腸が圧迫されて必要な量が食べられないどころか、消化器官の働きが鈍くなって消化不良、ひいては便秘を誘発します。胃もたれや便秘を気にして、集中力が長続きしなくなれば悪循環です。
お箸が正しく使えて、食事するときの姿勢が良ければ、脳もよく働いてパフォーマンスが上がり、結果的に成績が伸びていくことにつながります。
社会のリーダーの共通点
表さんは、とある会社で役員室の秘書をしていたことがあるそうです。役員のランチタイムを観察していて気づいたのは、どの方も「正しくお箸が持てている」ということでした。
会社のトップや責任ある立場の人は、会食の機会も多くなります。会食の場で密かに見られているのが食事のマナー、特にお箸の持ち方です。
ビジネスの世界はシビアです。お箸の持ち方一つで相手から教養がないと判断され、付き合いを避けられたり、商談が破談になったりすることも少なくありません。会社のトップに立つ方の中には、食事のマナーについてプライベートレッスンを受けることもあるとか。もちろん、食べ物や運動にも気を配り、健康でいることを何より大切にされています。
マナーは法律ではないので、絶対に守らなければならないという義務はありません。にもかかわらず、上に立つ方がこぞって人目を気にするのは、どうしたら周りが気持ちよくいられるかをいつも無意識に考えているからでしょう。
食事の習慣は、大人になってから急に正しくできることではありません。むしろ幼少期のうちに身につけて自然に備わると、社会へ出てからも苦労しないでしょう。少なくとも親が見本になって、家族みんなで楽しく食事をしながら食事作法を自然に身につけられれば、子どもにとって一生の財産になります。