感情的に怒った「親の反省」 子どもを育てる「エモーショントーク」

東大教授・遠藤先生に聞く「子どもの褒め方・叱り方」#3 声を荒げてしまった時の対処方

東京大学大学院教授:遠藤 利彦

つい、感情的に怒ってしまったとき、どのように対処すればいいのでしょうか。  写真:アフロ

忙しい日々を送っていると、つい余裕がなくなり、声を荒げて感情にまかせて叱ってしまった、という経験を持つお母さん、お父さんもいるのではないでしょうか。

東京大学大学院教育研究科教授で、教育心理学者の遠藤利彦先生に「褒め方・叱り方」を教えていただく本連載。

第3回は、つい声を上げて感情的に怒ってしまい、罪悪感を感じている、というお母さん、お父さんたちへ、アドバイスをいただきました。(全5回の3回目。#1#2を読む)

親がイライラしている場面に接することも大切

――感情に流されて子どもを叱るのはよくないことだと、第1回目のお話で伺いました。しかし、忙しかったり、余裕がないとつい必要以上に声を荒げて怒ってしまうことがあります。

やってはいけないことだとわかっているのですが、つい怒ってしまい、子どもが寝た後、寝顔に「ごめんね」と、謝ることも少なくありません。

遠藤利彦先生(以下、遠藤先生)「親も人間ですから、機嫌が悪かったり、忙しくてイライラしているときには怒ってしまったり、きつく叱ることもあるでしょう。

でも、それに対して要らぬ罪悪感を抱え込む必要はないと思います。

マイナスの感情を吐き出してしまうことは仕方がないことです。それに、時には“お母さんが不機嫌で怒っている”というような場面に接するのも、子ども時代には大切だと言われています。

無理にいつでもニコニコしているなんて不自然ですよね。お母さんやお父さんがイライラしているなと気がつくこと。これも子どもの心の成長のひとつです」

冷静になり、落ち着いてから話す「エモーショントーク」

――そう聞くだけで、親としてはすごく心が救われます。

つい子どもに対して怒ってしまった時は、大人なのに自分をコントロールできない不甲斐なさと、子どもへの申し訳なさでどうしようもない気持ちになっていました。

遠藤先生「ただ、言いすぎたと思ったら、親も反省をすることが重要です。

反省して、親も子も冷静になった時に、『お母さんも大人だけど、時々機嫌が悪くなるんだ。でも、大きな声で怒ったのは間違いだった。ごめんね』と、子どもに気持ちを伝えることが大切です。

実はこの、“冷静になって落ち着いたときに話す”、というのは、子どもが暴れて手がつけられなくなったときにも有効です。

これは“エモーショントーク”と言われていて、感情にまつわるエピソードを落ち着いた状況で話すことで、自分自身の感情を受け入れ、感情をコントロールする力を身につけることができるといわれています。

『そういえばこの前、◯◯ちゃんはすごく怒っていたよね。どうしてあんなに怒っていたのかな?』

とたずてみると、子どもも落ち着いて、自分の気持ちを観察しながら話すことができるはずです。

もしかしたらそこには、表面的にはわからなかった子どもなりの考えがあるかもしれません」

恥ずかしいと感じることは成長のチャンス

――そういえば私にも経験があります。子どもがどうしてもお友達にブランコを譲れなくて、キツく叱ったことがありました。
公園からの帰り道で、子どもが「自分はブランコが上手にできないから降りたくなかった」と言ったことがあります。

子どもなりに恥ずかしい、悔しい、でも、頑張りたいという気持ちが芽生えていて、それをうまく言葉で伝えられないからこそ、頑なにブランコを譲らなかったのだと後から気がつきました。

遠藤先生「心の成長に伴い、恥ずかしいという気持ちが芽生えたことに気がつけましたね。

実はこの、恥ずかしいという感情、欧米ではしつけにおいて良い影響はないと言われています。

ただ、東洋圏、特に日本では、適度な恥ずかしいという感情は自己向上に繋がると知られています。

日本人や東洋人は恥ずかしい思いをすると、頑張らなくちゃと奮起します。
しかし欧米人は恥ずかしいという感情を覚えるとその場から立ち去ったり、やる気を失ってしまうということが見受けられます。

もちろん度を越さない恥であることは大前提ですが、子どもが生活の中で適度な恥ずかしさを感じた時は、ある意味成長のチャンスなのです。

“もう一度やってみようか?”などと促してあげてみるのがよいでしょう」

大きな声で感情的に叱ってしまったことを、親が素直に反省し、また叱る原因になった子どもの行動の理由を落ち着いて聞いてみることで、実はそこに成長に繋がる大きなチャンスが隠されていることもあるんですね。

怒った後、仲直りの意味も込めて、リラックスした環境で、子どもとエモーショントークをすることを心がけてみるのもいいかもしれません。

第4回は、効果的な子どもの褒め方を遠藤先生にお伺いします。

取材・文/知野美紀子

遠藤利彦教授のインタビューは全5回です。

えんどうとしひこ

遠藤 利彦

東京大学大学院教授・教育心理学者

東京大学大学院教育学研究科教授、同附属発達保育実践制作学センター(Cedep)センター長、心理学博士。 山形県生まれ。東京大学教育学部卒。同大学院教育学研究科博士課程単位取得後退学。 聖心女子大学文学部講師、九州大学大学院人間環境学研究院助教授、京都大学大学院教育学研究科准教授などを経て、2013年から現職。 専門は発達心理学、感情心理学、進化心理学。 NHK子育て番組「すくすく子育て」にも専門家として登場。

東京大学大学院教育学研究科教授、同附属発達保育実践制作学センター(Cedep)センター長、心理学博士。 山形県生まれ。東京大学教育学部卒。同大学院教育学研究科博士課程単位取得後退学。 聖心女子大学文学部講師、九州大学大学院人間環境学研究院助教授、京都大学大学院教育学研究科准教授などを経て、2013年から現職。 専門は発達心理学、感情心理学、進化心理学。 NHK子育て番組「すくすく子育て」にも専門家として登場。